2005年 ロシアの労働事情

2005年2月2日 講演録

ロシア独立労働組合連盟(FNPR)
アンドレイ ボリソヴィチ メレンチエフ

ロシア連邦議会対策調整局主任専門員

 

組織の概要

 ロシア独立労働組合連盟(FNPR)は1990年に誕生しました。今年は創立15周年であり、ロシアで労働組合運動が始まって100周年の年にも当たります。
 FNPRは現在、ロシアで最大の労働組合連盟です。傘下には43の産別が加盟し、組合員総数は3,000万人にのぼります。ロシア連邦の各共和国、各地方、各州などで78の地域間労働組合連盟と、地方労働組合連盟が活動しています。2001年からはロシアに7つあるすべての連邦管区にFNPRの代表を置いています。
 FNPRの最高機関は5年ごとに開催される大会です。大会から大会までの間、FNPRの活動を取り仕切るのは総評議会です。この総評議会は年に2回開かれます。より機動的に活動するため、総評議会のメンバーから執行委員が選出されて月に2回の執行委員会を開催しています。
 FNPRはロシアの社会労働関係調整のために設立された三者委員会において労働組合として重要な役割を果たしています。三者委員会の中で労働組合側に割り当てられたメンバーは全部で30名ですが、そのうち24名が私たちFNPR出身です。このロシア三者委員会の労働組合側のコーディネーターを務めているのがFNPRのシマコフ議長です。

活動内容

 今、ロシアでは行政改革が盛んに行われています。この行政改革に伴って国会組織の形態が変わり、三者委員会は一時的に活動を中止しています。このことで状況は悪化しています。たとえば三者委員会が活動していない間に政府は下院に対して社会的弱者への優遇措置を現金で支払うという法律を提案しました。そしてこの法律が採択されました。
 このような状況下においてFNPRは国内の他の労働組合組織と協力して抗議活動を行いました。この抗議の甲斐があって9カ月間停止していた三者委員会が再び機能しはじめ、政府が出した優遇措置現金払いのための法律が良い方向に修正されることになりました。昨年12月29日には2004年から2005年までの一般協定というものが締結されました。
 労働者教育について申し上げます。FNPRは労働教育システムを持ったロシア唯一の労働組合センターです。この教育システムの下で2つの高等教育機関がモスクワとサンクトペテルブルクにおいてそれぞれ活動しています。私たちが所有している労働アカデミーは2000年にユネスコからの承認を受けました。私自身はサンクトペテルブルクの出身で、サンクトペテルブルクで活動を行っています。ここでも労働組合人文大学が活動をしています。
 FNPRの活動の中でもとりわけ重要なのは、いわゆるジェンダーイクオリティーを達成することです。最近では青年対策の問題にもかなりの関心を払っています。2002年にはモスクワで青年国際フォーラムという会議が開催されました。また国際的な活動も重要視しており、世界100カ国以上のナショナルセンターと常にコンタクトを持っています。2000年の11月からはFNPRは国際自由労連のメンバーになりました。ILOにも参加しています。

ロシア独立労働組合連盟(FNPR)
エレーナ ミハイロフ ナソフロノーワ

青年委員会委員長

 

組合活動への参画

 私が生まれ育ったのは人口約4万5,000のウラジミール州・ギャズニキ村です。そこで小中学校を卒業した後、ウラジミール州立の工業大学に進み、エンジニアの資格を得ました。1993年、生まれ故郷に戻ってトラクター照明工場で設計士として働き始めました。私たちの工場の製品数は500品種以上にも及び、主として照明器具や信号機や交換機を製造しています。主要な取り引き先はロシアの有名な自動車会社で、アフトバス、ウアズなどです。
 私たちの社の製品はヨーロッパ経済委員会の要求に見合っており、海外にも輸出されています。スペイン、イラン、ブルガリア、ハンガリー、ドイツ、ポーランドなどです。従業員は4,500人、2004年には工場創立30周年を迎えました。
 この工場で働くに当たり、私はさまざまな困難に直面しました。それがきっかけで労働組合活動に積極的に参加するようになりました。最初、私は工場の一部を組織する委員会の委員長に選ばれました。その後FNPRや国際自由労連のセミナーに何回か参加し、仲間たちと会社でさまざまなセミナーを実施しました。会社に対して青年評議会の設置を要求した結果、工場内に青年評議会が設立されることとなりました。

在の活動内容

 私は現在ウラジミール州労働組合連盟の青年委員会委員長を務めています。青年委員会は組合本体と密接に協力しながら活動しており、2005年から2006年にかけての集団協約には初めて青年政策が盛り込まれることになりました。また組合は青年委員会の活動プログラムに対して資金面の援助をしてくれています。
 この活動と並行して、私はウラジミール州労働組合連盟の一員として、セミナー、戦略活動、フォーラムに積極的に参加しています。2002年にはウラジミール州労働組合連盟の青年委員会の議長に選出され、2004年にはFNPRの青年評議会のメンバーになりました。
 2004年1月からはFNPRの一員として、モスクワの労働社会関係アカデミーで社会パートナーシップの勉強をしています。このアカデミーでは京都大学経済研究所の招聘教授であるルティック教授が「現代マネジメントの理論と実践」という授業を担当していました。彼の講座は日本の労働マネジメントシステムというもので、とても興味深く聞きました。今回、私は社会経済生産性本部訪問を通じて日本の労働マネジメントの実際について知る機会を得ました。私を招聘していただいたことに感謝を申し上げます。

全ロシア労働総連盟(VKT)
リリヤ ラヴィリエフナ アブゾーワ

情報局長兼執行委員

 

組織の概要

 全ロシア労働総連盟(VKT)に加盟している産別組織は、ロシア鉱山労働者独立労働組合、ロシア公共サービス労働組合、ロシアエンジニア技術者労働組合、ロシア自動車製造業労働組合、ロシアニッケルコバルトプラチナ製造労働組合の5つです。全国の80地域、都市、州等にまたがっており、52の地方組織があります。
 ロシアには私たちVKTのほかに2つのナショナルセンターがありますが、その2つのナショナルセンターとともに私たちはロシア社会労働問題調整三者委員会に入っています。この委員会の活動の一環として、全国一般協約の策定、つまり組合と経営者団体、政府間のゼネラルアグリーメントの作成・締結に参与しています。
 去る2000年、VKTはICFTUに加盟しました。私たちの加盟組織もグローバル連盟(GUF)に入っています。
 現在の加盟人数は127万900人で、この3年間で2倍になっています。VKTは緩やかな連合体組織であり、加盟組織がVKTに支払う組合費は下部組織から地域別組織に入ってくる組合費の5%となっています。
 2002年2月にはもう1つのナショナルセンターであるKTR(ロシア労働総連盟)との調整評議会を設置しました。設置の目的はVKTとKTRを1つのナショナルセンターに統合するため、法的・思想的・組織的な基盤を築いていくことにあります。この2つの組織の統合に関してはそれぞれの合議機関で決定します。またVKTはKTRと共同で統一労働組合新聞という全国紙を発刊しています。このほか各地方組織はそれぞれの機関紙を持っています。
 次に私が局長を務めているVKTの情報局の活動に関してお話します。
 情報局の役割は私たちの組織、加盟組織団体の情報提供をしていくことです。提供する情報の中にはそれぞれの加盟組織が行っている活動内容が含まれていますが、こうした情報交換を行うことによって効果的に協力関係を促進し、それぞれの活動を調整していくことが可能になっています。
 VKTの情報局とその他の地域産別組織との間にコミュニケーションシステムが敷かれています。このシステムは加盟組織全体をまとめる共通の情報網として機能しています。ここで発信される情報はVKTのサイトで見ることができるほか、VKTに協力的な新聞、雑誌等にも掲載されます。残念ながら一般の全国紙や雑誌では私たち労働組合の活動に関する記事、情報はほとんど取り扱っていません。これは、おそらく私たちからの情報提供が乏しいからではないかと考えております。そういうわけですので、全国レベルのマスコミに対して定期的に情報提供をしたり、記者会見等を行ったりしています。
 情報局はまた、組合員、労働者に対しての啓蒙活動も行っています。たとえばダイジェスト版の新聞を作り、ロシア、その他の世界各国で起きている重要な社会的な出来事を伝えています。
 今後は世界の各労働組合の組織、連合をはじめとする各国の組合との協力関係を一層強化していきたいと思っています。JILAFの力添えを得て実り多き協力関係を構築し、それぞれの国の労働組合活動や一般情勢について情報交換をしたいと考えています。

活動方針

 私たちの活動の目的は、福祉、賃金向上のために最大限の努力をしていくことにあります。ここには労働安全衛生対策および組合員の生活や余暇の向上、組合員の利益と権利を守ること、各自の実力を自由に発揮できるように権利を守ること、職業上の、または国民としての尊厳の権利を守ることなどが含まれています。
 基本的な方針として私たちは、民族や性別、政治的な信条、宗教に関係なく組合を設立し、その活動に参加できるようにしています。また憲法で認められた権利を実現できるように尽力しています。活動に当たっては、ロシア連邦の憲法、法律、地方自治体レベルの法律、ILOの条約勧告、その他の国際的な基準にのっとるようにしています。
 次に労働者の利益を守るための活動について具体的に3点お話ししたいと思います。
 1点目は雇用問題です。VKT第4回大会でこれに関するプログラムが策定をされたことを受け、効果的な雇用政策の実施を政府に要求しました。その要求内容とは、失業者が積極的に社会復帰ができるよう職業訓練を受けられるようにすること、新しい雇用創出のために国としての協力、支援し、不当解雇に対する対策を講じることなどです。政府が行っている経済構造改革というのは、産業生産性を向上させていませんし、新しい雇用の創出にも役立っていません。
 そこでVKTは三者委員会に入っている各労働組合と協力し、大変な苦労の末、2010年までのロシア連邦社会経済発展プログラムの中に失業保険に関する項目を盛り込みました。この他にVKTは強制的な国家失業保険の創設を強く要求しています。
 ロシア国内におきましては現在、外国人労働者が非常に多く雇用されています。外国人雇用の手続きに関してロシア政府は認可制から申告制に変えるための法律修正を進めています。つまり、これまでは許可を受けなければならなかったのが、今後は単に書類を提出すればいいだけになるわけです。労働組合としてはこうしたロシア政府の態度に非常に慎重な構えを取っています。といいますのは、このような法律の修正は、社会的な基準や労働の権利を著しく侵してしまう危険性があるからです。
 2点目は賃金に関する問題です。ロシアでは貧富の差が非常に大きくなっていますが、これはまさに近年ロシア政府が行っている社会経済政策の結果もたらされたものであると考えています。
 現在、約15%の国民に国民全体の収入の半分が集中しています。収入の中で割合が大きく増えてきているのは企業活動収入と不動産収入です。かわりに減っているのは賃金収入です。こういった状況は近年推し進められた変革によってもたらされたものです。賃金収入は公式に登録をされているものだけを見た場合、国民収入全体の38%程度になっていますが、これはあくまでも金額ベースであり、賃金収入を受けている人数で言うとほとんどの国民が今も賃金収入に頼っているのが現状です。
 公式な統計によりますと、2004年の国民の実質収入は28%増加したと言われています。13しかし商品、サービスの消費者物価の向上は20.2%でした。これは平均して消費者物価が20%余り伸びたということですが、中には30%以上価格が上昇したものもあります。
 一方で2004年には国民の、特に低所得者層の購買力は著しく低下しています。これはインフレが11.7%になったことが原因です。今現在、VKTとしてほかの労働組合と協力をしながら、最低賃金レベルが最低生活費のレベルにのっとって決められるよう努力しています。最低生活費は2,495ルーブル、90ドルであるにもかかわらず、最低賃金は600ルーブル、20ドルでした。
 3点目の活動は、政府や地方の議会等に私たちの代表を送ることです。
 この活動の成果として挙げられるのは、VKTの副会長であるイワノフ氏は2004年の国会の下院議員選挙で2期目の当選を果たしたことです。イワノフ氏はVKT評議会のレコメンデーションを受け、国会の中の労働社会政策委員会に入りました。
 またノリリスク市というところでは、ワレリア・メリニコワという女性が市長に選ばれました。この女性はノリリスク市にあるノリリスクニッケル社の企業別労働組合の会長をしています。この会社はそこに住む市民のほとんどが就職をしているという、逆に言うとそこにしか住民の就職口がないという会社ですが、その労働組合の幹部が市長になったということは経営者側にとって非常に驚きだったのではないかと思います。

ロシア労働総連盟(KTR)
イーゴル ワシリエヴィチ コヴァルチュク

副委員長兼KTR副会長

 

組織の概要

 私が代表の1人を務めておりますロシア労働総連盟(KTR)には5つの全ロシア労働組合連盟、4つの地域間労働組合連盟、5つの地方労働組合連盟が加盟しており、加盟者数は全部で120万人です。全ロシア労働組合連盟というのはロシア全土を活動範囲に置いている組織、地域間労働組合連盟というのは全ロシアではなく、その地域だけで活動をしている組織のことで、それぞれ区分けをしています。
 KTRはロシアの労働社会関係調整に関する三者委員会に参加しています。この三者委員会というのは日本における政府、経営者、労働組合の三者が参加している諮問会議と同様の機関だと考えてください。三者委員会の仕事は、2年間の三者の一般協定(ゼネラルアグリーメント)を締結すること、法律案の作成、ILO条約の批准や協議などです。さらに社会福祉に関する法律の検討もすべてこの委員会の中で行われています。
 KTRはここに代表者が出席しているロシアの2つのナショナルセンターと同様に国際自由労連のメンバーです。
 私自身は2003年にKTRの副会長に選ばれています。再選で、今回が2期目になっています。私の仕事はおもにKTR会長に対して助言、支援を与えることで、国際面、法律面、組織面の方向性を示すことが重要な役割となっています。私はこの仕事に社会奉仕という形で携わっています。

具体的な活動内容

 私の仕事内容について簡単にお話しします。
 まず国際面では、文書の翻訳、外国代表団とミーティングを行う際の設定と運営などを行っています。
 KTR副会長としましては、三者委員会から入ってくる文書を分析し、必要な文書を添えて会長に示すことが私の重要な仕事です。ロシア政府およびロシア下院との協議も行います。特に現行の労働法を改正することが私の任務となっております。
 比較的最近になってロシアでは労働基準法が採択されました。私たちの考えでは、この労働基準法はILOなどの国際基準に合致していません。そのため私たちはこのことをILOに提訴しました。現在、ILOの評議会が私たちに対して出してくれた助言にもとづき、労働基準法を修正するか否かが検討されています。
 私はこのほかにKTRとVKTの調整委員会のメンバーも兼ねています。KTRの中ではエイズ蔓延の危険性を知らせるためのプロジェクトを担当しています。ロシアでは現在、ILOとアメリカ労働省からの支援を受け、労働現場でエイズに関する啓蒙プロジェクトが展開されています。
 これに加えて私はロシア海員労働組合の副委員長職にも就いています。どちらかというとこちらの方が私の主な仕事と言えます。1991年に設立されたこの組合は主に船員によって構成されており、ロシアの中では数少ない専門労働組合です。組合員数は約5万人で、ロシアのほとんどの大きな港で組織されています。
 この組合の副委員長として私はロシアの雇用者と集団交渉を行っています。組合のメンバーは外国船でも働いておりますから、私たちは外国の経営者、雇用者とも集団交渉を行います。さらにロシア非常事態省とも交渉を行います。ロシア非常事態省というのは救助活動のための船舶を有しています。
 私たちはロシア海洋学研究所と労働協約を結んでいます。ロシア海洋学研究所というのは研究調査船を持っています。これ以外にもロシア海員労働組合は貨物船、客船の船員たちのために集団協約を結んでいます。基本的にはそれぞれの労働組合ごとに集団交渉を行うわけですが、その過程において私たちが相談に乗ってあげるわけです。
 こういった交渉に携わりながら、私は船員の労働条件に関するILO協定を結ぶための準備作業も行っています。現在ILOは船員の労働条件に関する協定をすべて統合しようとしています。私はロシア海員労働組合が持っている案をILOに提出しようと考えています。

労働事情を聴く会