2001年 ジャマイカの労働事情

2001年7月12日 講演録

ヘレンデイヴィスホワイト
地方公務員組合連合事務局長

 

JCTUの設立

 ほかのカリブ諸国と同じく、我々の労働運動というものも非常に植民地主義、奴隷主義の影響を受けてきました。その結果非常に階級色が社会に濃く、そして産業は砂糖とバナナを中心とする一次産業が主なものでした。そこで労働組合の成立に当たっては、ヨーロッパのように製造業からではなく、農業セクターから始まりました。そして労働組合の歴史の中で画期的なものは1938年5月23日の労働者の暴動です。これが労働組合を組織する糸口になりました。ジャマイカの労働組合のコンセプトの中で特徴的なものは、他国と違って政治的な色合いを持っているものです。そしてこの政治的な影響は、二大政党に2つの主要な労働組合が加担しているということで、それによって労働組合の間に非常に対立関係が芽生えて、この対立は時には非常に過激なものになっていました。
 しかし、こうした対立関係は時とともに変化しました。1980年に共同で労働組合研究開発センターを設立しました。そして、この労働組合研究開発センターをベースに共同でさまざまな活動をしてきましたが、その活動は主に教育と研究に的が絞られていました。労働組合研究開発センターでのさまざまな共同活動を通 じて、1994年にJCTUが設立されました。

国内の状況

 ジャマイカでは1990年代半ばより経済不況が進行しています。経済不況によって金融セクターはほとんど崩壊しました。だからといって、それ以前に経済不況がなかったわけではありません。特に70年代半ばから80年代にかけての不況は、IMFが課したさまざまな条件による不況でした。この70年代の不況の時代にはさまざまな社会改革がありました。その中には社会階級の改革も含まれてお、りそれが経済に非常に大きな影響を与えて、その影響からいまだ完全に立ち直ってはいません。経済不況によって、多くの企業が倒産し、閉鎖されました。それによって多くの労働者が一時解雇、あるいは解雇をされました。現在の失業率は約16%です。この16%という数字は政府発表の数字で、労組としてはこれより高いと考えています。特に失業率が高いのは19歳から25歳の年齢層です。この若年層の失業率が高いことによって、さまざまな社会問題が起こっています。
 それに加えてグローバル化によるさまざまな悪影響も出てきています。我が国の経済は90年代初めに規制緩和がなされました。それによって製造業、農業はほとんど壊滅的な打撃を受けました。というのは外国からの輸入品と競争するのが困難だからです。その結果 ジャマイカは輸入超となり、国際収支は大きく赤字で、赤字額は19億690万ドルです。しかし近年になってインフレも安定してきて、現在約6% その結果外貨準備高も9億6,950 万ドルに改善しました。そして、さまざまな金融セクターの改善策がとられたことによっていい結果 も生まれつつあり、外国からの資金を特にITやホテルの分野において引きつけています。
 次に政治、社会問題についてですが、ジャマイカでは政治的な紛争の歴史があります。時にはそれが非常に過激なものでした。こうした状況も近年には改善されてきています。ただ、選挙のときには非常に過激な選挙活動が行われる可能性があります。先週キングストンで、軍隊がこの過激な選挙活動に介入し、多くの人が逮捕されたというニュースが伝わっています。2つの政党間のイデオロギー的な対立は少なくなりました。それでもこうした古い習慣というのは、いつまた再燃するかもしれない状態です。
 犯罪が増加し、麻薬組織は大きな脅威になっています。法律と秩序の維持にとっても 大きな脅威です。一方では麻薬のギャングが活躍し、一方では貧困層が増加しつつあります。人口の約20%が貧困ライン以下の生活をしています。1970年にはさまざまな教育プログラム、保健プログラム、また住宅プログラムが行われました。しかし、ホームレスの数、ストリートチルドレンの数が増えていることを考えると、その効果は疑問です。

JCTUの活動方針

 ジャマイカのさまざまな問題を解決するためには、利害関係者すべてが団結して、国の繁栄のためには経済成長が不可欠のものであるということを理解することが必要であると考えます。しかし、この経済成長は雇用を犠牲にするものであってはなりません。間もなくカリブの単一市場制度が導入されます。それをかんがみ、政府も民間セクターも協力して教育プログラムに力を入れ、ジャマイカ国民の持っている創造的な力を引き出すようにしなければなりません。そのためのキャンペーンを行っています。  ただし、政府と労組の考え方には違いがあります。政府はソーシャルパートナーシップ(社会的対話)を推し進めようとしていますが、労組側としてはソーシャルパートナーの間にはまだまだ不信感があります。まず、ミクロレベルでこの不信感を取り除くことから始めなければなりません。そのためには国家レベルではなくて、さまざまな産業レベルで、パートナー同士の相互の理解を図るということが必要です。そしてパートナー同士がMOU(メモランダム・アンダースタンディング)に調印し、それによって三者が共同して政策を行い、その政策に伴う犠牲も共同で払うという、その理解の覚え書きです。それによってセクターにおける効率と利益を上げていくことができます。