2015年 ヨルダンの労働事情

2015年12月4日講演録

ヨルダン労働組合総連合(GFJTU)
モハンマド・アリ・メスラン・アル・ハジャヤ(Mr.Moh'd Ali Meslam Al Hajaya )

鉱山労働組合副委員長兼GFJTU中央執行委員
ハーゼム・イブラヒム・アルジャーフラ(Mr.Hazem Ibrahim Aljaafreh)
銀行労働組合連合執行委員兼GFJTU青年委員会委員

 

1.経済・社会情勢

―経済に暗い影を投げかける難民問題―
 ヨルダンの面積は8万7000平方キロメートル。天然資源に恵まれず、石油資源も水資源もない。ヨルダンの現在の人口は1050万人、年増加率は2.2%となっている。そのうち37%が15歳未満、62%が15歳以上であり、また、男性の予測される寿命は71歳、女性のそれは74歳4カ月となっている。
 ヨルダンの経済・社会情勢は、政治的側面に触れることなしには語れない。その政治的側面とは、ヨルダンが地勢的にさまざまな紛争が起きている地域のど真ん中に位置による。西側には占領下のパレスチナがあり、北にはシリアがあり、東にはイラクがあり、そして南にはサウジアラビアがある。こうした位置的な要素からいや応なしに直面する状況がある。それは難民の流入である。この状況は1990年代の湾岸戦争の当時から始まっている。そのイラク情勢のゆえに、50万人以上のイラク人がヨルダンに入っている。また、シリア情勢のゆえに、現在150万人のシリア人たちが難を逃れてきている。1991年の湾岸戦争の際には、クウェートで働いていたヨルダン人、パレスチナ人など50万人がヨルダンに戻ってきた。さらに、ヨルダン国内にはエジプト人が55万人いるほか、その他各国籍の人々が80万人もいる。
 産業の最大のものはリンとセメントで、リン鉱石がヨルダンの国内経済を支える最も重要な産業となっているが、こうした複雑な人口構成のマイナス影響により、経済は大きな負担を強いられている。政府は300億ドル(約3兆6948億円)の負債を抱え、GDPの80%をこの借金を返すために使っている。この状態は、国際的な基準から見れば既に財政破綻しているといっても過言ではない。投資などの可能性は極めて限定的にしかありえないという状況である。 
 実質GDPは、2013、2014年とも2%、2015年が3.2%の見通しである。また、物価上昇率は、2013年4.8%、2014年は2.9%、2015年が0.6%の見通しである。

2.労働情勢

(1)労働基本情報とヨルダン労働組合総連合会(GFJTU)について
 労働者全般に関わる最低賃金は、2013年から2015年まで1カ月190ヨルダンディナール(約3万2880円)のままである。労働紛争の件数は、2013年が901件、2014年が490件、2015年が474件となっている。法定労働時間は1日に8時間、割増率は平日25%増し、休日の場合は150%増しとなっている。
 ヨルダンには、現在GFJTUが唯一のナショナルセンターとして存在している。(1954年結成)この組織は17の労働組合から構成され、その加盟組合員数は20万人である。
 現在浮上している問題・分野は、家庭内労働、農業労働、そして運輸など機械化が進む分野である。また、路上での物売りや、家庭教師といった個人稼業のような非組織的な労働のあり方なども、経済労働にかかわる規則から外れている労働として問題視されている。

(2)労働組合が現在直面している課題について
 先に特定の問題・分野に触れたが、ここでは現在労働者全体に関わること、あるいは労働者の権利に関わることなどで直面する課題に触れておく。
 1つは、失業率が今なお高く雇用機会が不足していること。2つには、平均賃金が低いということ。3つには、労働組合の結成や団体交渉の権利というものが制限されているということ。4つには、労働者に対する社会的な保護が十分ではないということ。最後5つには、労働者の基本的な権利に対する侵害行為が行われていること。以上5点が課題だと考えている。

(3)その課題に向けてどのように取り組もうとしているのか 
 課題への取り組みとして、1つは、全ての賃金労働者に対してディーセント・ワークの基準、原則を適用していくこと。2つには、公共部門、民営部門どちらにおいても賃金の水準を見直すこと。3つには、最低賃金を見直すとこと。4つには、全ての労働者に社会保障がカバーする範囲を拡大していくこと。5つには、全ての労働者、そして非ヨルダン人の労働者も労働組合を結成できるように労働法を改正していくこと。6つには、労働法の中でも、労働紛争の規定、そして労働紛争解決のメカニズム、仕組みにかかわる部分を改正していくこと。最後7つには、労働省の行う労働監督の有効性を高めていくこと。以上7点をターゲットに取り組みを進めていく。

*1ドル=123.16円(2015年12月4日現在)
*1ヨルダンディナール=173.05円(2015年12月4日現在)