2016年 アフガニスタンの労働事情
アフガニスタン労働者全国組合(NUAWE)
ビービ・ナジア・ニアジ
NUAWEマザール県支部職員
サミーラ・マスッド
NUAWE職員
1.当該国の労働情勢(全般)
2014年 | 2015年 | 2016年(見通し) | |
---|---|---|---|
実質GDP(%) (出典元) |
2.0 | 2.5 | 5.0 |
物価上昇率(%) (出典元) |
6.1 | 5.5 | 6.5 |
最低賃金 (時間額・日額・月額) (出典元) |
□時間(20Afg) ■日額(166Afg) □月額(5,000Afg) ( ) |
□時間(20Afg) ■日額(166Afg) □月額(5,000Afg) ( ) |
□時(20Afg) ■日額(166Afg) □月額(5,000Afg) ( ) |
労使紛争件数 (出典元) |
275件 | 35件 | 1,421件 |
失業率 (出典元) |
25% ( ) |
40% ( ) |
60% ( ) |
法定労働時間 (出典元) |
8時間/日 ( ) |
48時間/週 ( ) |
時間外/割増率 ( ) |
休日/割増率 ( ) |
---|
アフガニスタンでは、農村部に住む文字の読み書きができない多くの女性がインフォーマルセクターの大部分を占めている。雇用市場の投資や保障の状況は、雇用機会の創出に必要なインフラ資源の成長と発展に大きな影響を与えている。
アフガニスタン経済は、持続不可能なプロジェクトの存在や長期投資の欠如によって伸び悩んでいる。結果として、熟練労働者たちは不安定な雇用状況に置かれており、またインフォーマルセクターに対する制度化された規制も存在しない。インフォーマル産業に従事せざるを得ない労働者を生み出している原因として、インフォーマルセクターにおける安定的かつ有益な雇用機会の欠如と、全国的に低い学力水準の問題が挙げられる。アフガニスタンの労働者の大多数が、でたらめな求人や口頭での契約、骨の折れる肉体労働、低賃金契約による労働に従事する傾向にあるが、これは正規職に必要な制度化された教育や訓練、スキルの深刻な欠如に起因するものである。また多くの人々が、未登記の小規模な会社で自営業として働くことを優先的に考えている。社会経済的地位の低い世帯のほとんどが在宅勤務者や露天商人等の賃金生活者として生計を立てている。さらに、アフガニスタンでは児童労働も一般的である。性差別も大きな問題となっており、同国における雇用状況の問題を一層悪化させる要因となっている。さらに女性の場合、十分な能力を有していても過小評価されており、平等な賃金や雇用の機会から不当に排除されている。アフガニスタンでは、雇用主が持つ偏見が労働者に大きな影響を与えており、その結果、女性は違法経済に従事せざるを得ない状況となっている。このような不当な経済が続く限り、アフガニスタンは麻薬市場に加担している国としてレッテルを貼られ、市民はケシの実や幻覚作用のある植物を違法栽培し続けることとなる。アフガニスタンの財務体制は弱体化しており、文字の読み書きができない若者の不法就労を助長している。このような状況から、アフガニスタンは雇用保障の状況を安定させ、国内外の投資増加を刺激させる必要性に迫られている。
2.労働組合が現在直面している課題
アフガニスタンの労働組合は、政府や国家主体による最低限の支援に関する問題に直面している。新改正された憲法は公務員と被雇用者のみを対象としており、「労働者」という概念を適切に扱っていない。その結果、労働組合が、労働者階級の社会的公正や法的権利を追求することは困難な状況となっている。労働組合の役割は著しく低下しており、政府も労働組合に対して組合としての法的地位を与えることを認めず、影響力を封じ込めている。労働組合は権限と能力が制限された社会団体と言われており、課題に取り組む上での政治的・社会的活動が対外的に見えづらくなっている。また現行の憲法下では組合の財政も困窮している。これは、アフガニスタン憲法では、社会団体である組合は政府や政治団体から財政支援や補助金を受ける権限が無いと規定しているためである。前政権では、組合には体制維持の手段として資産が与えられていた。しかし現政権下では、この資産が民営化されようとしている。これにより組合は体制基盤を失いつつあり、労働者階級の問題に対して積極的に関与することが困難となっている。このような不公平により、組合はより重大な脅威である政治的課題よりも社会的課題に力を入れざるを得なくなっている。結果として、組合は国家や非国家主体からの外部干渉を受けやすい状態となっている。
3.その課題解決に向け、どのように取り組もうとしているのか。
まず、アフガニスタン労働者全国組合(NUAWE)はアフガニスタン政府に対し、インフラ、工業団地、そして生産的な雇用機会を創出するセクターに投資をするよう提案している。次に、露天商を営む一般の女性や若者を中心に、納得のいく雇用を推し進める。最後に、フォーマルセクターとインフォーマルセクターの両方において、教育と啓発プログラムを通した平等な賃金と権利の実現を目指す。今後、NUAWEは、適切な訓練と専門的能力の開発プログラムにより熟練労働者の数を増やすことに注力する予定である。
4.その他
労働とは、人間の身体的努力と精神的努力を掛け合わせ、製品やサービスを提供するということである。学術文献では、このような行為を「労働者」、「人材」、「雇用者」、「被雇用者」として表現しているだろう。アフガニスタンの労働法では、労働者は雇用主と書面契約を交わした上で健康保険に加入し、病気になった時や怪我を負った時は経済支援を受けるものと規定している。現在、アフガニスタンの最低賃金は世界で3番目に低く、アフガニスタン政府が定める基準によると、労働者の最低時給は0.57ドルとなっている。アフガニスタンの労働者は、労働中は常にさまざまな問題や障害に直面している。雇用主による賃金不払い、不当解雇、不正行為、侮辱的言動といった行為は、多くの労働者が職場で直面する問題となっている。アフガニスタンの労働法には健康保険に関する記述はあるものの、ほとんどの場合は形骸化しており、実用性に欠けた内容となっている。労働法によると、労働者は1日8時間の労働をすることができるとされている。しかし、仕事の需要が高く、また労働者の権利についても労働者自身がほとんど認識していないため、雇用主が労働者を搾取し、1日10時間以上もの労働を強いている。雇用主と被雇用者の間で書面契約を交わすという習慣がないことも、労働者の雇用保障を脅かす一因となっている。このような状況により、雇用主は自分たちの都合に合わせて新しい労働者を雇用し、不要な労働者を解雇している。
その一方で、手続き支援の少なさ、熟練労働者の不足、雇用の不安定も、このような問題を助長させる別の要因となっている。最後に、労働社会省によると、アフガニスタンの労働市場における最大の課題は、専門的労働者の深刻な不足だとしている。労働社会省は教育省と連携して169項目の労働基準を制定し、短期技術習得コースを提供している。また、強力な基盤と明確なデータベースを構築し、熟練労働者や専門知識を持った人びとを、各自の専門領域が生かせる産業に従事させることも必要不可欠である。
1アフガニスタンドル=2.21円 (2016年12月2日現在)