2015年 コロンビアの労働事情

2016年1月22日講演録

コロンビア労働組合連盟(CTC)
セルヒオ・フェルナンド・コレア・ロドリゲス
(Mr. Serugio Fernando Correa Rodriguez)

ノルテ・デ・サンタルデール県公務員労働組合 委員長兼CTCノルテ・デ・サンタルデール県事務局長

アデリアーナ・ロハス・ゴンザレス(Ms. Aderiana Rojas Gonzalez)
全国貯蓄基金労働組合(SINDEFONAHORRO) 副会長

 

1.労働情勢

(1)実質GDP・物価上昇率・最低賃金ほか基本情報 
 コロンビアの国内総生産(GDP)の成長率は、2013年が4.3%で、これはメキシコやブラジルなどを上回る数字となっている。2014年も4.6%と高い伸び率で、これは低所得者層の人たちへの住宅政策が影響している。2015年は見通しだが、石油価格の下落などで3.6%と下がっている。
 消費者物価上昇率は、2013年が1.9%、2014年が3.6%、そして2015年は4.5%の見通しとなっている。
 最低賃金は、賃金としての金額と通勤手当との合算で構成されている。最低賃金の上昇率は、2013年が4.0%、2014年が4.5%、2015年が4.6%となっている。その水準は、2013年が約212ドル(約円)、2014年が299.3ドル(約円)、2015年が239.4ドル(約円)となる。
 労働紛争については、2013年は、国立民族研究所の労働組合が紛争を行い勝利している。さらに、全国公務員労働組合が行った労働紛争においては、法律改正という大きな成果が得られ、2014年から公務員が団体交渉権を獲得できた。また、同年には家事労働者の権利を改善する法律も制定されている。2015年には教員労働組合(FECODA)が労働紛争に勝利している。
 法定労働時間は1日8時間、週に48時間、残業は25%増し、22時~朝6時の深夜時間帯では75%増しとなっている。休日の夜間の残業は75%プラス25%、休日の深夜残業は75%プラス35%となっている。

(2)不安定雇用やインフォーマルセクターの現状(雇用の大半がインフォーマル経済に依存)
 コロンビアでは、インフォーマルセクター労働者が多く、安定した収入が保障されていない。この不安定な労働環境は、法令の遵守を指導する立場にある政府の査察不足も影響している。それは、労務費用等の法令で定められた労働条件を守らない使用者の多くが、法令に違反しても行政からの監視や制裁が行われないことを知っているからであり、このことが不当労働行為を助長している。
 こうした状況は、ディーセントワークを保障する収入の不足、労働の安定性の欠如、社会福祉(医療や年金等)の水準の大幅な低下などの状況を伴い、「収入」や「労働の安定性」、「社会福祉に基づく雇用の質」等に関するILOの各条約を無視する形となっている。

2.労働組合が現在直面している課題

(1)悩ましい組織率の低さ
 コロンビアの労働組合を取り巻く情勢は、組織率の低さが問題となっている。現在の組織率は4%と非常に低い数字となっている。
 この原因は、若年労働者などの新規に労働市場に参入する人たちの、労働組合活動に対する恐れからくる嫌気が影響している。コロンビアでは国内での紛争が多かった歴史があり、労働組合活動イコール反政府活動、などの烙印を押されがちで、こうした影響から加入率が極めて低くなっている。また同時に、労働組合活動を行う労働者への弾圧が非常に強い国でもあり、組合活動家は殺人や脅迫、テロなどの脅威にさらされている。しかも、この種の犯罪まがいの行為はほとんど(90%)が罪に問われない。
 また、女性の労働環境は差別や排除が強く、失業率も高いことから、労働組合はジェンダー平等と、労働格差を排除するため、この問題への真摯な取り組みが求められている。

(2)団体交渉件数の減少
 もう一つ重要な課題は、使用者側が団体交渉を避けるために、「集団協定(注1)」、「労働組合契約(注2)」などの労働組合つぶしを行っており、労働組合活動の自由を脅かしていることである。この影響により、団体交渉件数の減少にも悩まされており、実際に2013年は459件の集団労働協約が締結されたが、2014年には347件の締結に減少している。しかし一方で、団体交渉と偽った反労働組合ツール「集団協約」や「労働組合契約」などが増加しており、「集団協定」に関しては2013年の204件から、2014年には236件に増加し、「労働組合契約」は984件から1925件に増加した。さらに現在141の企業が3441件もの「労働組合契約」を合法的に締結している実態から鑑みても、コロンビアの労働組合が、いかに活動の自由を脅かされ、問題解決の役割を果たせていない。

(注1) 集団協定
 使用者側から新入社員の1つのグループに対して、労働組合に入らなければ恩典を与えるという「使用者」と「新入社員のグループ」が結ぶ契約。このような御用組合との協定。現地語では「ファクト・コレクティーボ」と呼ばれている。
(注2) 組合契約
 会社に直接雇用されず、派遣社員のような形で「使用者」と「その労働者」が結ぶ契約。現地では「コーペラティブ」と呼ばれている。

3.その課題に向けた取り組み

(1)早期に実現したい新たな参画メカニズム
 課題である組織率を向上させるために、労働組合教育を行なうとともに、議会に労働組合の代表者を送り込んでいる。特に若者や事業所別組織へ労働組合の理解活動を継続し、「労働組合の強い国が繁栄する国だ」ということを証明していく、新たな参画メカニズムを模索する。

(2)キャンペーン「みんなで訴訟を」
 1つ強調するべき内容として、法律改正行動の取り組みがある。最近では、「みんなで提訴を」というキャンペーンを行い、労働組合あるいは労働者が労働省に対し、労働条件の改善を求めて70件にも及ぶ提訴をしている。また、国が労働の正規化や労働省およびその査察官の役割の見直しにつながる公共政策を促すこと、および労働の派遣サービス化や使用者側が集団労働協約交渉を避けるために使っているツールに反対する抗議行動を巻き起こすような手段も講じなければならない。

4.その他

 コロンビアでは、1960年代半ばから半世紀にわたり反政府組織、極右非合法武装組織と政府軍・警察との国内紛争が続いていた。貧富の格差、特に都市と地方の経済・社会格差が国内紛争の一因であり、この国内紛争が多くの紛争被害者を生み出すという悪循環が続いていた。
 これに対して、ウリベ前政権(2002~2010年)はゲリラ掃討作戦を推進し、都市部を中心に治安改善が図られ、続くサントス現政権(2010年~)ではコロンビア革命軍(FARC)との間で和平に向けたプロセスが進んでいた。
 こうした歴史を経て、コロンビアでは2016年3月26日に和平合意調印が予定されている。この調印により、平静さと繁栄が訪れ、組合活動の自由も謳歌できる環境を願いながら、民主的な労使関係の構築と「平和―社会正義」の強化を念頭に、課題の解決に向けて、CTCが担うべき役割をしっかり果たしていきたい。