2004年 チェコの労働事情

2004年10月12日 講演録

チェコ・モラビア労働組合連盟(CMKOS)
ヤロスラヴ・ザヴァジル

CMKOS副会長

 

 3点に絞って報告します。第1点は、チェコ・モラビア労働組合連盟(CMKOS)が設立された経緯と歴史について、第2点は社会的対話の形式について、第3点は日本企業との関係についてであります。

CMKOSの概要

 1989年に革命が起こり、民主化が行われました。早速1990年3月2日、3日に労働組合の大会が開催され、それまでの労働組合は解散することを決定しました。そのときまで存在していた労働組合のナショナルセンターは、革命的労働組合と言っていましたが、その大会で新しい民主的な労働組合として出発することになりました。チェコスロバキア労働組合連盟と名づけられました。
 1993年に、チェコとスロバキアが2つの国に分裂いたしまして、チェコ・モラビア労働組合連盟(CMKOS)が結成されました。2国に分裂しましたけれども、以来、年に1回か2回かはどちらかの国で、スロバキアとチェコの労働組合連盟は会合を開いております。両国の政府の労働組合への対応の仕方は似通っており、少なくなく共通の問題を抱えているからです。CMKOSは1995年にヨーロッパ労連(ETUC)に加盟し、1999年にはICFTU加盟が承認されました。現在、CMKOSは35の加盟組織、約70万人を代表しております。チェコにおける組織率は約25%です。我々の連盟は、チェコのナショナルセンターとしては最大のものです。

チェコにおける社会的対話

 1990年に我が国では、三者構成評議会という機関が誕生しました。これは法律によって設置されたのではなく、いわば紳士協定で慣行化された政労使三者の話し合いの場であります。その場では法的なものを含めてチェコの使用者と労働者の関係に関する諸問題のすべてを取り上げることになっております。政府が我々の提案を受け入れるかどうかも直接そこで話します。そこで決定されたことは、政府が持ち帰って協議することになりますが、社会民主党政権のもとでは労働組合は、かなりの程度、政府に対して影響力を持っているといえます。特に法律に関わる問題ではかなりの影響力を持つようになりました。
 社会的な対話の2番目としては、団体交渉が挙げられます。我が国では団体交渉は3つのレベルで行われていまして、1番目は、企業レベルにおける団体交渉です。もちろん労働組合がある企業に限られるわけですが、そこで労働協約が締結されます。その次の段階が産別レベルにおける団体交渉です。我々の労働組合は、産別レベルの労働協約も結びます。化学産業とか建築業とか、その他産業別レベルでの労働協約です。我が国の労働協約は、企業レベルでの労働協約と、産業別レベルでの労働協約と両方ありまして、労働者にとって有利なほうを適用することが法律で定められています。
 団体交渉では、主に賃金の問題、労働時間の短縮の問題などが取り上げられます。現在、労働時間は1週間に37.5時間となっております。それから解雇の問題、休暇の条件も交渉されます。大体、年間4週間の休暇が保障されていますが、25%程度の事業所では5週間の休暇が認められています。それから、職場の安全衛生と社会保険の問題などが交渉事項になっています。
 この2つの労働協約のほかに、もう1つ上のレベルの労働協約があります。地域レベルでの協約です。チェコには14の郡があり、それぞれの郡に我々の労連の地方組織があります。最近ではこの14の郡のうち、7つの郡において三者委員会を結成することができました。それぞれが独立した地域ですので、徐々に独立的な行動をするようになっていますが、その郡での三者委員会において労連の影響力を強めていきたいと思っております。

チェコの賃金水準

 チェコの賃金の問題に関しては、EUレベルで考える必要があります。チェコの平均賃金と西ヨーロッパの賃金の格差は非常に大きいものがあります。EUはチェコを含めて新規加盟国に対していろいろな助言を行っております。EUが新規加盟国に課するのは、インフレの抑制とか、成長率の確保です。チェコの2004年度のGDPは4.5%の成長が目標になっています。インフレは3%~3.5%が目標とされています。平均賃金は7.0~7.5%の引き上げが私たちに提言されておりますが、労働組合としては実際の賃上げは6.5%程度になるのではないかという情報を得ております。西ヨーロッパよりチェコのほうが、賃金の上昇率は高いということになります。最低賃金は労働省によって規定されておりますが、その改定が現在、議論されているところです。

日本からの投資の動向

 日本資本のチェコへの投資に関してですが、1998年までは日本の企業はチェコにはあまり来ておりませんでした。画期的だったのはプルゼン(Plzen)という町につくられたパナソニックの工場です。現在までにチェコ全体で200の日本企業が進出してきております。チェコは中・東欧諸国で日本の企業が最も投資をしている国となっています。日本の企業は非常に長期的な展望を持って進出しておりまして、チェコとしてもその展望のもとに非常に安定したものとして受け入れることができております。
 チェコ政府の経済政策にとって鍵となるべき生産部門に関しても、日本企業は大変貢献しています。コリン(Kolin)という町につくられますトヨタの工場も非常に重要なものです。日本の高い水準の工業は、その文化の程度の高さと、努力する姿勢の重要さというものがあり、それから職場の安全衛生面においても非常に高い水準があります。社会的プログラムも非常に高い水準であります。日本の企業は非常にいい見本を示しておりまして、我が国で労働組合をつくることに対しても何ら抵抗はありません。すべての外国企業がこうであるとは言えません。日本企業の進出は、日本の労働組合や経営者団体などの基準に沿ったものだと思います。

チェコ・モラビア労働組合(CMKOS)
ダヌシェ・マハートヴァー

生産・文化特別組織労働者組合委員長

 

 私は同僚の後を継ぎまして、雇用における差別の禁止を中心に、もちろんそれに関しては雇用の問題、失業の問題を含みますけれども、お話ししたいと思います。

EU加盟と労働法の改正

 チェコがEUに加盟するための準備段階で最も基本的な課題の一つに、EUの法制に合致したチェコの法制の確立がありました。労働分野においては、労働法、賃金・報酬に関する法、雇用に関する法改正でありました。2001年1月1日に、すべての被雇用者の平等待遇というEU指令を実践するための改正労働法が発効しました。雇用における差別の禁止を意味する法律です。2004年3月1日には、さらに改正が加えられ、これらの諸原則の適用をさらに深めることになりました。この改正労働法によって使用者は、労働者すべてに対して雇用及び職種の割り当て、雇用後の教育訓練について平等に扱う義務を負うと同時に、同一労働に対して同一賃金を支払う義務を負うことになりました。

チェコの雇用問題

 こうして、法制上は、チェコはEUの法制に十分対応できるようになりましたが、現実は残念ながら満足できるものではありません。労働市場における差別は、女性や24歳以下の若年層、障害者、それから低資格者に向けられています。女性の多くは低い管理業務や事務業務についています。それらの業務の77%が女性によって占められています。サービス業と商店などでは、就労者の66%を女性が占めています。技術部門、医療部門、教育部門、聖職部門、科学部門の各部門では、就労者の約半分を女性が占めています。議員とか、それから指導及び管理部門では女性は4分の1を占めるに留まっています。トップマネジャーの女性の割合はわずか8%です。
 1998年以来、チェコの登録失業者数は増加し続けています。当然ながらこの現象は、労働市場での弱者、私が最初に申しました種類の具体的に列挙した人々にはマイナスに作用します。例えば24歳以下の若年層の場合には、2003年の失業率は23.9%でした。女性の長期失業、つまり1年以上の長期失業者も増加し続けているという現実があります。2001年末には長期失業者の中の女性の割合が52.6%でしたが、2002年には既に55.1%にまで増えています。さらに、非常に深刻かつ象徴的な現実として、年齢による差別もあります。10年前には、55歳から58歳ぐらいの人々の就職が非常に難しかったんですが、今では45歳の人々が職探しに苦労している状況です。しかも、それも教育があるとかないとか、それから男性とか女性とかにかかわらず困難なのです。さらにつけ加えるならば、10年前には男性は60歳、女性は57歳が退職年齢でしたが、今度の改定でそれが63歳になりました。チェコでは同等の教育を受けているにもかかわらず、女性は男性よりも低い報酬で働いています。2002年の統計では、女性の平均賃金は男性の平均賃金の74%でした。

労働事情を聴く会