2017年 ミャンマーの労働事情

2017年9月8日 講演録

マレーシア労働組合会議(MTUC)
ジャミラー ビンチ ユソップ氏(Ms.Jamilah Binti Yusop)

ペナン州水道局労働組合 書記

モハド ノア ビン サイム氏(Mr. Mohd Nor Bin Saim)
マレーシア技術サービス労働組合 ネゲリセンビラン支部 財務担当

 

【概要】

 日本の面積の約90%(約33万平方キロ)の国土に3千万人余りが暮らしている。その人口の60%強がマレー系で占められ、他に華人系が30%弱、インド系が10%弱の国家でああり、政治体制は立憲君主制(議会制民主主義)である。経済は、日本を手本とする発展で一人当たりGDPが1万ドルを超え、高所得国への仲間入りに今一歩となっている。この数年の実質GDP成長率は4~5%台と堅調な推移(報告者データでは2017年第1四半期見通しは5.6%)であり、物価上昇率も2%台と安定的である。しかし、少なからぬ外国人労働者で支えられる現状は多くの問題をはらんでいる。労組組織率は6%程度である。

1.労組の抱えるジレンマ―届かぬその影響力

 マレーシアに働く労働者は、1430万人(報告者データ2015年12月現在)だが、670万人が外国人労働者と推定される。実に労働者の40%強を占めている。しかし、正式に記録・許可されている外国人労働者は約210万人であり、400万人以上が不法滞在している労働者ということになる。また、フォーマルセクターで働く労働者は約650万人であり、残る800万人強がインフォーマル経済に属していることになる。マレーシア経済の現実はこうした労働者を含む構図の定着化の中で進展している。フォーマルセクターに依拠する組合は、真に保護すべきインフォーマルセクターで働く人たちにその影響力を届けることができず、ジレンマを抱える状況が続いている。
 その組合だが、組織構造は3種類に分かれる。1つは、公共セクターの組合(CUEPACS)である。ここに働く労働者約160万人のうち約46万人を組織化している。2つには、マレーシア労働組合会議(MTUC)である。民間セクター労働者約900万人のうち約37万人を組織化している。3つには、社内・企業組合であるが、626組合を数えている。この他に使用者の全国組合が103組合あり、以上全てを合わせると組合総体として91万人余りを組織化していることになる。しかし、未組織者とりわけインフォーマル労働者ははるかに上回る数が存在しており、ナショナルセンターにとっての重い課題となっている。

2.企業内組合に好意的でない使用者-後押しする形の労働法改正

 マレーシアの労働組合法(1959年)では、労使関係の相互主義や登録された組合に参加する自由・参加しない自由を推進するという前向きな規定があるものの、それ以外の規定は後ろ向きの規定ばかりである。政府は従来の労働組合主義を国の開発の障害とみなしているため、労働者団体に対し、組合と経営陣との関係の規制に加え、組合内部にまで介入する包括管理を行っている。ある意味で、企業内の組合指導者は使用者にコントロールされているといっても過言ではない。その結果、外国人雇用者が数多く雇用され、自社の労働者が組合を結成したり、組合に加入することを回避させようとするなど、組合に対するネガティブな行動により、また、若年労働者の組合加入に対する消極的な意識とも相俟って、組合員数の減少がおきている。労働法も労働者に不利な改正を後押しする形となっており、労働者の権利をむしばみ続けている。

3.労働者保護に向けた取り組みの行方-カギ握るMTUCと他組合との連携・協力

 厳しい労働環境ではあるが、労働者保護に向けた取り組みの行方は、MTUCと他組合の連携・協力がカギを握っている。大きな視点では、雇用機会と労働者の権利確保の実現に向け、まず持続可能な産業・経済環境を創出し、それによって雇用の促進に結びつけることが重要である。同時に労使間の協調的な話し合いが保障され、職場における基本的な原則が遵守される環境づくりに向かわなければならない。そうした取り組みを経て、持続可能で国内環境に適合した社会的保護・社会保障・労働者保護のしくみが構築されることが、組合に課せられた役割である。MTUCの真価が問われているときである。