2018年 インドネシアの労働事情
インドネシア労働組合総連合(CITU)
アウリア ハキム
インドネシア金属労働者組合連盟 (FSPMI) 中部ジャワ州協議会委員長
労働基礎情報について
2016年 | 2017年 | 2018年(見通し) | ||||
実質GDP(%) | 7.64% | 9.53% | 1.94% 2018年9月 |
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物価上昇率(%) | 3.35% | 3.02% | 4% | |||
最低賃金 (時間額・日額・月額) (出典元) |
□時間( ) □日額( ) □月額(310万ルピア) |
□時間( ) □日額( ) □月額(335万5750ルピア |
□時間( ) □日額( ) □月額(364万8035ルピア) |
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労使紛争件数 | 1554件 | 1588件 | データなし | |||
失業率 (出典元) |
5.5% | 5.33% | 5.13% 2018年2月 |
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法定労働時間 (出典元) |
通貨名:ルピア 132,910,000ルピア=10,000ドル(2017年4月26日現在)
賃金について
2015年制度改正(政令78号)により、それまで最低賃金は賃金審議会で決定されていたが、三者が話し合う形ではなくなった。最低賃金を監視する役割は残ったが、決定権はなくなったわけだ。2015年以前、賃金審議会は服や野菜などの調査を行い、それを基礎として消費者価格を決定していたが、それ以降はインフレ率を掛ける等の数式により決定されることになった。すなわち、三者構成が一者(政府)に握られる形になった。賃金上昇率はそれ以降下がることとなった。インフレ率が8%と出れば、一律適用されてしまう。
また、州別の最低賃金があり、田舎ではその差は余り感じられないかもしれないが、ジャカルタなど都市部では差が大きい。この最低賃金の決定方法の変更は大きい。例えば、労働組合が経営側と交渉しようとすると、「最低賃金はすでに決まっている」と言われ、相手にされなくなった。経営者によって、大きな差が出るようになった。州ごとに見ると、以前は産業別最低賃金があったが、知事の権限で産業別最低賃金を廃止する所が出てきた。また、最低賃金が決まっても、実施を先送りできることになった。こうした実態は、長期的には経済を悪くすることになるし、法より低い政令で決めたことが生活に影響を与えることになり、法秩序が揺らいでいる。
多国籍企業について
好事例として、Aグループ企業は労働者の所得税を支払ってくれている。また、女性従業員に対する保護措置(妊娠後の休暇14週間)も付与してくれている。
一方で、B社は、業務効率化を理由に労働組合役員に圧力をかけている。また、中国人経営者がインドネシアの法律に従わないケースが多く見受けられ、中部ジャワでは、C社(高級被服製造で中国の経営)が、税金を支払わずに急遽、撤退するということもあった。東ジャワでは、D社で、ストライキの後に、全役員が解雇されるという事件があった。
インドネシア福祉労働組合総連合(KSBSI)
ジュアンディ アルジュナ ブディハルト
リアウ州地域協議会委員長
リアウ州は、石油・ガス、プランテェーション、パルプ・紙などで有名である。全国レベルの問題としてインダストリー4.0、若者の失業、労働者の能力の向上策が取られていないこと、労働者が組合に入らないこと、政府が経営者寄りであること(政府が経営者のように振る舞い、経営者は権力者のように振る舞う)などがある。他にも、労働組合活動の刑事事件化、省令、政令などの規制が次々に出て対応が難しいこと、司法機関が公正ではなく、時間もかかることなどが挙げられる。
州レベルの問題として
E社が撤退し、F社が後継会社となる。35年間経営していたわけで、労働者の雇用が問題となっている。油ヤシに対する批判運動が起こり、それによって働いている人々が影響を受けるという問題がある。これに対して、NGOがグローバルなキャンペーンを展開した。 こうした問題に取り組むには、問題をオープンにして討論を巻き起こす必要がある。SNSやパンフレットなどを使って情報を広める、キャンパスで労働組合活動家をリクルートする、政府に対する要求を強める、青年・女性活動を強化する等の取り組みが重要であろう。
質疑応答
Q.来年、大統領選挙が予定されているが、候補者のどちらを支持するのか?
A.KSBSIは現職の大統領、KSPIは野党候補を推す予定である。