2013年 ルーマニアの労働事情

2013年11月29日 講演録

ルーマニア自由労働組合同盟(CNSLR-FRATIA)
ラズバンゲー、 カーラエレーナコズマ

 

 ルーマニアは、政治的には東ヨーロッパに位置しているが、地理的に見ると少し南部にある。ルーマニアは国民の直接選挙で大統領を選ぶ半大統領制(首相は議会から選出)の共和国である。面積はEU加盟28ヵ国中9番目に大きく、人口は2135万人と7番目に多い。労働力人口は、975万9000人で、そのうち実際に働いている人が900万人、失業率は7.6%、若者の失業率は23%で、失業率が高い部門は建設業、商業、農業である。またEU加盟国に働きに行っている国外移住者数は約250~260万人である。国外移住率は1900年代の半ばは7%であったが、2000年代半ばには30%にまで増加している。人気のある就職地域はイタリア、スペイン、イギリス、ドイツで、医療関係者などの専門職の多くが国外で働いている。
 国家通貨はレイで、最低賃金が1ヵ月800レイ(179ユーロ)、日本円で2万3598円(1レイ=約29.4975円)になる。平均賃金は月額1635レイ(367ユーロ)で、4万8230円になる。またインフレ率は3.4%となっている。
 ルーマニアには全国的な労働組合連合が5団体ある。[1]ルーマニア自由労働組合同盟(CNSLR-FRATIA)[2]ブロクル全国労働組合(BNS)[3]全国労働組合総連合(Cartel ALFA)[4]ルーマニ民主労働組合総連合(CSDR)[5]全国労働組合連合メリディアン(CSN Meridian)である。労働組合の組織率は25~30%の間で、60%程度あった時代と比較するとかなり激しく落ち込んでいる。労働組合の組織率が最も高いのは公的部門で、組合費は毎月最低賃金の0.05倍である。
 ルーマニア自由労働組合同盟(CNSLR-FRATIA)は、ルーマニア最大のナショナルセンターで組合員数が80万人、政党、国、経営者からも独立しており、組合員の意思のみで設立された組織である。欧州労連(ETUC)と国際労働組合総連合(ITUC)に加盟している。CNLSR-FRATIAには医療、石油産業、教育、ガス、公務員、商業など、さまざまな分野の40の産業が加盟しており、42の郡に42の郡支部がある。
 2010年に政府がとった厳しい緊縮財政政策で、公共部門で25%の減給があった。また公共部門の減給のほかに、失業手当と児童手当が15%カットされ、この時10万人がレイオフされた。さらに付加価値税が19%から24%に増税され、全国レベルの団体交渉ができなくなった。これに対して反対運動を行なってきたが何も変わらなかったのが現実である。
 賃金に関しては、回復させる努力を行ない、2012年度時点で公共部門の基本給を25%増と、元に戻すことができた。しかし、残念ながら賞与については回復できていない。
 2012年は政情が不安定で、社会対話を行なうことが非常に難しかった。2011年の『法律第62号』によって、中道右派政府が社会的対話を一応設置した。しかし、『労働法』が改正されたことによって、労働協約を各企業の組合レベルで締結することが難しくなった。団体交渉についても、企業ごとのレベルでは大幅な制限を受けた形になっている。
 2012年に調印された労働協約は、2013年から2014年にかけて失効してしまうことになる。また改正された『労働法』では、7%の組合員がいれば団体交渉ができることになっているが、半数以上が賛成しないと無効になると定められている。改正『労働法』は、このように重要な変更が行なわれたのである。
 労働組合の課題の一つに、労働協約の問題がある。CNSLR-FRATIAは、労働協約が企業レベル、あるいはその中のグループやセクターによって交渉できるようにすることを求めている。
 労働組合の活動について、ルーマニアでは職業ごとに、職業規約に基づいて基準が定められている。新しい『社会対話法』によって、代表者についてはさまざまな基準が設けられた。しかし、この『社会対話法』は、公務員が労働組合を設立する権利について小規模な改定はあったが、連帯を求めてのストライキなどは制限されたままで、現実として大きな変化は起きていない。
 また社会的対話のための全国三者協議会が設けられたが、本当の意味での社会対話となっていないため、労働組合リーダーは参加するのを控えている。現政権は選挙中には、この社会対話について変化をもたらすと公約していたが、選挙に勝利してからは何も手が付けられていないのが現実である。
 今後の取り組みとしては、[1]社会的パートナーとの定期的集会の設定[2]法律の提案実施[3]社会的対話に関する説明会などの企画[4]地域レベルでの雇用促進[5]社会的対話に関する法律の改正[6]すべてのレベルでの交渉の自由化[7]労働組合設立の自由[8]会社側の権利乱用から労働組合リーダーを守る[9]公平で公正な労働組合代表の代表権を認める基準をつくる[10]全国レベルで適切な労働協約がすべての労働者に適用されるようにすること――などである。
 さらに、公務員のカットされた賞与の回復や最低賃金を月額770レイから900レイに上げることについては、現政権は2段階に分けて引き上げると約束しており、2014年には900レイに上がる予定である。また、大規模レイオフを中止し、個人雇用契約の期限を無くし、産業別レベル、全国レベルでの労働協約を締結する。さらに現在の『年金法』、定年年齢の維持、年金計算を維持していく事など、さまざまな課題がある。

労働事情を聴く会