2007年 ニカラグアの労働事情

2007年10月10日 講演録

ニカラグア全国民主労働組合統一会議(CUS)
フレディ アントニオ ヴェラスケス ルナ

運輸・インフラ省労働者連盟 官公労民主連盟書記長

 

国土と政治

 ニカラグアは中央アメリカに位置し東はカリブ海に西は太平洋に面している。人口約535万人、主要産業は農牧業の国である。ニカラグアは1826年に、スペインの植民地状態から独立した。それ以来、さまざまな政治的イデオロギーによって統治されてきた。リベラルな政治また保守的な政治、社会主義的、共産主義的な政権も経由して、現在は括弧つきながら民主主義と呼ばれる政権を持っている。2007年1月、現大統領ダニエル・ホセ・オルテガ・サーベドラが就任した。38%という低い得票率ながら大統領に当選17年ぶりに政権に復帰した。新政権にとって貧困の削減が最重要課題となっている。新大統領就任以降、ニカラグア共和国の労働事情は一変している。新大統領は社会主義的、共産主義的な方向をとりながらも、公共部門では労働組合運動に対して弾圧的な態度をとっている。労働組合権の侵害、労働法違反など国が締結した労働関係の国際協定やILO条約の違反が見受けられる。

新政権の政策

 オルテガ大統領率いる現政権は、就任9ヶ月の間に公共部門の労働者約6000人を、法的な手続きをとることなく一方的に解雇している。この中には労働組合指導者も含まれている。労働者として、人間として、また個人として、市民としての諸権利を剥奪されている。現在も様々な階層の労働者数百人が解雇の危機にある。労働者の権利を代表するはずの機関が弱体化し、現政権寄りの政治的立場を取っており、組合活動の侵害や、憲法に認められた労働者階級の権利が侵害されている。

労働組合の対応

 ニカラグアの労働組合は、その大半が全国民主労働組合統一組織(CUS)を通じて国際労働機関(ILO)に対し、現政権による繰り返し行われたILO条約違反に対して2007年9月に提訴している。社会経済的な大変動のなかで先にはハリケーン・フェニックスの襲来を受けてニカラグア大西洋岸の数百人の漁業労働者が行方不明になるという大惨事も起きている。メキシコの偉大な指導者、ベニート・フアレスは「国と国の間で、そして人と人の間で相手の権利を尊重することこそ和平である」と述べた。このような考えが尊重されるような世界の実現のためにニカラグアはこの難局を克服していかなければならない。

社会機関としての労働組合

 国内政治は外資の動きに大きく左右される。労働組合の存在意義を明確にするために憲法改正を働きかけている。労働組合の中には御用組合と化してしまった例が少なくない。さらにニカラグア全国民主労働組合統一会議(CUS)は労働法の整備も要請している。

多国籍企業

 ニカラグアには多くの外資が進出している。ニカラグアは米国・中米・ドミニカ共和国自由貿易協定(DR-CAFTA)を締結している。新政権の外資誘致政策によって、以前は中国などに生産拠点を持っていた企業がニカラグアの貿易特区に進出するようになった。外資は、労働組合活動を妨害する傾向がある。中米の中では、比較的人件費の安いニカラグアに多くの多国籍企業が目をつけている。ベネズエラなども、ニカラグアの石油産業に進出している。

最低賃金

 ニカラグアの労働組合運動は、労働者の権利を守ることに力を注いできた。それは他の中米諸国と同様に憲法で保障されているものである。最低賃金については政府を含む三者構成の審議会で建設など4セクターに対して決められている。三者構成の政府代表には議決権はない。但し、労使の一致が見られない時は政府に裁定権限がある。現在、法律では半年ごとに最低賃金の見直しがおこなわれパーセントで増額することが規定されている。しかし、この最低賃金は、必ずしも満足な額とはいえない。最低賃金は月当たりの賃金として決められているが現在は月額1400コルドバ(70ドル相当)である。外資にとっては魅力的な労働市場である。貿易特区があるために、税金も免除されている。労働組合の存在というものを会社内に認めない。そのために外資においては、組合活動は少数派になっている。