2012年 チェコの労働事情

2012年1月27日 講演録

チェコ・モラヴィア労働組合連盟(CMKOS)
Ms. ダニエラ・ヴォラクコヴァ

 

1. 労働事情(全般)

 チェコの労働者数は410万人、2011年末の登録失業者は8.6%、同年のインフレ率は1.9%、平均月収は1,200米ドルで、人口1人当たりの国内総生産は25,600ドルである。
 チェコの労働市場を特徴付けているのは、経済危機によって引き起こされた雇用減と失業者数の増大である。マイナス成長がはじまった2008年10月以後、2010年末までに失業者数は30万人から50万人超に増えた。2011年は比較的安定できたが、それでもなお登録失業率は8.6%あり、2012年には失業者数は再び増大すると思われる。

2.労働組合が現在直面している課題

 労働組合が直面する喫緊の問題の第1として、労働法規の改正がある。この改正は、労働者の権利を保護しない不安定な労働形態を生じさせるものであり、多くの労働者は、期間の定めのないフルタイム労働契約が過去のものになってしまうことになる。第2の問題は、医療保険改革の問題である。これによって、2階建ての医療保険が生まれる。この2階建てとは、標準的な医療と「標準以上」の医療の格差を作る事になり、患者の支払能力に応じて保健医療の質と水準が著しく異なる状況が考えられる。そのため、CMKOSは改革提案に強く反対している。第3の問題は、年金改革である。チェコは、定年の延長の制限がない唯一の国である。この年金改革は、賦課方式の年金制度を弱めて、将来の年金受給者の状況を悪化させ、公的制度から民間の私的年金基金に移行させる事につながる。第4の問題として、社会的改革が挙げられる。例えば、求職支援業務を公共労働局から民間事業所に移転するという民営化、子どものいる世帯、低所得世帯、障害者に対する国家補助の一層の制限などである。第5の問題として、租税改革が挙げられる。この中には付加価値税を上げること、そして自営業者と比較して労働者が税制上不利な立場におかれると言うことが問題である。事業主に対しては相当の減税措置があるのに対して、労働者は増税になるということも問題である。

3.課題解決に向けての取り組み

 これらの改革は、そのほとんどが中・低所得層だけに影響を及ぼす内容であり、そのことを訴えるキャンペーンを展開して既に1年近くになる。既に公務員と運輸労働者による2回の大きなストライキ(国内すべての鉄道が24時間にわたって停止し、プラハの地下鉄がその歴史上初めて運転を停止するなど)が行なわれた。また、参加者最大5万人の2回の大きなデモ、そして数多くの会合、大会、イベントが行なわれた。これらの行動は、CMKOS単独で行なうのではなく、現在政府が立案中の改革に反対している多数の市民団体とも協力している。
 労働組合にはあまり多くの代案がない。労働時間、労働・生活の条件と環境、労使関係、安全衛生、労働組合の権利など、数十年前から続いている同じ問題に取り組まなくてはならない。我々は「目を開け」のスローガンの下、活発なキャンペーンを主導している。同時に三者構成機関においても交渉を主導しようと試みているが、政権支持者が議会勢力の大多数を占めている状況下では、話し合いは難しく、成功の望みは非常に限られている。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 労働組合と政府の間のコミュニケーションは、通常の政労使三者構成原則と関連機構を基盤として正式に組織されている。チェコにおける三者構成の最高機関は社会経済合意協議会である。三者交渉の実際の活動と効率性は、特に政府側の政治的意思にかかっている。CMKOSは、政府が社会的パートナーと協議する方法について、根本的に強い不安があり、無条件で賛同できない。CMKOSは数々の代替提案を出しているが、それは政府の政策声明に合っていないとの理由で受け入れられない。このような協議の形は正しい社会対話ではないと考える。われわれが考える社会対話とは、両者が共に得をする解決策に到達するために努力することである。

5.多国籍企業の進出状況

 過去10年間、チェコに対する外国資本の活発な投資活動が見られた。これは、例えば税制などにおいて、新規に投入される資本に対して、良い条件を提供するチェコ政府の取り組みによって刺激されたものである。外国の投資家は、チェコにおいて安くて高技能をもった労働力を得ることができた。多国籍資本は、自動車産業、ハイテク産業、食品産業、商業などに投資している。
 例えば、過剰な時間外労働や守られない休憩時間などで、労働法規を尊守せず、労働生産性を高めようとしている外国企業がある。一部の外国企業には肯定的な事例も見られるが、労働争議も起こっている。最新の事例では、2011年に起きたインド資本であるアルセロールで、600人の労働者に対抗して会社側の措置(解雇問題)に対してストライキが行なわれた。

労働事情を聴く会