2009年 パレスチナの労働事情

2009年12月11日 講演録
 

1.当該国の労働事情(全般)

人  口 自治区約3,830,000人(西岸地区2/3、ガサ地区1/3)      
他にイスラエル内約113万人、それ以外約513万人 計約1,009万人
労働組合 パレスチナ労働組合総連盟(PGFTU)
加盟13組織 2地方組織  組合員数 267,000人(2007年)

労働力人口は90万人で女性の比率は16.06%。そのうち42.07%がサービス部門に従事。
失業率は30%。貧困率は50%。
イスラエル占領当局の措置による悪影響として検問所が自治区内516か所に設けられ、住民の移動や商品の輸送を妨げている。

2.労働組合が現在直面している課題

  1. 貧困率、失業率が高いため労働組合の組織活動が不十分。
  2.  
  3. 労働者の社会的保護に関する政府の明確な政策が存在していない。
  4.  
  5. 職場の安全と衛生基準に適用する戦略がない。
  6.  
  7. 労働法が十分に適用さていない。
  8.  
  9. 貧困の度合いが高い部門を保護する社会政策がない。
  10.  
  11. 労働市場における女性の参加と役割を強化する戦略がない。
  12.  
  13. 入植者に対する労働者保護の法律がなく権利が侵害さている。

3.その問題解決に向け、どのように取り組もうとしているか

 上記の問題解決に向けてパレスチナレベルでのワークショップを開催。
 組合幹部養成のための訓練、機関紙、パンフレットの発行による問題の周知。
 政府に対する圧力としてロビー活動を実施。
 PGFTU組織内での女性の役割強化と参加比率20%の達成、青年層の役割強化。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 労働者の要求に前向きであればPGFTUとの関係は良好となり、その逆の場合もある。

2009年2月25日 講演録

パレスチナ労働組合総連盟(PGFTU)
マフムード アブアウデ(Mr. Mahmoud Y.A.Abuodeh)

PGFTUベツレヘム支部支部長兼PGFTU執行委員

リヤード アリ(Mr. Riyad Y.A.Ali)
建築労働組合評議委員兼PGFTU青年部書記

 

1.一般労働事情

 パレスチナの労働環境は世界で最も困難な状況である。パレスチナの労働者は、地理的に3つに分類される。(1)パレスチナ自治区の労働市場。原材料の調達や輸出は大部分をイスラエルの市場に依存する従属的な市場となっている。ヨルダン川西岸地区およびガザ地区の労働者に対しては、パレスチナ自治政府(パレスチナ国民政府、PA)によって2000年に制定されたパレスチナ労働法が適用される。(2)イスラエルの労働市場。ペレスチナ労働者にとってはさらに2つに分類される。(a)イスラエル国内の工場労働。(b)占領下ヨルダン川西岸地区内部のイスラエル入植地における労働である。イスラエル国内のパレスチナ人労働者に対してはイスラエルの労働法が適用され、入植地のパレスチナ人労働者に対しては1960年制定のヨルダンの労働法およびイスラエル軍の命令が適用される。

2.労働者が直面している諸問題

  1. 失業率および貧困率の増加。失業率は非常に高く、自治区内の各都市が封鎖され商品の出入りが禁止されると60%に達することもある。
  2. パレスチナ労働市場がイスラエル側の措置に左右され、軍の検問所によってその活動が制限されている。イスラエル入植地における労働は、治安に関連する厳しい条件が課される。
  3. パレスチナ人労働者に対する法的保護が行われておらず、大部分は規制外の闇労働である。
  4. パレスチナ側においても、労働法制の適用のためにパレスチナ自治政府による効果的な労働市場の監視が行われていない。さらに、労働紛争の迅速な解決に必要な労働裁判所が存在しない。
  5. 製造部門における労働市場発展・開発プログラムが存在しない。
  6. 労働者子弟向け無料医療・教育サービスが得られない。

3.問題解決のための取り組み

 パレスチナ域内最大の労働者組織であるパレスチナ労働組合総連盟(PGFTU)は、直面している諸問題解決に向け積極的な活動を展開している。

  1. イスラエル国内および入植地のパレスチナ人労働者の問題については、弁護士や人権団体を通してフォローアップし、イスラエルの労働裁判所に申し立てを行っている。
  2. 恒久的な労働、失業者の食糧と健康保険を確保するために市民団体と協力し、失業問題や開発、雇用創出など、労働問題への対応策に関するPGFTUとしての戦略計画を策定している。
  3. パレスチナ自治政府に対して、労働者支援や雇用創出プログラムの策定、労働法の適用と専門の労働裁判所の設置による労働者の法的保護、最低賃金の確保を常に働きかけている。
  4. 労働組合における労働者の団結を図り、職場の労働者との継続的な会合を通じて組合組織への意識を高め、労働協定の締結に努めている。
  5. パレスチナ自治評議会(PLC)議員との協力により、労働関連法規、特に労働組合法、職業安全衛生法、社会保障法の制定に努めている。
  6. 支援団体および投資家との協力により、雇用創出に努めている。
  7. 世界各国の友好的な労働組合連盟の代表団とパレスチナ域内外で会合する際には、パレスチナの労働者の状況について説明し周知を図っている。

 PGFTUは4ヵ年戦略計画を2007年5月28日の大会で採択して現在この計画に基づいて活動が実施している(期間終了は2011年)。さらに、2007年の大会においては、地方および全国レベルの組合の全部局およびPGFTU執行委員会において20%は女性労働者の代表とすることが承認された。

4.労働運動と政府の関係

 PGFTUとパレスチナ自治政府の関係は重層的な関係である。

  1. PGFTUはパレスチナ自治政府の基本的な構成組織であるパレスチナ解放機構(PLO)の基本的な一部分であり、パレスチナ民族評議会(PNC)およびパレスチナ中央評議会(PCC)にはPGFTUを代表する組合幹部が参加している。
  2. PFGTUとマフムード・アッバース・パレスチナ自治政府議長との関係は、パレスチナ人の国民的課題をめぐる協力関係であり、労働者にとって重要な全ての課題については議長に報告が行われ、損害を蒙った労働者に対しては議長との協力による緊急支援を通じた危機の緩和が図られる。また組合運動におけるあらゆる発展の動きには議長も関与している。
  3. PFGTUとパレスチナ自治政府の関係は各省庁を通して日常的に継続しており、労働者の要求実現のため常に闘争が行われている。労働省に対しては、労働法制の適用を監視する努力、労働条件や賃金の改善を日頃から要請している。社会問題省に対しては、労働者に対する援助を常に要請している。交通省に対しても、公共運輸門における労働者の環境改善や各省庁との協力を要請している。多くの難題解決に向けては、外国からの資金確保は特に必要である。域内での生産および開発事業がイスラエルの占領をはじめとする多大な障碍に直面しているため、そもそもパレスチナ自治政府の事業や活動の多くが国際的な援助に依存しているためである。労働運動による当局への要求行動は毎日のように実施されており、労働運動は、労働者およびその家族が尊厳ある生活を送るための手段を確保する責任を負っているのは他ならぬパレスチナ自治政府だと考えている。

5.多国籍企業

 パレスチナにおける投資活動には多くの障害がある。最大の要因は、域内の各都市間の運輸や域外への輸出入が制限されていることである。商品の搬出入にはイスラエル当局の許可が必要とされる。そのためパレスチナには、他の諸国におけるような多国籍企業の参入は見られない。パレスチナ自治政府は投資促進のための関連法を制定し、ベツレヘム投資会議やナブルス投資会議など複数の経済会議を開催してはいるが、上述の理由により、投資が行われる場合にも工業や農業部門ではなく、サービス部門が対象とされることが多い。現在、境界線地帯における産業地区の設置と外国企業の投資の誘致が提案されており、そのためのプランやプログラムは存在するものの、現時点では実現には到っていない。