2012年 ベトナムの労働事情

2012年9月7日 講演録

ベトナム労働総同盟(VGCL)
Ms. ド ティ ラン
Ms. Do Thi Lan

クアンニン省労働連盟 会長

 

1. 労働情勢(全般)

 ベトナム労働総同盟(VGCL)は1929年1月28日に設立して、これまでに10回の大会を経て、2013年に第11回の大会が開かれることになっている。ベトナムの労働組合には『労働組合法』の中に明記されている3つの機能がある。第1に労働者の適正な権利を合法的に擁護することである。第2に労働組合は国家の管理および経済社会の管理にも参画するということである。これは、労働組合は政府の統括するさまざまな組織にも代表者を送り出すという意味である。第3に労働者が自分の祖国の建設と国家防衛に関われるように、さまざまな教育や啓蒙活動を図るということである。
 今日のベトナムの総人口は約8800万人であり、その中で就業者数は約4500万人である。人口に占める割合は51.1%で、その中で15歳以上の労働人口は約3650万人である。また雇用労働者は約1200万人で、失業率は2012年6月のデータで2.27%となっている。そうした中でも雇用保険によって、17万5000人の失業者が救われている。ストライキの状況は、2012年6月のデータで、年間228件となっている。前年同期が588件であったので、前年度比で38.7%に減少している。

2. 労働組合が現在直面している課題

 労働組合が抱える問題について、第1に組織拡大の問題がある。昨今の新規設立企業はほとんどが中小企業であり、雇用者側が労働組合の設立に非協力的であることから、なかなか設立されないという状況がある。現在では1200万の雇用労働者の中で12万の単組があり、組合員数は約750万人となっている。2008年から2013年までの第10期のVGCL大会で掲げられた新規組合員の獲得のノルマは150万人であったが、その倍の300万人を既に加入させている。しかし、組合員を大量に確保できたとはいえ、新たに生まれる労働者数に追いついていないことも事実である。
 第2に国営以外のセクターに従事する労働者の生活が、極めて低い状態に置かれていることである。こうした中でも労働者は労働のスキルが非常に低いという問題があり、労働者の50%程度しか能力開発訓練を受けていないのが現実である。スキルの低い労働者の賃金はスキルの低さに応じて低くなるということである。
 第3に工業地域における社会インフラの不整備がある。具体的には労働者の住居とか、保育所とか、学校等、労働者の物心両面を支える様々なインフラが非常に貧困であるということである。加えて、利益優先を重視する一部の雇用者が労働時間数を増やしているにもかかわらず、それに応じた対価を支払っていない。
 これらの状況に対して労働組合もさまざまな手段を講じている。1つには、新規の企業に労働組合を設立し、確実に組合員数を増やすことである。それを企業内の組合に任せるのではなく、VGCLが指導し、労働組合と一緒になって組織率の拡大に努めている。この組織拡大の必要な予算はVGCLが支給している。加えて、雇用者側にも組合の設立、組織拡大について、組合側と一緒になって行なうように求めている。

3. 課題解決への取り組み

 現在、ベトナムの労働組合が優先的に取り組んでいる事として、労働組合や労働者に関連した制度・政策の整備、あるいはフォロー、それらを通して組合の地位の確立を図る事である。その代表的な事例として、6月にベトナム労働組合が改正労働法や労働組合法の国会における承認に強い働きかけをしたことである。『改正労働法』の中では、それまでの現行『労働法』より一歩踏み込んで労働組合の果たす役割、労働者の権利擁護についてはっきりと打ち出した内容になっている。例えば労働契約について、既に2回有期の労働契約を結んだ労働者については、3度目の契約は無期にするということが挙げられる。また、労使協議については定期的に会合を設けることである。具体的には1年に1回の規定以外にも、必要に応じて例外的な会合も認められるということを明記した。
 また、労働者に対しての利益も『改正労働法』にはうたわれている。例えば現行『労働法』では試用期間中の賃金はフルタイムの75%であったが、それが『改正労働法』では10%上積みされて85%になった。時間外労働は、雇用側は年間300時間までという主張をしたが、ベトナムの労働組合としては、これを200時間に抑えさせた。女性労働者の権利についても、育児休業期間について4ヵ月であったものを6ヵ月に拡大することができた。また、ベトナムの伝統的な最大の行事である旧正月の休暇が、それまでの4日から5日に拡充された。

4. ナショナルセンターと政府との関係について

 VGCLと政府は、定期的に双方の代表者による会合を持つことになっている。具体的には半年、1年と、その節目ごとに会合を持って労働にかかわる諸問題について、これまで行なってきたことの確認をしている。半年ごとの決まり事として、政府の所管する主要な会合にVGCLの会長が招かれるが、それと同様のことが、地方のVGCLにおいても行なわれる。

5. 多国籍企業の進出状況や労使紛争等について

 多国籍企業について、現在ベトナムには直接投資している5つの多国籍企業がある。あと間接的に迂回して投資している企業も多数あるが、それらの多国籍企業の特徴は、ほとんどが委託加工であり、例えば、ナイキやアディダスの製品を作っていても事業者は違っている。労働者に支払われる賃金は非常に低く、利益分配の分配率が非常に低い。ストライキはほとんどが外資系企業で発生しており、主な原因は、急激なインフレによる労働者の生活困窮を背景にして、給料や手当ての引き上げを要求したものである。また、雇用主が労働法や労働協約に違反したことも原因の一つである。