2010年 パナマの労働事情

2010年9月3日 講演録

パナマ共和国労働組合連盟(CTRP)
ドリス・エリザベス・マルティネス・メルガレホ (Ms.Doris Elizabeth Martinez Melgarejo)

Melo Group労働組合 財政局書記

 

1.労働事情

 2010年の国勢調査によると、人口3,322,576人を擁するパナマの2009年3月時の労働人口は民間部門520,910人、公的部門205,156人。失業率は6%であった。
 解雇コストの削減、労働者の身分保障の弾力化などを意図した1995年の労働法改正後、失業者の減少も年間雇用率アップも実現しなかった。それは人的資源以外のコスト削減が図られなかったため、生産性向上がみられなかったからである。
 現在も依然高い失業率が続くパナマではあるが、国内経済は徐々に回復の兆しを見せている。とりわけ高層ビル建設、道路開発、巨大港湾施設建設、パナマ運河拡張工事部門などその規模の大きさから多くの投資と労働力需要を生んでいる。
 パナマでは1914年の法律6号によって1日8時間労働が定められている。一方、最低賃金は2年ごとに政府による見直しが行われるが、その額は地域により、また職種により異なる。ちなみに首都の場合は時給1.89ドルである。
 安定した労働環境の欠如は、「労働の権利ならびに生活の権利」の不在を意味し、名文で知られる我が国の憲法はあたかも「絵に描いた餅」であり、何ら国民の尊厳ある権利を保障するものではない。
 現在、パナマでは商業セクターやサービスセクターで、労働のインフォーマル化が急速に進みつつある。具体的には卸ならびに小売業、個人サービス、農業、ホテル業、レストラン、不動産賃貸業などである。

2.直面している課題

 多くの課題を抱える中で、最も重要なものは通称「チョリソ(腸詰ソーセージ)法」と呼ばれる法30号の撤廃である。この法律は組合費の廃止、スト権の廃止、自由な組合活動の禁止など様々な労働法改定を謳っている。
 同様にチリキ県アルムエジェ地区でも強引に1つの法案が議会を通過し、この地区は「団体交渉は10年ごとに行われる特区」に指定された。そのほか、cacelazo法といわれる法律が成立し、これにより街頭での抗議行動が禁止され、違反者に対しては2年の禁固刑が科せられることになった。

3.課題解決に向けた取り組み

 パナマ共和国労働組合連盟CTRPだけでなく多くの組合が告発、街頭行進、ゼネストなどを通して前述の課題に取り組んでいる。しかし、政府は何ら対応ならびに回答を示しておらず、その怠慢ぶりがまた更なる国際的な告発の対象となっている(ILOによる告発)。
 ボカスデトロ県チャンギノラ地区にある国内最大のバナナ労組は、前述の法30号の撤廃を要求する街頭行動を行った。この際、警官隊との衝突で散弾銃により4人の運動家が殺され、60人以上が負傷、およそ20人が片目を失明するなどの被害を受けた。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 これまでの政府の姿勢が原因で社会不安が広がりつつある中、やっと政府は組合リーダーとの話会いを開始し、その中で法30号の2つの条文廃止が政府側から取り上げられた。同時に政府は当該法の施行を延期し、その間解決に向け90日間の予定で双方の代表者による委員会での交渉が進められた。労組側は法律の全面的な撤廃を要求している。

5.多国籍企業の進出状況について

 パナマ経済はサービス部門に大きく依存するため、新たな開発手段が期待できる現在のグローバル化の潮流が必要と言える。一方、南米大陸の中間に位置し海、陸、空あらゆるルートでのアクセスが可能なパナマはトロピカル気候、自然災害ゼロ、開放的なサービス部門、豊富な人材、国内通貨としてのドル流通、国際的な通信基地、安定した政治経済情勢など多国籍企業がその本部を設置するための諸条件が揃っている。
 現在、パナマ国内には以下のような多国籍企業が存在しており、このなかでNESTLEは唯一安定した組合を持ち、CTRPにも加盟しており、健全な労使関係を築いている。
 Alico、CAT、BMW、MARS、CEMEX、ABB、Hiusung Corporacion、LG、NESTLE。