2017年 ミャンマーの労働事情

2017年7月7日 講演録

ミャンマー労働組合総連盟(CTUM)
アン ナイ トウン

アルパイン精製飲料水工場労働組合・書記長

 

1.当該国の労働情勢(全般)

2015年 2016年 2017年(見通し)
実質GDP(%)
(出典元)
7.29%
( IMF )
6.3%
( IMF )
 7.51%
( IMF )
物価上昇率(%)
(出典元)
10.01%
( IMF )
7.0%
( IMF )
6.9%
( IMF )
最低賃金
(時間額・日額・月額)
□時間( )
□日額(3,600チャット)
□月額( )
□時間(  )
□日額(3,600チャット)
□月額( )
□時間(  )
□日額(3,600チャット)
□月額( )
労使紛争件数
  ヤンゴン地域内、
5郡区 紛争件数 670
ヤンゴン地域内、
5郡区 紛争件数 283
失業率
0.8% 0.81%  
法定労働時間
8時間/1日
 44/48時間
時間外/割増率
2倍
休日/割増率
2倍
通貨名 チャット   1,358チャット=約1ドル(2017年6月10日現在)

2.当該国の労働法制・社会保障の特徴について記載してください。

 ミャンマーの労働法に違反すると、実刑を受けることはなく罰金のみの処分になるため、雇用主は法律違反を恐れることがありません。最大の問題は、労働者のための裁判所がミャンマーに存在しないことです。労働法を十分に理解し解決できる法律専門家、弁護士が少ないことも原因の一つです。<職場と労働者法調査委員会>の職員数も不足しているため、職場での調査が行き届いていません。労働組合からの通報がある場合のみ、調査を行っている状態です。
 社会保険制度により支払われる金銭を政府から受け取るまでにはかなりの時間を要します。病気休暇、出産休暇、一時的な障害の病気休暇、生涯障害休暇、治療費用などを政府から支払われるまで3ヶ月から1年がかかります。
 法律で定められていない休暇の一つである「前詰め休暇」、「後ろ詰め休暇」について述べたいと思います。「前詰め休暇」、「後ろ詰め休暇」とは、祝日または土、日のような休日の前後の日いずれかに休暇をとると前後の祝日、土日も休暇扱い(無給)になるというものです。このシステムを職場のほとんどが採用しており、政府は協議を行っていません。
 また、最低賃金額3600チャットは最低賃金法で定められた金額です。その金額は家族の費用としてとても足りるとは言えない額であるのはもちろんですが、一人分の費用としても十分な額ではありません。法律に規定された3600チャットという最低賃金額が原因で、子どもたちは学校にも行けず働きに出て家族の生計のために手助けをしなければなりません。このため、ミャンマーでは児童労働者が増加しているのです。

3.当該国の非正規労働(派遣)など不安定雇用の問題やインフォーマルセクター労働者の現状について記載してください。

ミャンマーで現在開催されている、雇用主-労働者-政府の三者参加協議会は、満足できる協議会の一つです。このような協議会を開催することで、良質な職場環境を作りだすことができるだけでなく、労働者法の改正に向けてより積極的に行動することができるのです。しかし、ミャンマーの工場、事業所、会社などに勤務している警備員たちの生活は深刻な状況です。正規雇用の警備員たちは労働者の権利を十分に得ることができますが、警備会社が非正規で雇用している警備員たちは法律に準じた権利を得ることができません。彼らも、同じ労働者であり、労働者の権利を得ることができるようにするべきです。また、1日8時間を超えて勤務しなければならないこと、超えた時間に対し割増賃金を得ることがないこと、休日出勤しなければならないこと、休日出勤のための法律的な保障がないこと、振替休日として休暇を取れないこと、が最大の問題となっています。休日に出勤する一方で、本来の休暇、職歴に比例して得られる休暇、病気休暇を取得することができません。それらの休暇はミャンマー労働法で定められているものです。正規雇用でない警備員たちが現在直面している上記の問題について、政府-雇用主-労働者の三者がそろって議論をし、解決できるよう、私たちが尽力していきます。

4.ナショナルセンターが現在直面している課題と取り組み

ミャンマー人が所有する食品工場のほとんどに対し、外国籍の会社が買収し、投資を行っています。そのような投資により、ミャンマー人労働者の間では、失業、職不安定で保障のない職業が生じるようになりました。それらは外国人が投資する際に、以前使用していた機械を使用せずに外国製の高性能な機械に切り替えたり、外国人を雇用したりすることが原因です。従来の性能の低い機械を運用するには多くの人員が必要でしたが、高性能の機械に替えることで、以前のように多くの人員は必要なくなり、少人数の人員で運用することが可能になりました。それによる人員削減が原因で失業が生じ、また外国人労働者も採用されるため、安定した職業ではなくなりました。

5.参加者の産別・単組・地方組織における特徴的な課題や取り組み、多国籍企業の動向等、当該国における労働事情等について

 2011年に国が労働組合法を公布しました。この法律により、2012年からミャンマーで労働組合団体が設立されはじめ、基礎、郡区、地域、連合、全国的総連盟まで段階的に設立されました。ミャンマーでの食品業の労働組合員は、「ミャンマーの輸出と製造業労働者労働組合連合(IWFM)」の組合員です。私も組合員であるため、「輸出と製造業労働者労働組合連合(IWFM)」の中央委員としての業務も担っています。そして基礎、郡区、地域段階までの組合を設立することができたのです。他の工場などにも広げることができました。郡区段階の労働組合オフィスを開設し、使用者-労働者間の紛争解決、使用者の法律違反行為や安全確保に関する事柄、労働者に対する教育や訓練、会議、協議会の開催などを業務として遂行することができました。

紛争

ミャンマーで最も多い紛争は以下のようなものです。

  1. 理由のない解雇。
  2. 労働組合のリーダーたちへの圧力、差別行為。
  3. 許可なく不当に残業させる。
  4. 法律に準じた有給を許可しない。
  5. 雇用契約違反。
  6. 罵声を浴びせる。
  7. 肉体的暴力を振るう。
  8. 昇給の時期になっても給与の増額をしない。
  9. 賞与未払い。

私自身、基礎段階、郡区段階、地域段階の労働組合のリーダーとして業務を遂行した時から,上記に類する紛争を懸命に解決しようとしていたところ、80%程度で解決に導くことができました。

紛争の段階的解決

  1. 工場内での協議による解決
  2. 郡区段階での協議による解決
  3. 地域段階 雇用主-労働者間紛争審判所
  4. 国段階 雇用主-労働者間紛争審判 評議会
  5. 異議申立

成功事例

紛争解決成功事例は以下の通りです。

  • 8時間以上の労働をやめさせる。
  • 超過した労働時間を法律に準じて計算させる。
  • 残業をさせる際、法律に準じて許可を取る。許可なしで残業させたことに対しての訴訟に勝利。
  • 祝日勤務をさせる場合に、報酬である賃金を払わせる。
  • 罵倒する、肉体的暴力を振るう等の行為をされた場合は警察に被害届を出し、法的措置をとる。
  • 理由なく解雇されたことに対して再雇用させる。
  • デモを行った労働者との紛争を和解させる。

ミャンマー労働組合総連合(CTUM)
サンダ
アン

 

1.ミャンマーの労働情勢

 総人口は5100万人、15歳以上の労働力人口は2100万人であり、組合組織率は0.01%である。農業分野51.7%、工業分野16.8%、サービス産業31.4%の構成である。実質GDPの伸びは2015年7.29%、16年6.3%、17年7.51%である。物価上昇率は2015年10.01%、16年7%、17年6.9%である。最低賃金は2015年3万チャット、16年4万チャット、17年4万チャット(1米ドル=1350チャット)である。失業率は2015年0.8%、16年0.81%である。

2.労働組合が直面する課題

 外資によるミャンマー資本の買収により、高性能の機械が入り、労働者が減員される事態が発生している。又労働組合法が2012年から適用されるようになり、基礎、郡区、地域、連合、総連合と段階的に組合組織が作られるようになった。しかし労働法に詳しい法律専門家や弁護士が少ない。このことは、使用者をして、違反をしても罰金を払えば良いという態度をよんでいる。

3.解決のための取り組み

 ともかく労働組合の組織率を上げることが一番である。