2020年 ナイジェリアの労働事情

2020年10月30日 報告

 国際労働財団(JILAF)では、アフリカ英語圏チームとしてナイジェリア労働組合役員を招へいし、労働を取り巻く最新情報の共有や日本の労働組合の特徴、生産性運動や雇用安定の取り組みなどについて学ぶためのプログラムを用意した。しかし、新型コロナウイルス禍の影響により来日交流が困難となり、「オンラインプログラム」による取り組みとなった。従来の「海外の労働事情を聴く会」も開催が不可能となった。
 以下は、ナショナルセンターの報告資料等の概要を参考にまとめたものである。

ナイジェリア労働会議(NLC)

マシュー エカ オラベ
ナイジェリア労働会議(NLC) 執行委員

ローズマリー チノムソ アクシンプラリン
ナイジェリア看護師・助産師全国労働組合 執行委員

 

1.労働情勢(全般)

  2017年 2018年 2019年
実質GDP
成長率(%)
(出典元)
10.98
(    )
15.5
(    )
10.59
(世銀は1.9%)
物価上昇率(%)
(出典元)
16.5
(    )
11.61
(    )
11.37
(世銀は10.8%)
最低賃金
(時間額・
日額・月額)
(出典元)
□時間(75.00)
□日額(600.00)
□月額(    )
(    )
□時間(75.00)
□日額(600.00)
□月額(    )
(    )
□時間(75.00)
□日額(600.00)
□月額(    )
(    )
労使紛争件数
(出典元)
( ― ) ( ― ) ( ― )
失業率(%)
(出典元)
20.425 (    ) 23.13 (    ) 22.70 (世銀は6.1%)
法定労働時間
(出典元)
時間/日

(各労使で協議)
時間/週

(各労使で協議)
時間外/割増率
時給 倍
(各労使で協議)
休日/割増率
時給 倍
(各労使で協議)

通貨名:ナイラ(NGN) 1ドル=379ナイラ(2019年平均値) 1円=3.62NGN

2.基本情報

 ナイジェリアは西アフリカに位置するイギリス連邦加盟国である。国土は約92万3千平方キロメートル(日本の約2.5倍)、人口は約2億人でアフリカ最大の人口大国であり、首都はアブジャにある。250を超える民族からなり、公用語は英語で各民族語も多く使われている。宗教は南部がキリスト教、北部がイスラム教となっている。ポルトガル、イギリスの植民地として奴隷貿易の拠点の役割が長く続いた。その後、多くの民族紛争が勃発し国内は混乱したが、第2次大戦後ナショナリズムの高まりから独立の動きが盛んになり、1960年独立を果たした。しかし独立後の軍事政権は度重なるクーデターにより政治は不安定になり、ビアフラ戦争も起きた。民主化実現後もクーデターや暴動が起こり、反政府組織(ボコハラム)の武装闘争は現在も続いている。
 アフリカ有数の経済大国であるナイジェリアは、世界有数の産油国でもありGDPの約4割を占めている。政府の歳入の大部分は石油産業に依存しているが、主要産業は石油からサービス業、金融不動産産業、IT関連産業へと変化している。名目GDP総額は約4000憶米ドル一人当たりの名目GDPは約2000米ドル主な貿易相手国は、中国、オランダ、インドなどである。シェールガス革命により石油の対米輸出が大幅に減少、通貨ナイラの下落、インフレ、電力不足など経済的な課題が山積している。日本との関係はODAによる支援も大きく、多くの日本企業が進出している。
 多くの経済指標は、国内の不安定な状況と部族間の問題から正確な統計が取れないため、国内統計局とIMFや世銀との間には差異が生じている。また、法定労働時間や休日、最低賃金や時間外労働などについては、当該の労使で協議の上決定することになっており、全国的な水準が不明確である。
 ナショナルセンターはナイジェリア労働会議(NLC)が最大で、組織人員約600万人、産業別組織は教育、公務員、保健医療、製造業が中心となっている。加盟単組は53組合、ITUCに加盟。

3.労働法制の法的枠組みと社会保障制度

1)社会保障制度

①拠出型年金制度 拠出金については、政府が10%、労働者が10.5%の負担となっている。
②医療保険制度 拠出金については、政府が5%、労働者が2.5%の負担となっている。
③住宅基金制度 拠出金については、政府が5%、労働者が5%の負担となっている。

※この他には、民間企業で働く非正規雇用労働者のための基金もある。

4.労働組合が直面している課題と取り組み

1)非正規雇用をめぐる問題

 雇用をめぐる問題としては、特に非正規雇用や組合の無い企業などは、雇用の安定がはかられていないばかりか、賃金も使用者によって恣意的なものになる場合がある。こうした分野では労働時間も長く、強制的に時間外労働をさせられることもある。また、賃金未払いのまま解雇される状況もみられる。

2)組合結成の自由の欠如と経営側による抑圧

 組合結成の自由が無いという実態がある。特に民間企業と非正規労働者では組合結成の自由が制限されている。民間企業の約5割では組合が組織されているが、非正規労働者の組織率は1割程度である。
 こうした中、ナイジェリア労働会議(NLC)は、特に家事労働者(メイド等)やレストランや食堂で働く労働者については、そのカテゴリー(グループ)ごとに組織化できるような体制を推進している。

3)職場での不利益な扱い

 組合員が職場において不利益な扱いを受けるといった問題もある。特に、使用者側に文句を言ったり、立ち向かったりした場合が不利益を被ることがある。

4)職場の問題

 政府側と企業側が手を組んでしまう汚職がある。不当労働行為に関して提訴しても、裁判官が政府や企業側と手を組んでしまっていることがある。また、公共部門では労働協約がきちんと尊重されないケースも見受けられる。
 ナイジェリア労働会議(NLC)は、労働組合結成の自由、結社の自由については、ILO87号条約・98号条約およびナイジェリア憲法第40条を遵守するよう働きかけを強めている。また、政府に対しては公共部門において労働協約を尊重するよう働きかけを強めている。

5.その他

新型コロナウイルスの影響

 ナイジェリア最大の経済都市のラゴスでは、夜間外出禁止令や空港閉鎖などが行われ感染防止に努めているが、感染拡大が止まっていない。マスクの着用も義務付けられているが、 多くの国民が守っていない。政府も正確な感染者数は把握出来ない状況で、経済にも大きな影響が出ており、特に食料品や衛生用品などが不足している。PCR検査についても、富裕層や一部の関係者しか受けられない状況にあり、今後ますます深刻な問題となっていくことが予想されている。