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No.204(2013/10/25)
ILOグローバルレポート 世界の児童労働者数発表

 国際労働機関(ILO)の児童労働撤廃国際計画(IPEC)は9月23日に、「児童労働に対する取り組みにおける進展の記録:2000~2012年の世界の推計と趨勢」と題する報告書を発表した。ILOは4年に一度、世界の児童労働者数の推計を発表している。
 この報告書によると、世界全体で児童労働は急速に減少しており、2000年の推計2億4600万人と比較して3分の1少ない1億6800万人となっている。しかし、これは全世界の子どもの人口(5~17歳)の10.6%にあたり、今でもおよそ9人に1人が十分な教育を受けられないまま児童労働を余儀なくされていることになる。そのうち、子ども兵士などを含む危険・有害労働に従事する子どもは8534万人となり、ILOが目標としている「2016年までの最悪の形態の児童労働*1の撤廃」は、このままでは達成できないとしている。

単位:1000人
 %で表示しているのは、世界の5~17歳の子どもの人口に対して占める割合
 出典:ILO「Marking progress against child labour: Global estimates and trends 2000-2012

 地域別に比較すると、児童労働が最も多いのはアジア・太平洋地域で7772万人、サハラ以南アフリカは5903万人と5人に1人が児童労働に従事していることになる。

出典:ILO「Marking progress against child labour: Global estimates and trends 2000-2012」

 ILOによると児童労働とは、法定の就業最低年齢を下回る年齢の子どもたちによってなされている労働のことをいう。児童労働の原因は、貧困をはじめ、子どもの教育へのアクセスがない、親の教育の欠如、不十分あるいは不適切な学校教育制度、社会文化的な伝統や構造、などの要因に深く根ざしている。
 児童労働を規制する国際条約は、ILO138号条約(就業が認められるための最低年齢に関する条約)、ILO182号条約(最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約)、国連の児童の権利に関する条約がある。
 ILO138号条約(就業が認められるための最低年齢に関する条約)は、児童労働の廃止と若年労働者の労働条件向上を目的に1973年に制定され、就業の最低年齢を義務教育終了年齢と定めており、いかなる場合も15歳を下回ってはならないとしている。(開発途上国の場合は、14歳とすることも認められている)また、軽易な労働は13歳(途上国では12歳とすることが認められている)、危険・有害な労働は18歳(健康・安全・道徳が保護され、適切な職業訓練を受けられる場合は16歳)と定められている。
 児童労働は子どもの権利の重大な侵害であり、個人に与える悪影響だけではなく、国の開発問題にも深刻な影響を与えるとして、児童労働撤廃への取り組みが世界的に強化されている。
 国際労働財団(JILAF)もネパールとインドにおいて現地労働組合と協働で、インド1ヵ所、ネパール9ヵ所で、児童労働撲滅のための学校プロジェクトを展開し、児童労働撲滅のための活動を展開している。
 また日本労働組合総連合会(連合)は、2014~2015年度の連合政策・制度要求と提言において、グローバルにバランスのとれた持続可能な社会開発に向けた取り組みを推進することを掲げている。連合は、今後も人間の安全保障を重視し、貧困撲滅、児童労働撲滅、感染症対策や地球規模環境課題対策など持続的発展に寄与する最適な援助を実施することをめざして活動を展開する。

 *1 最悪の形態の児童労働
18歳未満の児童がかかわる労働。
a. 人身取引、債務奴隷、武力紛争への強制的徴集を含む強制労働、強制的な子ども兵士
b. 売春、ポルノ製造
c. 麻薬の生産・密売などの不正な活動
d. 子どもの健康、安全、道徳を害し、心身の健全な成長を妨げる危険で有害な労働

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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