2012年 タイの労働事情

2012年9月7日 講演録

ITUCタイ協議会(ITUC-TC)
Mr. アヌチット ゲオン
Mr. Anuchit Kaewton

タイ労働会議(LCT)事務局長

 

1. 労働情勢(全般)

 2012年度の労働調査によると、タイの人口は6688万人で、そのうち約60%の3953万人が労働人口である。そして、農業人口が1635万人、農業以外に従事する人が2318万人となっている。このうち小学校卒業、またそれ以下の学歴の人が2057万人で、失業者の数は約27万人となっている。タイにおける事業所の数は34万8954ヵ所あり、そこで雇用されている被雇用者の数は753万8737人。また公共企業体の数が67、その職員数が25万8241人である。経営者組織は360、経営者連合は13団体ある。労働者の組織は1406団体あるが、ナショナルセンターは13団体である。これは6月に行なわれた調査結果によるものである。
 タイが現在抱えている問題点として、[1]労働力の不足[2]外国人労働者の問題[3]労働の質が低いという問題[4]人身売買取引の問題[5]最低賃金の問題などがある。政府は2012年4月1日から7県で最低賃金を試行しており、2013年1月1日からは全国一律300バーツ(1日)にする予定である。土地がない小作農の問題や、ホームレス、犯罪、麻薬、タイ文化の衰退などの問題もある。その他にもユーロ圏の危機。タイ社会が徐々に高齢化社会に移行しつつあること。2015年のASEAN経済共同体の設立。自然災害や地球温暖化問題など、さまざまな問題を抱えているのが今日のタイ社会である。

2. 労働組合が現在直面している課題

 タイの労働組合が直面している問題とは、労働者が経営者や資本家と交渉する権限が無いことであり、ナショナルセンターが全力を挙げて努力している。経営者や資本家と交渉することは、労働者が自分と自分の家族の生活の質を改善するために必要なことである。しかし、この団体交渉権を保障する法律が無く、もともと団結権が無いということで、団結して権利を主張することができない。タイの経営者は、ほとんど団結権や団体交渉権を認めていない状態である。また、政府は法律の改正を行なおうとしていない。タイの『労働者保護法』は、1975年に制定されたが、労働者保護に関する権限が守られていない状態であり、その後も法律の改正は行なわれていない。また、グッドガバナンスも行なわれず、農業部門の労働者の権利についても守られていない。

3. 課題解決への取り組み

 これらの問題を解決するためには、まずタイ政府がILO条約の87号条約(結社の自由及び団結権の保護に関する条約)と98号条約(団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約)の批准と1975年の『労使関係法』を改正する必要がある。それから、国の教育科目については、タイの国家開発計画に合わせた教育科目にするとともに、タイの義務教育課程に労使関係と労働者保護の学習科目を加えるべきである。また、政府は、投資のプロセスを透明なものにして、談合や汚職を無くすことである。同時に適切な方法で投資を呼び込むことが必要である。
 また民間の労働者と公共企業体の労働者が同一の『労使関係法』の下で団結する必要があり、1991年以前のように公共部門と民間部門に適用される『労働法』を一つにすることである。タイの労働運動の永続性を打ち立てるためには、日本の連合のように、分裂を解消して統一することである。
 投資家や経営者はグッドガバナンスを行なうべきである。グッドガバナンスとは、独占をしないということ、そして必要以上に利益を上げないことである。それから労働者を守り、利益は社会に様々な形で還元すること。また、環境を守ることであり、それは職場の環境はもとより、職場をとりまく環境を守ることである。

4. ナショナルセンターと政府との関係について

 ナショナルセンターと政府との関係について、一つは学習面での協力関係を築くことである。例えば労働者に法律を学ぶことを奨励する、また仕事の安全について、また社会保障についても学ぶ機会を与えることである。いまLCTもTTUCも三者構成のいくつもの委員会に参加し議論をしている。タイには三者構成委員会が全部で16ある。例えば労使委員会、社会保障委員会、賃金委員会について、三部門からの代表者が集まって議論しており、政府関係機関、経営者側の代表、労働者側の代表から構成される。この三者でさまざまな県の政府と協力して、さまざまなキャンペーンで協力関係を築いていきたいと考えている。

5. 多国籍企業の進出状況や労使紛争等について

 現在、タイには多くの国の多国籍企業が進出しているが、日系企業の労使関係はおおむね良好である。近年では日系企業も大きな投資が増えてきており、同時に最先端の技術を導入し、技能的な改善や訓練も行なわれている。いま日本の企業は、タイを単に商品をつくって売るだけの国とは見ていない、そのためタイの労働者は日本の企業に対して好意的である。