2014年 フィジーの労働事情

2014年10月24日 講演録

フィジー労働組合会議(FTUC)
報告者:ペニ ヴァカウ プリサラ

フィジー砂糖・一般労働組合財政担当兼FTUCアドバイザー

 

1.当該国の労働情勢(全般)

 フィジーの労働人口の大半は、インフォーマルセクター労働者であり(衣料、小売、漁業)、雇用条件は良くない。フィジーの国内最低賃金は1時間当たり2ドル(約239円)となっており、4人家族の貧困ラインとなる週230ドル(約2万7520円)を大きく下回っている。労働法の執行はきわめて不十分である。賃金審議会は11の産業(道路・輸送、印刷、卸売・小売、ホテル・飲食、衣料、伐木・製材、建築、土木・電気、製造、採鉱・採石、保安サービス)の代表者で構成され、賃金や労働の最低条件の調整に関して所轄の労働省に勧告を行なっている。
 賃上げが行なわれた場合でも、実際の賃上げ率は賃金審議会(三者代表)で合意された水準ではない場合がほとんどである。すべての産業において、ほとんどの労働者の収入と生活は貧困ラインを下回っている。女性は労働人口の約3分の1を占める。
 失業率は、景気低迷と政治的な問題が影響で、ここ数年(7年)で上昇している。フィジーは2006年から軍事政権が続いている。2014年9月には総選挙が行なわれた。私たちとしては、この選挙は自由でも公正でもなかったと考えているが、今は選挙が経済にどのような影響を与えるのかを静観している。
 現在公表されているフィジーの失業率は8.6%だが、2011年と2010年には7%だった。しかし、実際の失業率ははるかに高いと考えている(15%程度)。発表された数字には、日雇い労働者や臨時雇いなどの不完全雇用は考慮されていない。不完全雇用に含まれる層は、最も生産性の高い19~30歳の年齢層である。軍事政権は55歳定年も課しており、現在では労働者が55歳で失業する状況も生まれている。フィジーには定年退職金(FNPF)を除くと失業手当や老齢年金がない。
 フィジーの就職危機は引き続き深刻化している。2012年には(当時のJ・ウサマテ労働相によると)国内のさまざまな職業学校の新卒者9,523人が失業状態にあったが、この9523人の無職の新卒者のうち858人は学位取得者だった。この状態は、2006年以降毎年続いている。国内で多数の新卒者が失業している事態は、市場に十分な雇用がないことに原因がある。新卒者を吸収して、職を提供できるだけの新規雇用が創出されていない。過去数年間、フィジーの経済成長はほぼ停滞し、結果として雇用創出不足を招いている。フィジーは国内の十分な教育を受けた多数の若者を活用するために、雇用市場を広げて中小企業の発展を促さなければならない。
 政府は失業率低下に向けた解決策を見出そうと努め、労働省と全国雇用センターはさまざまな積極的措置を策定してきたが、結局は失業率の上昇をもたらしている。全国雇用センター(NEC)は雇用を創出できなかったが、失業中のフィジー国民のために他国で職を探す役割を担いうる職業紹介事業者を精査しながら、その権能を効果的に実行してきた。とはいえ、成果はほとんど上がっていない。
 フィジー・ボランティア・サービスは、小規模で起業をめざす個人を支援するサービスを展開している(同サービスは、他人を助けたいという思いをもつ人たちのために設置された団体である)。
海外雇用サービスとして海外雇用ユニットを立ち上げ、海外の雇用市場(ドバイ、イラク、中東諸国のほか、ニュージーランド、オーストラリア、米国における貿易分野での需要)に参加できる能力と専門知識を有する求職者の支援を行なっている。
 フィジーにおける失業率は、労働人口に占める求職活動を行なっている人数の割合として測定している。労働時間は職種によって異なるが、通常は週40~48時間である。
 フィジーの主要な労働法令は雇用関係法(Employment Relations Promulgation: ERP)である。また、さまざまな政令が組合に参加する労働者のレベルに影響を与えている。公共部門では、公務員から組合費を直接控除し組合に直接支払う仕組みがなく、組合費の天引き制度は廃止された。政府は公共部門の労働組合を認めておらず、公共部門の組合と政府との団体交渉はもはや存在しない(労働者との個別契約)。同じことが、すべての国有企業ならびに「基幹産業令」(Essential Industries Decree: ENI)に当てはまる他の民間企業にも該当する。ENIは団体交渉と結社の自由を認めていない。

2.労働組合を取り巻く現状と現在直面している課題

 最も重要な課題は、政府が一方的に課している反労働組合的な政令である。具体的には2009年政令第9号(司法行政令)、2009年第10号(改正司法行政令)、2010年第14号(改正司法行政(第3号)令)、2011年第21号(改正雇用関係令)、2011年第35号(基幹国営産業雇用令)などである。使用者側が個別交渉を好むため、若い組合員を集めることが困難となっている。
 労働者の組織化も、現在の労働組合の課題である。フィジーでは女性の労働組合への参加も非常に少なく、指導者の地位にある女性はごくわずかしかいない。課題解決に向けて労働組合が政府と関わることが歓迎されていないため、労働条件に有利な改正を行なうことは難しい。

3.その課題解決に向け、どのように取り組もうとしているのか。

 反労働組合的な政令に関しては、何ら進展がない。FTUCの組織化委員会による組織化の取り組みや、青年委員会による若年労働者の勧誘努力は行なわれてきた。しかし、現在の政治情勢においては、労働組合問題に関して労働者に語りかけることは、きわめて難しい。失業などの困難に直面している労働者を守るために、失業手当、医療保険、老齢年金基金などの社会保障制度を整える必要がある。FTUCは教育プログラムを実施し、女性の組合加入と組合活動への積極的参加を促している。

4.労働者への権利侵害に対する取り組み

 FTUCは、フィジーにおける民主主義と人権の尊重を求める運動に対し、他の労働組合や、国際機関から寄せられる国際的支援に感謝している。最近判事を長とするILO直接接触ミッションがフィジーを訪れ、労働者の権利侵害を調査した。その結果ミッションは、フィジー政府が労働者の権利を尊重し、それらの権利を侵害する政令を取り消すために行動しなければならないことを、はっきりと確信した。選挙で新たに誕生した政府の陣容は、問題の政令を公布した顔ぶれと同じではあるが、FTUCとしては新政権の動向を見守っている。

*1ドル=119.65円(2015年1月5日現在)