2015年 ミャンマーの労働事情

2015年6月26日 講演録

ミャンマー労働組合総連盟(CTUM)
鉄道労働組合連盟(MRWUF)会長
ミンゲー鉄道労働組合 委員長
ミョウ・チッ

 

1.ミャンマーの労働情勢(全般)

 現在、ミャンマーにおける労働組合は賃金引き上げと労働条件の向上をめざして活動を進めている。労働組合との話し合いに前向きな使用者もいる。
 労使紛争になった場合、まず労使間で交渉し、解決できない場合には郡、県、中央の順に、各レベルの仲裁評議会に持ち込まれる。労働組合結成が認められて以来、これまで2758件の紛争が起きている。その中で一番多いのは、賃上げをめぐる紛争である。この内、仲裁評議会が仲裁した件数は2013年が45件、2014年は41件となっている。

  2013年 2014年 2015年(見通し)
実質GDP(%) 6.8% 6.9% 6.9%  
物価上昇率(%) 5.5% 7.06% 7.39%  
最低賃金 - - 3,600チャット/日
(6月末決定)  
労使紛争件数        
法定労働時間 8時間/日 44時間/週 時間外/割増率
2時間/日
150%
休日/割増率
1日/週
日給200%  

2.労働組合の直面する課題

 ミャンマーには労働者の権利を守る法律が存在するにもかかわらず、それが有効に適用されていないという点である。法の支配が行き渡っておらず、使用者の肩を持つ傾向が顕著である。最低賃金額の決定においても、使用者の意見が尊重される。
 非正規労働者の問題も大きい。特に、派遣労働者の労働条件が問題になっている。彼らは、1)本来得られるべき賃金からピンハネされる、2)契約上の労働時間より長時間労働させられる、3)社会保険が受けられない、4)職場でのいじめ、セクハラなどの問題を抱えている。
 ミンゲー鉄道労働組合は、国営鉄道の貨車・機関車修理工場の労働組合である。2012年10月19日に、意欲ある30人を中心に結成された。活動の中心となるべき指導者も含め、経験がなく、労働組合活動ができない状況が続いた。労働者は労働組合に加入することを怖がり、職場の上司が労働組合を理解していなかったことも活動を難しくした。

3.解決に向けた取組み

 全国の鉄道関係の労働組合で構成される鉄道労働組合連盟は、CTUMに所属し、指導を受けながら、他の労働組合と交流を通じて活動を強化してきた。CTUMやニュージーランド鉄道組合から派遣された講師により、リーダー研修、一般組合員研修が行われ、労働組合運営の力を身につけている。現在、加盟組合は10組合、組合員は1620人となっている。2015~2016年度には、組合員を2000人に増やす目標を掲げて、組織活動に積極的に取り組んでいる。組合員から1人1カ月500チャット(約47円)の組合費を徴収し、CTUM会費を支払うと同時に、組合員の医療費補助などを行なっている。しかし、活動資金は十分ではない。
 ミンゲー鉄道労働組合では、2013年1月、使用者と協議の場を持ち、労働者の権利を守る法律について意見交換を行った。その結果、2013年9月には組合事務所を開設することができ、現在、組合員は400人を超えている。

ミャンマー労働組合総連盟(CTUM)
建築・木材労働組合連盟(BWFM)執行委員
シンミンセメント工場労働組合 委員長
ネイ・リン・チョウ・トゥラ

 

1.ミャンマーの労働情勢(全般)

 ミャンマーにおける非正規労働者の問題は深刻である。企業が設定した試用期間が過ぎても正規労働者として採用されないし、労働者の持つ技術を生かす職場に配属されない。 
 このような労働者の多くが労働法の適用を受けられず、労災に対して何の保障もない状況に置かれている。このように不当なことを使用者が行っているのが現状である。

2.労働組合の直面する課題

 労働組合として国からの認証を得ていても、労働組合は自分たちで活動資金を集めていかなければならない。労働組合事務所の設置に使用者が協力しないことも多く、組合員が集まる場所もなければ話し合いもできない状況になる。会社や工場以外の場所で、労働組合の会議を開いていると、労働組合として団結して行動する気風が育たない。労働組合としての全体的な力が弱いと、使用者との話し合いの中で、労働組合の意見が通らないという状況となる。
 ミャンマーの労働運動は長い暗黒の時代から、ようやく光が見える段階にさしかかってきている。一方、まだ多くの困難に直面している。今でも労働組合活動をすれば不利益を被るのではないか、解雇されるのではないかという恐れが強く残っている。一斉に行動することが難しく、他の労働組合と協力することもできない。このような状況を乗り越えて、組織力を強め、他の労働組合との協力関係を築く方向で活動していく必要がある。

3.解決に向けた取組み

 労働組合に関係する法律や労働者の権利などについて、組合員自身が知識を蓄える必要があり、CTUMと協力し、講習会、研修会を開催していく。代表者を選んで交渉し、団結しての協議に結果が伴ってくるように協力する。

4.その他

 労働関連法規が必ずしも現在の労働者の状況に合致していない。使用者が労働組合活動について理解していない。政府は使用者に法律を守らせる努力をすべきである。

ミャンマー労働組合総連盟(CTUM)
ミャンマーインダストリオール労働組合連盟(IWHM)執行委員 
第9衣料品工場労働組合 委員長
ニャン・ティン・アウン

 

1.ミャンマーの労働情勢(全般)

 現在、国営工場が徐々に民営化されている。これに伴い、労働者の配置転換が起きている。6カ月の試用期間を経れば正規職員になる道がある一方、実際、使用者は6カ月直前に労働者を解雇することが頻繁に行われている。金銭を支払った上で労働組合指導者を解雇、配置転換することで、労働組合の弱体化を図ることも行われている。一部の使用者は、労働組合と協力して協議に応じるようになってきている。

2.労働組合の直面する課題

 労使の話し合いが実現せず、政府も使用者に注意を促さないという状況にある。公務員は公務員規則に縛られている。使用者はそれを悪用して、労働組合の委員長を配置転換し、労働組合の分裂を図るというようなことが日常的に行なわれている。
 労使間の紛争に際して、日本の労働委員会と似た機関があるが、実際には労働組合が提訴しても使用者の意見が通りやすい。
 最低賃金制度はまだ議論の段階で、確立されたものとはなっていない。政府も民主化されたとはいえ、労働者のデモは厳しく取り締まる一方、法律を守らない使用者を政府は放置している。
 国営工場は工業省の直轄工場で、衣料品関係では全国11の工場がある。最近、中国・香港の資本が買収しようとした。国営工場の労働者は公務員なので、民営化するには公務員としての保障をしなければならない。香港の企業が2014~2015年、ミャンマー政府から第9工場を借り受ける契約が結ばれたが、この場合、企業責任がどこにあるのか、不明確になっている。

3.解決に向けた取組み

 他の労働組合と協力しながら、政府による労働法制遵守の指導を強化することを要求し、労働者の待遇改善を図る。

ミャンマー労働組合総連盟(CTUM)
ニューウェイ衣料品工場労働組合  執行委員
チー・チー・トゥン

 

1.ミャンマーの労働情勢(全般)

 最大の労働問題は、派遣労働者の問題である。派遣会社は国内の労働者を供給するだけでなく、外国で働くミャンマー人労働者の斡旋も行っている。このような労働者は国内労働者よりもさらに悪い労働環境・条件に置かれている。

2.労働組合の直面する課題

 労災防止がミャンマーでは大変難しい状況にある。例えば、小火があったとしても、身近に防火用水がない、労働者が逃げる非常口がないような職場が普通に存在する。
 公務員の給与は、何年かに一度政府が決めて一斉に引き上げる。2015年4月に公務員の給与が引き上げられた。その途端に物価が上昇し、民間企業労働者の生活が苦しくなり、賃上げが無理なら一時金でも良いので支給せよとのデモや抗議行動が発生した。

3.解決に向けた取組み

 CTUMと協力して労使紛争の解決を図り、必要な法律制定や改正を要求していく。国際機関と連携し、労働者の教育を行っている。研修の結果、労働者の意識向上が図られ、労使交渉で労使間の相互理解が改善される状況が見え始めている。

4.その他

 ミャンマーの政府や警察は、外国資本の工場における法律違反を厳しく取り締まらない。例えば、韓国系企業「マイダス」という縫製工場はミャンマーの法律に違反して操業していたが、野放しにされている。政府に法の適用を求めていきたい。
 ニューウェイ衣料品工場労働組合は2013年10月に結成された。当初の組合員数は50人で、労働組合結成に反対した使用者によって、労働者が工場外に追い出されたことがある。地道な活動の継続で、現在は組合員600人になっている。労働組合事務所も獲得できた。使用者と労働組合が話し合いをしながら、生産性を向上させていく活動に取り組んでいきたい。

ミャンマー労働組合総連盟(CTUM) 執行委員
イーストグロース衣料品工場労働組合 執行委員・女性委員会副委員長
パ・パ・カイン

 

1.ミャンマーの労働情勢(全般)

 派遣労働者は、正規労働者に比べ低賃金だけでなく、福利厚生を享受する権利もない。

2.労働組合の直面する課題

 組合員と同等の権利を非組合員でも得られるため、組合員が減る傾向にある。非組合員も自分の権利・義務に対する理解がない。労働者自身に十分な知識がないと、規則を守ろうとする意識に欠け、使用者も労働組合と話し合いをしようという気風が生まれない。労働組合活動の発展には、労働者自身の自覚が必要だが、現状は難しい。

3.解決に向けた取組み

 労働者も法律に基づいて、使用者に要求を出す必要がある。例えば、ある縫製工場で、ラインについている労働者に、使用者が別のラインに入るよう要求したところ、労働者が拒否をして紛争になりかかったことがある。CTUMに相談したところ、「使用者に業務の必要があれば、人員の配置を変える権利がある。労働組合が従わなければならないこともある」との回答を得た。労働組合内で話し合いをした結果、ラインを変更することで一件落着した事例がある。
 今、力を入れているのは職場の安全である。労働者自身が消化器の使い方をわかるように講習会を行うことを要求している。

4.その他

 労働組合の活動家に対する不当解雇の問題がある。使用者が一方的に労働契約を廃棄することで起きる。政府は労使関係法を適用し、使用者を罰することができていない。労働者が法律違反をしたら投獄され、使用者が法律違反をした場合は罰金で済ましてしまう。このような状況を変えなければいけない。きちんとした法律の適用を求める行動をこれからも進めていく。