2010年 フィリピンの労働事情

2010年6月4日 講演録

フィリピン労働組合会議(TUCP)
アントニオ エノルバ フィデルソン(Mr. Antonio Enolva Fidelson)

フィリピン郵便労働組合(KKKP)委員長

 

1.労働事情(一般)

 フィリピンの労働運動は主に2つの党派によって構成されている。国内最大労組であるフィリピン労働組合会議(TUCP)と左派・急進派の「5月1日運動」(KMU)とアナクパウィス(Anakpawis)である。
 KMUは、長年にわたり、政府並びに歴代すべての大統領に批判的立場を取り、共産主義運動を支持する労働戦線とのレッテルを貼られている。一方、TUCPは、団体交渉、賃上げ、国際労働機関において、政府および官民両部門の使用者と大多数の労働者に認められた代表組織として活動している。
 しかしながら、組織労働者は総就業者のわずか5.5%にあたる197万5000人にすぎず、このうち労働協約(公共部門はCNA、民間はCBA)によってカバーされているのは12.5%にとどまる。
 また、対立的な政治・労働状況により、政府のプログラムの実行、経済回復に向けた取り組みも遅れている。

2.労働組合が直面する課題

  1. 一次産品価格の上昇のため、労働側は最低賃金の引上げを強く要求している。
  2. 輸出加工区(EPZ)における契約化に終止符を打つ。
  3. 労働環境の改善による労働者の安全確保。
  4. 電力会社および公益事業の民営化の阻止。
  5. 失業者の増加。

3.課題解決に向けた取り組み

  1. 最低賃金の引き上げは、TUCPと全国三者賃金委員会(NTWB)が全国で開催する公聴会を通じて労使が合意しており、まもなく実施されることになっている。
  2. EPZの問題については、工業地区や経済地区において労働者が正規労働者としての職を維持する方法や、将来の就職のために能力開発セミナーや職業訓練コースに参加して訓練を受ける方法について、労使間で一連の協議が進められている。TUCPは技術教育技能開発庁(TESDA)と連携してワーカーズ・カレッジを組織し、さまざまな技能やコールセンターの訓練を無料で提供している。
  3. 労働現場における危険なアスベストの除去に関する調査と報告書作成を労働雇用省と連携して行っている。また、アスベストを禁止してその有害性を取り除くための法案が提出されている。
  4. TUCPの組織内下院議員のメンドーサ氏は、消費者にとって重い負担の原因となっている公益事業の民営化を阻止させる法案を提出した。
  5. 「労働者の組織開発プログラム」のための資金が拡充され、対象講座に活用された。TUCPは工業専門学校や大学とも連携し、組合員の失業者やその家族、教育の欠如が原因で解雇された者を対象に訓練や教育を提供してきた。

ナショナルセンターと政府との関係

 TUCPは30年以上にわたって穏健派のナショナルセンターとして活動してきた。TUCPは有力な労働運動の勢力であり、政府からは主要な労働・政治団体とみなされている。

多国籍企業の進出と労使紛争の状況

 エレクトロニクスおよび衣料産業の多国籍企業は、市場の需給に起因する影響を最も受ける業界である。その場合、こうした企業は労働者を解雇するか、あるいは操業の大半を停止して労働者の労働時間を削減する。
 TUCPはナショナルセンターの弁護団を通じて裁判所に訴訟を起こすか、こうした問題を団体交渉の場に持ち込むことができる。TUCPは労働者のストライキはあらゆる行動における最後の手段であると主張している。