2016年 ウルグアイの労働事情
ウルグアイ労働組合連合会―全国労働者連合(PIT-CNT)
アンヘラ・ビクトリア・アルファーロ・セオアネ
ウルグアイ出版協会労働組合 委員長
マルティン・オマール・フォルド・ディアス
ウルグアイ金融関係労働組合 国際局長
1.労働情勢の全体状況
2014年 | 2015年 | 2016(推定) | |
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実質GDP(%) (ウルグアイ中央銀行) |
3,2% | 1% | 1,1% |
物価上昇率(%) (国家統計局) |
8,3% | 9,4% | 8,1% |
最低賃金 (時給、日給、月給) (国家統計局) |
8,960ペソ(月給) | 10,000ペソ(月給) | 11,150ペソ(月給) |
労働争議の件数 (ウルグアイ・カトリック大学) |
1月~10月 112件 概算 | 1月~11月 144件 概算 | 1月~10月 110件 概算 |
失業率(%) (国家統計局) |
6,6% | 7,5% | 7,1% |
法定労働時間 (労働社会保障省) |
時間/日 8時間/日 |
時間/週 44時間/週 |
残業割増率 ( ) |
休日出勤割増率 ( ) |
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*1ウルグアイペソ=4.0円(2017年2月20日現在)
非常に低い、ほとんどゼロと言える経済成長が数四半期も続いたことから、労働市場も影響を受け、主要な労働指標が若干の悪化を見せている。
労働市場は緩やかな悪化の兆しを示してきていたが、これは2011年から2014年の間に記録的な水準に達したのち、すでに述べた景気の停滞という状況を前にしては予見可能なことではあった。2016年の最初の9ヶ月間の平均失業率は8%に上昇。これは前年同期に記録された7.4%を上回る数字になった。これは失業者数が2015年1月から9月の時期よりも11,400人増え、142,700人になったことを示す。
雇用に関しては、2016年に入ってからの就職口の喪失は非常に穏やかで、2015年1月-9月期に比べて4,600件の喪失となっている。この雇用喪失数は現在の就業人口1,643,000人の0.3%に相当するが、最大の雇用件数喪失は2015年に起きており、2016年は落ち込みが緩やかになった。
雇用状態の悪化はすべての部門で同じように起きたわけではなく、幾つかの部門で顕著になっている。雇用に関して、2015年に最も影響を受けた部門は建設業で、2年間の累計で13,000人余りが職を失った。大きな損失のあった他の部門は製造業と一次産業で、この2部門で10,000件近くの職が失われ、これは2014年と2015年に大きく集中している。
上で分析した労働者数の推移に加えて、ウルグアイ労働市場の大きな課題であり続けている雇用の質にも焦点を当てる必要がある。2016年に入ってからの社会保険未加入者(インフォーマル労働またはブラック労働)は25.3%で、昨年同期の24.7%をやや上回っている。このインフォーマルな状況は415,000人以上の就業者に及んでおり、彼らは年金のための出資金を払っていないばかりか、失業、疾病、出産、労災に対してや国家医療基金(Fonasa)のような権利に対しても、保護を受けられていない。
一方で、望まない短時間勤務に関わる潜在失業者は就業者の8.2%に達した。景気の失速の産物であるこの数字は、6.7%を記録した2年前の2014年以来増加している。
2.労働組合運動が現在直面している課題
この複雑な状況はウルグアイ労働組合運動に常に課題を突きつけている。我々は10年間の経済成長を謳歌してきたが、今になって新たな権利の獲得が難しくなってきているからだ。2016年には同様に、街頭闘争を元に勝ち取られた前向きな変化もあった。大規模なデモでバスケス政権に進むべき道を示し、1度ならず労働組合運動とも合同した。我々の戦いのカウンターパートとして初めて経営者たちが、経営者会議所を集めたメガ会議所で、我々との会合に出席した。現在、経営者らは、労働者の権利獲得のプロセスにブレーキをかけようと、益々攻撃的になっている。
経済危機は、低い賃金で、雇用の選択肢が少ない報道メディアの労働者たちにも大きな打撃を与えている。この部門の賃金を上げ、全国統一賃金を獲得することがウルグアイマスメディア労働組合の課題である(例:モンテビデオで働くジャーナリストと地方の別の県で同じ仕事をするジャーナリストが同じ賃金をもらっていない)。
3.課題解決に向けた取り組み
ウルグアイマスメディア労働組合はウルグアイの新聞・ラジオのジャーナリストの組織として72年前に創設された。ウルグアイ労働者の唯一のナショナルセンターであり、現在統一の意思を強めているPIT-CNTの創設母体であるウルグアイマスメディア労働組合は、無料テレビ放送、有料テレビ放送、ラジオ、オンラインメディア、国際通信社、新聞、週刊誌や独立系の全国の労働者が加盟している。ジャーナリスト、技術者、オペレータ、事務職をまとめている。
現在我々は、組織面で成長し、財政的にも改善することを目的として、労働組合の土台を補強している。我々の最大の強みはウルグアイ社会で勝ち取った名声であり、最大の弱点は労働者の積極的な参加が少ないことだ。
全体としてPIT-CNTは、法的な面では組合運動と社会運動の中で生まれた様々な法律を具体化させた。すでに国の機関では存在する、民間企業で障害者雇用の割り当てを作る法律がその一例である。金属工業産業の労働者に手厚い福祉を提供する社会福祉基金なども承認された。