2009年 イエメンの労働事情
1.労働事情(全般)
人 口 | 23,580,000人(2008年) |
労働組合 | イエメン労働組合総連盟(GFWTUY) 加盟14組織、17地方組織 組合員数 約600,000人(2009年) |
- 1)GFWTUYの概要
- 労働法制
- イエメンが批准した国際協定
- 社会的対話と団体交渉
- 経済状況
- 女性と労働
- GFWTUYの各労働機関への加盟
設立:
南イエメンで英植民地支配期の1956年3月3日、アデン労働者会議が設立され、1967年11月30日にはイエメン労働組合総連盟と改称された。北イエメンでは1984年後半、イエメン共和国労働組合総連盟が設立された。1990年5月22日に南北イエメンの統一が実現するとともに、両連盟もイエメン労働組合総連盟(GFWTUY)として統一された。
構成:
GFWTUYは共和国経済の各部門を代表する14組合で構成され、17県のそれぞれに支部が置かれている。連盟に所属する組合員の数は600,000人。350の組合委員会が存在する。
組織:
総会がイエメンの労働組合運動の最高機関。総会は中央評議会を選出する。中央評議会は執行部委員長および委員(24人)を選出する。
・会長局:会長+副会長2人
・事務局:事務局長+副事務局長2人
・ 各専門部局:財務・総務局、広報局、「組合活動の権利と自由」局、社会保険局、労働紛争局、経済局、女性・児童局、文化・研修局、「職場の衛生と安全」局、国際関係局、アラブ諸国間関係局、総会は中央財政監査委員会を選出する。
・ 憲法、労働組合組織法、労働法、民生サービス法、社会保険法、保険・給付金法、民生法
・ 労働における基本的原則に関する宣言」を含むILO国際協定30件を批
・ アラブ労働機関の協定8件を批准
GFWTUYは生産の当事者三者(政府、経営者、労働組合)間の社会的対話を行っている。また各労働組合及びGFWTUYは以下のような重要課題に関して政府ないし経営者との団体交渉を行っている。
・ 民営化、賃金、社会福祉、保険、職場の衛生と安全、健康保険、労働問題と産業安全
イエメンは以下のような要因から脆弱な経済状態にある
・ 湾岸戦争後、労働者100万人以上が帰国したこと。
・ 政府が市場経済と民営化の政策を採用していること。
・ 急激な人口増加。
・ 賃金の低迷。
・ 外国の陰謀とアル・カーイダの破壊活動による政治的不安定。
・世界的な経済・金融危機の影響。
労働法制においては、女性労働者は男性と平等な権利を保障されているが、文盲や社会的慣習ゆえに経済活動への女性の参加は少ない。農業分野においては逆に、労働力の70%を占めている。
・ GFWTUYは2003年、旧・国際自由労働組合総連盟(ICFTU)に加盟した。
・ GFWTUYは国際アラブ労働組合連盟(ICATU)に加盟している。
・ GFWTUYに加盟している諸労働組合はアラブ諸国の職業別組合連盟に所属している。
・諸労働組合の一部は、国際労働組合総連合傘下の職業別組合連盟に所属している。
※ GFWTUYはアジア・太平洋地域連合への加盟を申請している。
2.労働組合が現状直面している課題
- 民営化、賃金、社会的保護、保険、職場の安全と衛生
- 女性の役割、就業率の低さ
3.ナショナルセンターと政府との関係
労働者の権利、生活状況などに関する法改正にかかわるものについて政府と協議を行っている。最近の例では、公務員の給与、所得税などで政府と協議した。賃金引上げ、生活改善手当の法制でも協力し、年金改正でも協議が行われた。イエメン労働組合総連名(GFWTUY)
バッサーム アルセルウィ(Mr. Basam Al-Selwi)
電力労働組合国際部長(GFWTUY執行委員)
1.一般労働事情
イエメンの人口は約2140万人で、71%が地方在住者である。労働者数は2005年で360万人、労働者の内男性は75.4%、女性は24.6%を占める。世界的な経済危機の中で不安と緊張が広がっている。社会保障の面では民間未組織部門には存在していない状況である。組合活動の自由も制限されている。賃金も低下している。また民営化や構造改革の波、非識字率や失業、貧困、児童労働、汚職の深刻化などさまざまな問題を抱えている。
2.労働者が直面している諸問題
- 若年層の雇用機会不足と失業者増加。最近の統計によると失業率は37%に達している。
- 民間部門では社会的保障が貧弱で、未組織部門では社会的保障がない。
- 民間部門での労働組合活動の権利と自由が制限されている。
- 賃金の低下。
- 児童労働は労働人口330万の5%に達する。
- 非識字率は、男性が40%弱、女性が62%強である。
3.問題解決に向けた取り組み
- 小プロジェクトの奨励
- 使用者に圧力を掛け社会的保障の適応を推進する。
- 政府に圧力を掛け労働法の整備を促進し、三者間(政府、使用者、労働組合)の労働組合の自由と権利に関する国際条約を履行させる。
- 社会正義及び国際労働基準についてのILO宣言に鑑み、団体交渉及び社会的対話を強化する。進展状況によってはストライキに訴える。
- 若者に雇用機会を与える目的で職業訓練と実習を行うよう要請する。
- 女性の社会的役割の拡大をすすめる活動の一環として議会の女性議員を15%目標達成に努力している。
4.労働運動と政府の関係
憲法では労働組合を結成しそれに参加する権利が保障されている。イエメンの労働関連法及び労働組合結成法では労働者及び組合員に対し、組合活動と労働者の要求を行使する権利が認められており、かつ組合によるストライキの権利が保障されている。労働運動は団体交渉権と三者間対話の権利をもっている。
5.多国籍企業
一部の多国籍企業は不正な労働契約を結んだ後労働者が起こしたストライキに直面し、その責務を放棄したため、企業が侵害した労働者の権利及び賃金をめぐり団体交渉が継続的に行われている。こうした企業は経済のグローバル化という野蛮な現象や失業率を悪用し、雇用機会も満足に与えず、また労働者にとって不利な労働状況や条件を撤廃しようとしない。