2017年フィリピンの労働事情

2017年6月9日 講演録

 7千を超える島々からなり、人口は1億人余りである。農林水産業従事者が全就業者人口の約3割を占めるが、近年はコールセンター事業等のビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業を含むサービス産業従事者が増大(全就業者の5~6割)している。また、インフォーマルセクター労働者の割合は全雇用者の約4割とみられ、社会問題として浮上している。経済成長率はおおよそ5~6%台、失業率は6%強となっている。労組組織率は約10%である。

フィリピン労働組合会議(TUCP)
コニー ラモス タグル

アットマーク労働組合 副委員長

 

1. 厳しく苦労した組合結成後の取り組み

 2015年7月に組合登録をしたが、当初、組合活動そのものができるかどうかという問題に直面した。会社閉鎖や解雇の脅威にさらされたり、組合の幹部や組合員へのハラスメントが行われ、委員長は一時停職にまで追い込まれる事態も発生した。また、会社側は一流弁護士(例えば元労働雇用省の役人)を雇い、組合との対峙を深めた。このように厳しく苦労した会社との闘争は1年間にわたったが、ようやく2016年6月に労働協約締結の運びとなった。

2. 粘り強い交渉で労使協調できる関係にまで進展

 労働協約締結後は、会社側の対応も一変し、働く人の保護と尊重の対応姿勢へと改善が図られた。企業理念としてある、「最高の人材を採用し、最新の資本集約的で高技術な機械類のトレーニングを通じて、持続的な拡大と発展のために人材育成を図る」ということが現実のものとなってきている。労働基準の順守はもとより、有給休暇の追加付与、会社主催のピクニック、各種福利厚生策の展開、誕生日の現金ボーナスの給付など、労使関係は良好な関係を続けている。粘り強い交渉努力の賜であり、今後も組合は初心を忘れず活動を展開していく。

 

フィリピン労働組合会議(TUCP)
エメリタ バリディオ ロンサム

ラグナ・オートパーツ労働組合 委員長

 

1. 組合結成を巡り最高裁までもつれ込む

 ラグナ・オートパーツ労働組合は、オブレロ・ピリピーノ傘下の支部組合である。1998年までラグナ自動車部品製造会社には労働組合はなかった。この年から組合設立に向けた取り組みが始まったが、実に結成までに10年の歳月を要することとなった。会社は2008年の最高裁判断で認可投票の許可が示されるまで組合結成に異議を唱え続け、これが組合結成側には大きな問題・桎梏となってきた。オブレロ・ピリピーノはこうした重圧に屈することなく、キャンペーンを展開、意識向上活動や労働者教育を行い、ついには組合結成にこぎつけるところとなった。

2. 定着している良好な労使関係

 組合結成、組織化には大変な苦労を要したが、今日では会社の理解を得ることもでき、良好な労使関係のもとで組合活動が展開できている。会社業績も超高品質製品と優れた従業員作業により25年間拡張を続ける成功に恵まれており、こうした環境の下で交渉でも幾つかの労働協約締結や組合員全員への年末一時金(2016年12月)の獲得を実現している。組合はこうした好環境を追い風に、組合員の結束強化や意識向上のための教育プログラムを展開するほか、組合員のための福利厚生プログラム-アマチュアマラソン、ピクニック、ローン提供、経済的支援など-の取り組みを進めていく。