2010年 カンボジアの労働事情

2010年10月1日 講演録

カンボジア労働組合調整評議会(CTUCC)
ノン トル(Mr. Norn Thol) 

レンガ・タイル全国産業労働組合シェムリアップ州支部委員長>

 

1.カンボジアの労働事情

 市場経済導入後、カンボジアは投資家からの投資を受け入れるポテンシャルが増え、カンボジア経済の発展に大きく寄与している。特に縫製、靴の製造および観光分野の労働市場には、多くの労働力が供給されている。
 1994年に24,015人しかなかった労働力供給は、10年後の2004年には10倍以上の285,000人にのぼり、現在では400,000人以上となっている。しかし、この労働力を吸収できる職場が不足しており、日本と比べて労働力の水準はまだ低い状況にある。
 それでもこの間、数多くの企業や施設が設立された。2004年には247か所だった工場が、2008年には300以上、さらに現在は400以上に増加している。
 地方に住む人は仕事を求めて都市部のプノンペンに移動し、一部は派遣会社を通じてタイ、マレーシア、韓国などに働きにでている。
 1990年以前、労働組合は政府の監督下にあり、自由に行動することができなかったが、民主的な労働組合が1996年に誕生し、労働者の権利および利益を保護している。1997年に労働法が施行され、2008年から国による労災保険制度が導入された。しかし、依然として多くの問題が発生している。

2.現在直面している課題

1)労働組合の活動が1996年から始まったが、未だ未成熟である。
2)資金不足などにより労働組合活動に関する教育が不十分な状況にある。
3)投資家が外国人であるため、言葉や文化の違いから労使関係があまり良くない。
4)多くの経営者が、組合活動の干渉、組合幹部の買収、短期労働契約による組合活動の妨害を行い、労働者の権利を奪っている。
5)労働組合法が経営者側に偏っている。
6)労使間の問題解決に長時間を要する。

3.課題解決に向けた取り組み

1)国際的な労働組合組織および労働の専門機関と連携し、研修および視察等で労働組合活動に関する経験を積む。
2)人材育成のため国際的な労働組合の技術的および財政的な支援を受け、カンボジアの労働組合に対して労働者の権利に関する教育を行う。
3)職場の問題解決には経営者と協議の場を持つことが必要である。生産性の改善および仕事の安定的な確保について協議し、団体交渉を通じて労働協約を締結する。
4)経営者側または経営者協会と交渉し、仕事をよりスムーズに行うためにカンボジア人を経営に参画させる。
5)労働組合の活動が妨害された場合、政府(特に労働省)および妨害した企業に対し、カンボジアの労働法またはILO条約を遵守するよう働きかける。
6)政府および経営者側に対し、労働組合の意見を労働組合法に反映させるように運動する。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 政府との協議の多くは以下のような三者構成の委員会で行われる。
 労働委員会(委員長は労働大臣、労使代表が副委員長、各側7名のうち正委員は3名、4名はオブザーバー。正委員が欠席の場合はオブザーバーが参加する。労使関係や労働条件改善の協議などを行う。)
第8労働部会(委員長は社会省の大臣。第7部会が経営側に偏った構成メンバーのため、労働組合の要求で設立された。紛争の発生は労組側の問題だけでなく、使用者側の法違反により発生していると主張している。)
教育・人材育成に関する中央教育委員会(NTB)
デモやストライキ解決のための委員会
児童や女性のための中央小委員会(委員長は労働省の次官)

5.多国籍企業問題の進出と労使紛争の状況について

 カンボジアへの投資には5年間の優遇税制措置があるため、海外の投資家は、優遇期間が終了する5年後に工場を閉鎖し、また新たな工場を作るということを繰り返している。

1)カンボジアに対する投資の状況
1994~2004年:投資家が非常に増加した。
2004~2008年:投資がタイやベトナムなどの近隣国に向かった。
2008~2009年:世界経済危機により大規模企業が閉鎖され、従業員に対して法律で規定されている保障が全く行われなかった。労働組合活動も停滞した。
2009~2010年:従業員1,000人以下の企業が多く設立されたが、大規模企業の下請け的なものが多く、雇用期間が3カ月の有期雇用であるなど、労働組合の活動は厳しくなっている。

2)労働争議に関して
 労使間で様々な争議が発生するが、それをウィンウィンで解決しなければならない。多くの争議は使用者が法を遵守しないこと、もしくは利益相反行為から発生したものである。主な争議内容として以下のようなものがある。
経営者の変更
賃上げなど様々な要求
短期労働契約の利用
職場での協力関係の不足
労働組合の権利に対する妨害

6.ジェンダー問題の取り組み

 カンボジアの現実は、女性の方が国の経済に貢献している割にはその恩恵をうけていない。女性労働者の保護も十分でなく、職場でも社会一般においても女性の権利が守られているとはいえない。権利意識の低さも問題であるが文化に関係した問題でもある。労働組合としてはすべてのイベントへの参加を男女機会均等とすることをスローガンに活動している。