2011年 メキシコの労働事情

2011年12月9日 講演録

メキシコ労働総同盟(CTM)
Ms. マウラ・パトリシア・エルナンデス・タピア

 

1. 労働情勢(全般)

 国立統計地理院(INEGI)が発表した雇用統計指標は、経済危機が生んだ問題の一つをあからさまにした。それは労働条件の質の深刻な悪化である。失業者(584,000人)対策は、2011年の経済政策の中で解決されなければならない深刻な懸案事項ではあるが、それは氷山の一角に過ぎない。
 インフォーマル経済に流れ込んだ人々、不完全就労状態にいる人々、医療手当を受け取っていない人々、または最低賃金に満たない収入の人々の数に関するデータをみれば、2009年の雇用の質は経済危機によって大きく後退したことを示している。 
 第1に、インフォーマルセクターで働く人々は、2008年に比べて938,000人増加し、INEGIによると、1,260万人がこの状態にあることが挙げられる。これがどのような規模なのかを知るためには、メキシコ社会保険庁の報告では2009年末時点の正規雇用労働者数が1,230万人と公表されたことで理解できる。このことは、インフォーマル経済には正規労働者数を上回る人が流れ込んでいると公式な統計が認めたことになる。
 不完全就労の規模にも触れておく必要がある。2009年中に816,000人増加し、合計が390万人となった。これら不完全就労者は最も基本的で必要な最低限の収入の道を探る国民の姿を映し出しており、最低賃金も払われない雇用形態でも受け入れざるを得ない状況となっている。
 最後は前述した3点目についてである。仕事を持つ2,870万人弱の人々は医療制度のサービスを受けておらず、INEGIの報告では、この数字は2009年に170万人近く増加した。メキシコは競争力や生産性において概ね良好な位置を占め、それらの目的を達成できるような改革を模索する必要があるといわれている。その政策の中には、全国民が医療制度のサービスを受けることを保証することを入れておくべきである。
 もう1つ考慮すべき点は、医療手当以外の手当が受けられない労働者が1,130万人いるということである。ここまで述べてきたことは、労働当局が法律の定めている役割を、充分に果たしていないことを明らかにしている。
 最後に、幸運にも職を維持することができた労働者が受け取る賃金について述べる。INEGIによると、最低賃金2単位分未満の収入しか得ていない人が220万人増加した。
 これにより、一家が貧困状態から抜け出すのを保証するのに充分な収入を得ていないメキシコ人は2009年末時点で1,600万人近くいると見られている。この状況は、1世帯あたり1人以上が働く必要があるという状況に直面していることを示している。

2. 労働組合が現在直面している課題

 メキシコ労働総同盟が直面している主な課題はグローバル化であり、これはわが国に労働の柔軟化、集団契約の減少、下請け化、派遣労働化、労働法制改変の試み、社会保障の削減などをもたらしている。その他の課題は、労働組合組織自体の近代化、日常作業や組織内の通信における新たな情報通信技術の利用である。 

3. 課題解決に向けた取り組み

 これらの問題を解決するために組織がとっている行動は、経営者組織および共和国政府との社会対話の促進である。対話を通じ、グローバル化プロセスにおいて定着していることを受け入れる必要はなく、最低限の賃金保証、より良い労働条件や医療条件、より多くの労働手当、より良い住居、より高い教養等の労働者のニーズに応えるべきであると主張している。今までのところ、我々はILOの定める通り、社会対話を通じて合意に至っているが、容易なことではなかった。

4. ナショナルセンターと政府との関係

 CTMとメキシコ政府との間の関係は、互いに敬意を払う関係である。そして、政府のさまざまな委員会に代表を送っている。例えば、国家年金貯蓄制度委員会、全国労働者住宅基金庁、年金審議会、メキシコ社会保険庁である。ただし、労働政策に取り組む姿勢は当然違う。意見の異なる政策は、政府の労働法制改正、雇用指標、生産性、社会保障、職場の健康と安全、年金等である。

5. 多国籍企業の進出状況と労使紛争

 今もそうだが、一時期、食品製造、鉱山、特に日本とアメリカの自動車といった、あらゆる種類の多国籍企業がわが国で大量に設立され、最近もマツダとホンダが開業し、どうやら来年までに他の自動車会社、電話会社や海運会社がやって来るようである。わが国に進出するにあたっては、わが国で営業するために定められた法的な枠組みを遵守しなければならない。進出した後は該当する労働組合組織との協議に入り、集団契約や従業員の雇用形態について話し合わなければならない。これらに関して合意に達して初めて、企業活動が正式に始まる。企業と労組は賃金改定、欠勤、労災、賃金支払いなど、企業経営すべてに関わる問題が発生するたびにこれを解決していくことになる。今のところ紛争はなく、反対に我々は彼らとともに協力関係にあると言える。

労働者全国連合(UNT) / メキシコ
Mr. アルマンド・ガルシア・ゴンザレス

 

1. 労働情勢(全般)

 経済情勢は、危機的な状況であり、失業者が急増している。雇用を保証する適切な公的な政策が欠けている。

2. 労働組合が現在直面している問題

 (1) 会社が労働組合を管理し、自由な組合活動をおこなう権利や団体交渉権を奪っている。
 (2) 低賃金であり、よりよい労働条件を求める労働協約が広範囲に欠如している。
 (3) 政府による組合管理を打破すること。
 (4) 行政機関から労働関連機関を独立させること。
 (5) 最低賃金の引き上げ。
 (6) 失業問題(雇用対策)。
 (7) 経営側に保護された労働組合を根絶すること。

3. 問題解決に向けた取り組み

 労働者の組織を強化し、企業の利益ではなく、労働者の利益にこたえる、真の労働組合をつくる。労働法制の改革を推進し、個人や団体の労働に関する保証を遵守させる。特に、労働界を民主化し、労働関連の司法機関の構造を変える。組合幹部の選挙方法を変える。労働に関係する全ての機関や組織の透明性を確保するメカニズムをつくり出す。組合員や組合幹部養成のための組合教育活動を推進する。立法機関に代表を送る。ILO条約を最低限の条件とする。

4.あなたのナショナルセンターと政府との関係について説明してください

 緊張した関係であり、最低限の対話しかなく、距離をおいた関係にある。政府は労働者の権利を尊重しない政策を進めているので、政府を批判し要求をおこなう立場を維持しなければならない。現在の政策や対策は労働者が必要としていることに対応していないので、こうした政策や対策を変えるよう提案をおこなう。また、経済危機による影響を緩和する戦略や政策がないので、対策をとるよう要求するとともに、ディーセントワークの創出、国内で増加している貧困に対する対策を求めている。

5. 多国籍企業の進出状況と労使紛争

 現在は、経済危機により、多国籍企業の進出は停滞している。一般的には、多国籍企業は組合に反対する政策をとっており、御用組合的な合意をとりつけている。政府は、外国からの投資を振興するために、御用組合を正当化しており、投資を呼び込むために「よりよい条件や保証を提供する」としている。こうした政府の政策は、労働の権利を尊重した雇用創出を考慮していない。経営側を保護する契約をおこない、自由な組合活動を全面的に禁止し、最低限の労働条件を維持する政策をとっている。労働者が自由に団結しようとすると、会社を閉鎖すると脅してくる。深刻な例として、スペインのテレフォニカ社系列のコールセンター・アテントの例がある。