2004年 ウルグアイの労働事情

2004年2月18日 講演録

ウルグアイ労働組合連合会-全国労働者連合(PIT-CNT)
セルヴァ マリアエスクデロロドリゲス

ウルグアイフロリダ県労働組合連合会 代表
厚生関連労働組合 執行委員 兼 PIT-CNT代議員

 

国内の状況

 まず、ウルグアイのここ2、3年の政治、経済、社会的状況についてお話しします。現在の世界的な特徴は、グローバル化であろうと思います。技術の進歩によりさまざまな地域の交流や相互関係のレベルが拡大してきました。このプロセスの特権的な地位は、開放と自由化政策の覇権を世界的な規模で進めることに成功した多国籍企業によって占められています。
 アメリカでは経済が成長しましたが、中南米に限って申し上げますと、この5年間非常に苦しい経済状況にありました。2002年は生産が落ち込み、一番深刻な年になりました。中南米の半数の国は、1人当たり国内総生産の減少を経験しました。
 ウルグアイの主要な産業は、農業、牧畜、中小企業であります。政府はいろいろな施策を講じましたが、結果は生産能力が落ち込み、過去に類を見ないほどの国民の貧困化が起こっています。ウルグアイの人口は350万人で、そのうち労働人口は140万人ほどですが、30万人が失業しており、また賃金の減少を経験しております。つまり労働人口の19%が失業しています。賃金は低下し、何千という労働者が国外移住をしています。そのような影響で、配給の食事で生活をしている労働者が増えています。購買力は30%も落ち込んでしまいました。 労働の規則緩和や柔軟化が起きており、不安な状況を生み出しています。また緊急雇用対策が行われておりますが、その数は少なくて問題の全体を解決するには至らず、積極的な雇用政策というわけにはいきません。国の経済政策は、1つは平価の切り下げと実質賃金の引き下げに基づいての輸出回復のための条件づくり、もう1つは、公共事業をなしにするか、もしくは少なめに抑えて、実質賃金を引き下げた形での財政支出の見直し、そういったことが中心になっています。
 児童の50%が貧困線以下に位置する家庭で育っております。そういった意味でウルグアイは最大の社会危機を迎えていると言うことができます。この国家的緊急事態を鎮静化させるための対策を打ち出すことが火急の課題となっております。
 ウルグアイでは非識字率はゼロです。識字率100%と言ったほうがいいんでしょうか。識字率100%の国ですが、教育レベルの悪化が懸念されております。というのは、このような貧困状態が続くと、学費を出すことにも困るような労働者が出てくると思われるからです。
 医療制度について申し上げますと、医療サービスは厚生省管轄の公共サービスを通じて提供されておりますが、予算は日に日に少なくなるなかで利用者は日に日に増加しているのが現状であります。また厚生省の一般基準に準じた共済事業とか協同組合事業の診療所の形をとった集団的な医療サービス機関としての民間の医療システムもあります。民間の医療サービスは一定の料金を前払いして、サービスを受けるというものですが、その料金は利用者の所得を考慮に入れた額で設定されているわけではないので、それらの機関から脱会する者が増えて、そのためにその機関の経営悪化が起きています。それらの機関では労働の質が低下し、一方では解雇が増えています。
 私の所属する厚生関連労働組合は民間の医療サービスの分野の労働者を組織しています。その労働者はほとんどすべての機関で賃金、ボーナス、休暇手当などの支払いの遅延や賃金の引き下げを経験しております。国家的な医療の緊急事態に直面していますが、医療に関する適切な政策がとられれば、危機は克服することが可能と思われます。労働組合側からの改善の提案が実施されれば、改善できる点が多々あります。

PIT-CNTの活動方針及び具体的な活動

 組織的なお話をしますと、PIT-CNTはウルグアイで唯一のナショナルセンターであります。それを構成するのは産別組織です。その産別組織は単組から成っております。
 労働組合は様々な危機から抜け出すために、できるだけ多くの市民の参加を得て提案をつくらなくてはならないと思います。そのためには、次のような点を考慮しなくてはならないと思います。1つは、国際資本主義プロセスの中で、ウルグアイはどのような位置を占めているかということです。次に、統合された国家としての積極的な政策を策定する上で、そして社会正義のメカニズムの上で、プロジェクトに関係する関係者全員が民主的に参加しているかどうか、ということです。積極的な議論を生むことのできる社会運動として、労働者が必要としている国のあり方についての提案をしっかりつくっているかどうかということです。
 今年の基本的な活動には、雇用と賃金のための闘い、そういった中で積極的な雇用政策や社会政策の実現、それから国家緊急計画の実施が含まれます。そして未組織労働者、特にサービス部門の労働者の組織化に重点を置くこと、それから不安定な雇用の労働者の組織化を呼びかけること、そういった活動を教育担当部を通じて積極的に展開していきたいと思っております。
 また、現在まで後回しにされているか、またずっと侵害され続けているような市民的、経済的、文化的権利や医療の権利の要求をすること、それから、国として憲法にうたわれているとおりの医療や住居、それから教育の権利に対してもっと責任を持つべきだということを要求することが挙げられます。そして労働者の権利を守るための闘いを動員をすることも重要であります。それは賃金委員会とか団体交渉とか労働組合の自由を求めてのことですけれども、そういった提案をどんどんしていきたいと思っております。
 また、ほかの社会団体や地域の統合などを目指した同盟政策にも特に注意が払われるべきだと思っております。そういった連携を通じて法的な対策が促進されるように要求するつもりです。また、労働者投資基金の設置や、所得税の撤廃や引き下げ、最低賃金の引き上げなども要求していくつもりです。
 今日直面している経済、社会、文化、医療などの状況に対処するために、フロリダ県全労組会議の中核をなしている業種、例えば製造、サービス、教育、医療、通信など労働組合は、救済ではなく適切な緊急政策を促進するよう政府に要求する連帯活動を推し進めようと努力しております。また、JUNAE(全国雇用会議)というところも加えた作業チームをつくって、最も支援を必要としている分野を対象とした職業訓練と再雇用も促進しようとしています。また、さまざまな機関や、NGO、聖職者(宗教関係の組織)とも力を合わせようとしています。零細企業の起業といった活動を通じた労働と生産の奨励にも力を入れます。家庭菜園とか小規模協同組合など、労働市場や社会への再編入というものを可能にするために力を注ぎたいと思います。
 人間は、成長過程の中で自分と隣人、環境との関係で人格形成が成されるといいます。環境保護のため、そして人と環境を尊重するような社会を確立するために努力しております。この中で生産プロセスの設計における労働者の参加と、作業や環境に適した技術の確立と科学の進歩の可能性というものは、切っても切れない関係にあります。
 また、労使関係の不安定さ、労働の不安定さ、そして増大する生産性向上の要求の結果として、精神衛生の影響が拡大していることも訴えています。労働者と地域住民の技能習得のためのワークショップ、講習会やセミナーの開催も促進しております。また、労働安全衛生環境委員会の創設なども目指しております。それから労働における保健サービスの促進にも力を入れています。
 ウルグアイのような開発途上国は、多かれ少なかれ同じような問題を抱えていると思います。そのような問題を解決するためには社会的、政治的な意識を広く国民の中で変えていかなければなりません。2004年には経済と雇用情勢が緩やかに回復していくと政府は発表していますけれども、労働者はそれを本当の数字ではない、現実を反映しているものではないと考えております。その理由は、世界銀行からの債務がまだ多額に上っているからです。また今年が選挙の前年であることを考えますと、その数字をすべて信用するわけにはいきません。
 私たちは経験からこのような状況を冷静に分析する術をちゃんと持っていると思います。このような危機意識を国民がしっかり持っていれば、また別のウルグアイに生まれ変わることも可能であると信じています。