2004年 スロバキアの労働事情

2004年10月12日 講演録

スロバキア労働組合連盟(KOZSR)
ユライ・ブラハーク

KOZSR副会長(製造部門担当)

 

 チェコとスロバキアはずっと一緒の国でしたが、先ほどチェコのCMKOSのザヴァジルさんから両国の労働組合の14年間の歴史について報告がありましたので、私の方からは割愛します。
今年6月にブラッセルを訪れた折に、スロバキアはEUに加盟したが、何が変わったかという質問を受けました。2つの変化があると私は答えました。第1に、空港でEUの市民が使える入り口や出口が使えるようになりました。第2に、EU域内ではパスポートは要らないので身分証明書で十分となりました。つまり、大きな変化はないということです。

EU加盟までの社会経済的変化

 EUに加盟するまでの14年間に、法律の分野や社会的な面でもさまざまな変化が起こりました。この14年間をさらにいくつかの段階に分けることができます。1990年から92年までの間に、このときはまだチェコスロバキアですが、一番著しい、大切な社会的また経済的な変化が起こりました。1992年10月にスロバキア憲法が制定され、1993年1月1日にスロバキア共和国が誕生しました。新しい国としてさまざまな行政機関を設立する必要がありました。新しい通貨を導入する必要もありました。
1994年から1998年には、民営化という極めて困難な過程が起こりました。1998年9月の選挙で、新しい民主的な政府が樹立されました。
1998年から2002年までの間は、スロバキアで大きな改革が始まった期間でした。スロバキアは2000年12月にOECDに加盟しました。2002年に行われた選挙の後に改革がさらに徹底していきます。2004年3月にNATOのメンバーにもなり、同年5月にはEUに加盟することになりました。

EU加盟後の課題

 現政府はユーロを通貨として導入することを第1の目標としています。ユーロを導入するために、インフレや財政赤字に関する非常に厳しい条件が定められています。同時に、失業率を低くすることも条件の1つで、失業率の削減は政府の第2の優先課題です。1998年から1999年までの間は、スロバキアでは登録失業者の比率が20%まで上昇しました。労働組合を含めた3ヶ月にもわたる厳しい議論の末、政府は労働市場の柔軟化をさらに高める労働法の改正を行いました。
労働法の改正により、雇用契約の反復更新が可能になりました。これは3年間までは可能です。さまざまな人材派遣会社から人材を派遣してもらうことも可能になりました。労働法の改正により就労者の解雇制度も緩和されました。この労働法の一部分には、労使協議制に関することも含まれています。労働者の代表としては、労働組合だけではなく、従業員代表の制度もあります。ただ1つ違いがあって、その従業員代表制度では、団体交渉に参加することができません。
失業保険に関する法律も改正されました。政府はまず、失業者が失業保険の手当または失業のためにできた社会制度のみに依存するのではなく、むしろ自ら職を探すように動機づけを行うことに重点を置く内容に法律を改正しました。このようなアイデアはすばらしいとは思いますが、スロバキアの地方によっては、1つの就職先に対して70人の失業者がいる状況もあります。失業者の登録に関する条件もさらに厳しくなりました。失業者は毎週職業安定所に行って、そこでほんとうに仕事をしたい、本当に仕事を探しているという意思を行い、それを証明しなければなりません。失業手当をもらっていない人のために、別の社会保障制度もあるんですが、それをもらうための条件もさらに厳しくなりました。
政府の優先課題には、海外からの投資をスロバキアに誘致することもあります。そのためにさまざまな直接的、また間接的な方法があると思いますが、税制の改革という方法についてお話ししたいと思います。以前は法人の利益にかかわる法人税は23%でありましたが、それが19%に引き下げられました。個人の所得税も統一されて19%になりました。付加価値税も19%で統一されました。相続税がなくなり、それから株主の利益にかかる税金も撤廃されました。このように、税金の面ではスロバキアはヨーロッパの中で一番魅力的な国の一つになりました。
このような変化が実際に起こる前に、スロバキアの失業率は20%でした。現在、登録している失業者の比率は13.6%です。今年のインフレは7.1%で、来年の見通しは4%未満です。GDPの成長率は、前の2、3年の間は4から4.5%まででした。しかし、地域間での大きな格差があります。例えば首都ブラチスラバとその周辺のGDPの水準は、EU平均の107%です。それに対して、東スロバキアではEU平均の60%にしか過ぎません。
このような数字を見ますと、非常にいい結果を示していますが、マクロ経済の数字として良いだけで、実際の国民の生活は、それほど大きく変っていません。実際に国民は政府が行っている改革の結果に耐えられないと思っており、労働組合は常に政府と対立してきました。
財政を改革する中で、年金制度も変わりました。日本と同じように、スロバキアも少子化と高齢化の問題を抱えています。年金制度の改正により、年金の受給年齢が、男性の場合は60歳から62歳に引き上げられ、女性の場合は57歳から62歳に引き上げられました。

賃金の動向

 賃金について申し上げますと、ヨーロッパの先進国やアメリカ、日本などに比べたら非常に低い水準ですが、スロバキアは物価も安いということを申し上げなければなりません。しかし今は自由主義経済に移行しましたので、物価が自由に上下しますので、賃金と物価の間の調整を図らなければなりません。それは労働組合にとっても非常に大切な課題です。
これについて例を挙げます。スロバキアの最低賃金が220ドルです。現在の平均賃金が550ドルです。平均の年金は毎月250ドルぐらいです。平均賃金というのはあまり信用できない数字ですけれども、例えば農業においては平均賃金が1万スロバキアコルナ未満です。銀行の部門ではおよそ3万スロバキアコルナです。自動車産業とある電機製造の企業では同じようにおよそ3万スロバキアコルナです。教育部門ではおよそ1万5千スロバキアコルナです。だけど例えば原油生産部門では4万コルナです。首都とその周辺は2万5千コルナで、東スロバキアでは1万3千コルナが平均です。現在のレートで1米ドルが32スロバキアコルナに相当します。
労働組合は労働協約について、2つのレベルで交渉しています。それは産業別と企業別のレベルです。しかし高い失業率を考慮に入れると、労働組合側から経営側にもっと賃金引き上げの圧力をかけるのは難しい状況です。
スロバキアに行かれますと、ほんとうにさまざまな変化があったということが目に見えると思います。例えば新しいビルとか新しい企業が目につくと思います。しかしこれから一番大切なのは人の考え方を変えていくことだと思っております。

スロバキア労働組合連盟(KOZSR)
ヤーン・ガシュペラン

KOZSR副会長(非製造部門担当)

 

 私は、スロバキアの公共部門について報告します。
スロバキア労働組合連盟(KOZSR)は、現在加盟組合員は57万人、37の産業別組織で構成されています。その中には、製造部門と非製造部門の双方の労働組合が含まれております。ブラハークさんは製造部門の労働組合を担当する副会長で、私は非製造部門を担当する副会長を務めています。

医療と教育の改革

 現在、スロバキアでは2つの重要な改革が進んでいます。それは医療部門と教育部門における改革です。医療部門の改革は非常に激しい議論を引き起こしましたが、先週、国会で医療部門の改革に関する6つの新しい法律が可決されました。
教育部門では2つのレベルでの改革が進んでいます。それは大学のレベルとその他の教育機関での改革です。小、中、高等学校の改革では教育の内容と、学校の設立に関する改革があります。教育内容に関する改革は非常に大切だと我々は考えています。なぜかというと、これまでのスロバキアの歴史的な教育部門の伝統を守りたいと思っているからです。同時に、もっと創造力を発揮させる教育、語学に重点を置く教育、人間としての教養に重点を置く教育内容に改善していく必要があると考えています。しかも労働市場で成功できるように、これからの若者にそういう教育を提供していかなければなりません。
スロバキアの教育部門の一番重要な課題は資金不足です。OECDの国々での平均は、GDPの6%が教育部門に割り当てられていますが、スロバキアではすべての資源を合わせても4%にしかなりません。

労働事情を聴く会