2002年 マレーシアの労働事情

2002年6月5日 講演録

マレーシア労働組合(MTUC)
アンドリューローキアンニャン

サラワク銀行従業員組合事務局長

 

国内の状況

 マレーシアは立憲君主国で、議会内閣制をとっています。首相が政府のトップで、13の州を統治しています。政治制度は日本の政治制度に非常に似通っています。よく似ていますが1つだけ違う点があります。日本では天皇がいて、首相は選挙ごとに選ばれています。マレーシアのほうは王がいますが、この王は、13州それぞれにいる統治者の間で選挙で1人の王を選ぶことになっています。首相は5年ごとに選挙で選ばれます。現在の首相のマハティール・モハメッド氏は、5年ごとに選ばれるといっても、もう20年以上首相に就いています。それに比べて、王のほうは5年ごとに新しい人が選ばれています。
 ということで2つの国の違いがはっきりしました。日本には天皇がいて、天皇は永久にいますが、首相は何年かごとに選挙で新しい人が選ばれる。逆にマレーシアのほうは王がいますが、王はしょっちゅう選挙で選ばれるが、首相のほうはずっと永遠に同じ人がいるというそういう違いがあります。

MTUCの状況

 労働組合を規制する制度ですが、マレーシアでは、労働組合は労働組合法によって厳しく規制されています。いろいろな労働法があります。その中に労働組合法もあれば、雇用法もありますが、これらの労働法の下で労働組合の範囲、代表権、さまざまな活動などが厳しく制限されています。したがって、労働者の声を代表する機能も制限されています。
 さまざまな制限の中の1つを紹介すると、例えば労働組合に関する規制として、西マレーシアで登録された組合には、東マレーシアの労働者は組合員として参加できません。それぞれの労働組合に参加できる産業と労働者の種類が、労働組合ごとに決まっています。
 このように様々な労働組合への制限があるので、労働者の組合参加率が非常に低くなっています。サバとサラワク州では4%に満たない組織率ですし、国全体としても約7.5%です。労働組合は500以上も登録されていますが、そのうちの数少ない労働組合しか労働者を効果的に代表していません。
 次に、経済状況です。マレーシアは市場経済制度を採用しています。WTOの調印国でもあります。したがって、我が国の経済はこの地域の経済や世界経済に大いに影響を受けています。マレーシアの経済はこの2年間厳しい状況に置かれてきました。昨年9月11日の同時テロ攻撃の後遺症からも影響を受けています。またアジアの経済危機からも大きな影響を受けています。それらからまだ回復できてはいません。そのような背景のもとで、MTUCは3年に1回開かれる大会をこの3月に開きました。そこで幾つかの決議が採択されました。そのうちの4つの主要なものについてご紹介します。

  1.  政府に対しMTUCは政府に対し、ナショナル・リトレンチメント・スキームを採用するよう働きかけています。このスキームは日本をモデルにして作られたスキームです。これは一種の社会的なセーフティネットと言えるもので、解雇された人のための基金を設立しなさいというものです。この基金を使って、失業した人が失業期間中何とか生き延びていけるようにするスキームです。
     例外に漏れず、経営者側から大変な抵抗に遭っています。MTUCはその組織の中にタスクフォース(ある一つのことに目標をもって働くべきチーム)を設立しました。
     このタスクフォースが、今、直接首相と会ってこの件に関して話し合いを持とうと努力しています。
  2.  次は最低賃金制度についてです。マレーシアには最低賃金制度というものがありません。そこで、MTUCは積極的に政府に働きかけて、最低賃金制度を導入するよう要求しています。これもまたご多分に漏れず経営者側は反対しています。政府の対応ですが、どっちともつかない態度をとっています。政府が今やっているのは、委員会を設立してある産業部門についてだけ、それについて研究しようということをしています。つまり、経済全部門ではなくて、ある一定の部門だけとで、現在構想されているのがサービス部門と農業部門です。
  3.  MTUCの重要な行動計画として、組織化の問題があります。先ほども申し上げましたが、マレーシアでは組織率が非常に低く、MTUCは全面的な組織化運動を始めています。努力の結果、サバ州において、木材産業労働者の労働組合登録に成功しました。同じことをサラワク州でも努力しています。
  4.  次は雇用法に関してです。雇用法というのはいろいろな分野の最低条件を設定している法律です。例えば、超過勤務手当、疾病休暇、年次休暇、解雇手当等々です。この法律はサバ州とサラワク州では適用されていません。したがって、これらの2つの州では最低労働基準を保護する法律がないということになります。MTUCはここ35年間、最低労働基準を全国に適用するようにと運動してきましたが、今のところまだ成功していません。そこで、MTUCは今度の大会で決議をして、この案件をILOに提訴しようかと考えています。