バックナンバー

No.492(2018/2/16)
アメリカの労働事情

【2017年の労働組合組織率、前年と同じ10.7%】

 1月19日発表の労働統計によると、2017年の労働組合組織率は前年と同じ10.7%で推移した。この他に労働組合に加入していないが労働協約の適用を受けている労働者の1.2%を加えると、労働組合が代表する労働者は11.9%となる。因みに労働人口は1億6,059万人であった。
 さらに失業率は1月の4.9%が12月には4.1%に低下した。また労働組合員の週給中位額は$1,041であり、非組合員の$829を25%上回り、年金や医療保険でも優位にある。また2016年の男性に対する女性の賃金は労働組合のあるところで91%、非労働組合では81%であった。

 歴史的にみると組織率は1917年の11%から第2次大戦終了の1945年には33.4%へと急上昇したが、その後徐々に低下して現在の10.7%に落ちた。中でも落ち込みの大きいのは製造業だが、雇用の海外流出とともに政治的な要因も大きい。
 米国の組織率はOECDの31カ国中でも27位という低位にあるが、原因の1つは"労働の権利法"(賃金労働条件などの労働協約の適用を受けていても組合加入や組合費支払いは従業員の自由意思とする)が全米各州の半数以上に採用されている現状であり、組合が強かったミシガン、インディアナ、ウイスコンシン州なども共和党優位の議会で"労働の権利法"が採択されている。

 今年、注目されるのは38%の組織率を持つ公務員部門である。現状は20以上の州で「労働組合協約の適用を受ける"非組合員"も労働組合費を徴収されている」が、これを不服とする訴訟が最高裁で審議されており、共和党指名判事優位の最高裁で訴訟が認められれば、公務員労組から大量の脱退が起きる。

 もう一つの注目点は、「労働組合の停滞が中間層賃金の停滞と関連する」というハーバード大学などの調査、またシンクタンクの経済政策研究所(EPI)の調査では「組織率低下の時期には労働者の中でも所得トップ10%グループのシェアが反比例的に拡大する」と読める1917年からのデータから、労働者間でも格差が拡大すると指摘する。特に近年、そのシェアが異常拡大して2014年現在47.2%を記録している。
 こうした状況を受けてか、ギャラップ世論調査では「労働組合が必要」とする声が2009年の48%から昨年は61%に上昇した。また「社会への労働組合の影響力が強まるべき」とする意見が1955年の75%から2007年に28%まで低下した後、昨年は39%に上昇した。

 しかし労働組合の批判派は「民間組合の高賃金は非組合員の犠牲の上にあり、投資と雇用を阻害する。また公務員の高賃金と高年金は税収を枯渇させた。労働組合は無能な従業員も保護している」と指摘する。

【刑務所に労働権はあるのか】
 1月15日のマーチン・ルーサー・キング・デイを前にして、フロリダ刑務所の囚人たちが1カ月間のストライキを宣言した。要求は虐待防止、労働賃金の支払い、割高な食物や日常品価格の撤廃そして長期刑期囚への恩赦であったが、フロリダ州刑務部はストライキは無かったと述べた。しかしフェイスブックでやり取りした囚人たちや家族は、「ストライキを唱えた囚人たちが少なくとも15刑務所で独房に移され、筆記具や電話などの通信手段を奪われた」と明かした。

 米国での囚人数は1973年の204,000名が今や150万人に急増しているが、それに伴って囚人の訴えも急増していると見られる。しかし暴力的取扱いを隠そうとする刑務所の秘密主義もあってか、情報は殆ど外部に出ない。
 囚人の不満を表す際立った事件として1971年のニューヨーク・アッチカ刑務所の暴動事件があるが、4日間の暴動鎮圧に州兵は囚人29名を殺害した。その際人質となった看守10名が犠牲となり、多くの囚人が拷問尋問を受けた。政府関係者は29名の殺害が止むを得ないものと説明し、州兵の行動を擁護した。その後も数々の刑務所で事件が起きたが、一貫して囚人に罪があるとしつつ、家族や外部関係者が求める真相調査には協力的でない。

 1972年には全米からの凶悪犯を集めたイリノイ州マリオン連邦刑務所が造られた。1日23時間、狭い独房に隔離し常時厳しく監視する。1986年にはケンタッキー州レキシントンに同様の女性刑務所が造られた。感覚を遮断し裸体検査を常態化したこの場所をアムネスティ・インターナショナルは"拷問に等しい過酷かつ非人間的、屈辱的な場所"と名指した。連邦刑務部は2006年、外部との接触を一切禁じる刑務所2か所を開設したが、人種差別や政治的色分けの濃いイスラムの囚人が多数を占めると言われる。最近目立つのはフロリダ州刑務所の事例で、2時間熱湯シャワーに放置しての死亡、病気の囚人にガスを吸わせた死亡、看守の脅迫を訴えた女囚の殺害など昨年は428人死亡という最高を記録した。ストライキを主導したある囚人は「刑務所システムには外部からの監視が必要だ」と訴えている。

 米国最高裁は1977年に囚人に労働組合結成の権利はなく、公共の安全のために言論の自由の制限も必要と判決したが、果たして囚人には団結して訴える権利が無いのだろうか?囚人たちの暗黒の世界は米国民主主義の弱まりを映しだしてはいないだろうか。

【調理士労働組合がセクハラ対策ボタンの貸与を要求へ】
 UNITE-HERE (縫製・繊維・ホテル・レストラン労組—250,000名)に所属するラスベガスの調理士労働組合は大統領選挙などに強い影響力を発揮することで知られるが、来月から始まるカジノ・ホテル企業との協約改定交渉に向けて、ホテル従業員へのセクハラ防止の"パニック・ボタン"貸与を要求する。
 セクハラ事件としては、浴室清掃の女性従業員が22歳の男に顔を殴られて襲われた例、65歳の女性従業員が19歳の男に部屋で襲われた例などがあるが、セクハラは侮辱や暴言、身体に触る、暴行、レイプなど広範囲に亘り各所で起きている。

 ニューヨークのホテルの労働組合の有るところでは、従業員が2013年から緊急ワイアレスを装着しているが、これは当時の国際通貨基金(IMF)、ストラウス・カーン専務理事がメイドを襲った事件により労働組合が要求したものである。他にも2016年のシアトルの住民投票に続いて、昨年10月にはシカゴ市議会がゲストルームで働くメイドへのパニック・ボタン貸与を義務付けている。

 調理士組合については、50,000名のメイドやコック、バーテンなどの協約改定が5月に行われるが、現在の時給は$23、医療費は全額企業負担、401K年金、最初の自宅購入時には$25,000の補助などがある。調理士組合はこうした賃金労働条件の維持、向上を図ると共にセクハラ対策を要求する。
カジノ企業は2015年までの赤字から2016年には黒字転換、2017年には前年比191%の増益を記録しており、代表的企業、MGMリゾートでも交渉には好意的である。

国際労働財団(JILAF)メールマガジン読者のみなさまへ
〜メールマガジン「満足度アンケート」へのご協力のお願い〜

 いつも当財団メールマガジンをご購読いただき、ありがとうございます。
 JILAFメールマガジンは2009年9月より配信開始から、8年目を迎えました。この間、海外の労働関係情報を中心とした日本語記事を490回以上、日本の労働関係情報を中心とした英語版を250回以上配信してまいりました。
 この度JILAF日本語メールマガジン読者のみなさまを対象に、「満足度アンケート」調査を実施さ せていただき、今後の事業改善に反映させてまいります。
ご協力をくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

調査実施期間:2018年2月15日(木)〜3月14日(水)

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.