2009年 ネパールの労働事情

2009年9月29日 講演録

独立ネパール労働組合会議(NTUC-I)
タラ マリリ ライ(Ms. Tara Kumari Rai)

中央執行委員

 

1.労働情勢

 総人口は、2320万人、増加率2.27%。人口の約80%は農業に従事している。経済成長は3.1%で人口増にほぼ釣り合っている。平均寿命は59.7歳である。文盲率、貧困率が高い。人口の半分近くが貧困ライン以下にある。毎年約30万人~40万人が労働市場に参入する。完全失業率は5%、不完全雇用率は45%にのぼる。雇用環境の悪化により外国へ職を求める人が増加する傾向にあるが国内でも治安悪化等により移動も非常に多い。国の開発予算の約60%は外国の援助による。

2.現在直面している課題

 労働法も労組法もあるが実施されている部分が少ない。世界銀行は早期の改正に向けて圧力をかけているが労働組合としては労働の「柔軟性」より労働者の社会保障を要求している。インフォーマル経済は労働人口の90%にのぼる。インフォーマル経済は労働組合にとっても大きな課題である。フォーマル経済がインフォーマル化している背景には過去の紛争、政治的混乱、安価な移民労働者の影響、技術の現代化、経済の自由化・国際化がある。260万人の児童労働は組合にとっても大きな課題である。新憲法において労働者の諸権利を確保することが組合の課題となっている。

3.課題解決に向けた取り組み

 これらの問題解決に向けINTUC-Iはあらゆるレベルでの協議を開始した。労働者すべての社会保障の確立を目指している。また、インフォーマル部門の労働者の組織化をすすめ、スクーリングプログラムを通じて児童労働の根絶を目指している。全労働者を代表して政府に社会的諸政策を要求していくために、2007年12月、8つの全国組織によって設立された共同労働組合調整センター(JTUCC=Joint Trade Union Coordination Center )の活動を推進する。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 INTUC-Iは政府と良好な関係を維持している。

5.ジュンダー問題の取り組み

 すべての労働組合は決議機関の33%に女性が就任するという方針をかかげ、各組合の主要課題として取り組むこととしている。人口の50%以上を女性が占めているが、女性の環境は満足なレベルにない。暫定憲法は女性の基本的権利をいくらか保障しているが、意思決定への参加レベルの低さ、家庭内暴力、教育レベルの低さ、女性に対する差別的な法律と慣習などが大きな障害として立ちはだかっている。

2009年6月16日 講演録

独立ネパール労働組合会議(NTUC-I)
ラリット・カラ・グルング(Ms. Ralita Kala Gurung)

ネパール商業・関連労働組合 組合員
NTUC-I中央委員会委員

 

はじめに

 独立ネパール労働組合会議(NTUC-I)は民主的な組織である。2008年に統一される前のネパール労働組合会議(NTUC)は1947年に結成され、その後1990年にネパールにおいて民主主義が回復された後、労働者・その家族・その共同体の福祉を確保し、それらの社会的経済的水準を引き上げる目的で再結成された。再建後2008年の再統一まで、NTUCには全国に亘って25の産業別組織、6地域組織、65の地区組織、約25万人の労働者が結集するまでに急速に拡大した。NTUC-Iは2009年4月4日―6日、ビルガウンジにおいて第4回統一大会を開催した。

労働組合と労働情勢

1.ネパールの労働組合は2008年3月1日に無事に統一を達成し、独立ネパール労働組合(NTUC‐I)を結成した。中央レベルのみでなく地域レベルおよび事業所レベルでも同様な統一が行われた。NTUC-Iは2009年4月4日-6日、ビルガウンジにおいて第4回統一大会を開催した。
NTUC‐Iの次の大きな課題は労働者の権利を新憲法の中に明確に規定することにあると考えている。ネパールの労働者はこの歴史的な進展を極めて楽観的ではあるが注意深く見守っている。NTUC-Iは、すべての分野の代表者により構成される民主的な連邦共和制をネパールにおいて築き上げていくことに貢献するつもりである。
2.今日の政治情勢のために、労働関係法の改訂作業には影がさしている。しかしネパールの労働組合、特にNTUC-Iはこれらの問題に関して関係当事者との3者間・2者間対話を済ませた。現在この問題は3者構成労働諮問委員会で議論されているが、その議論過程にはNTUC-Iは適切な道を持っていない。しかし労働委員会の規定、ならびに労働者の基本的な権利は2007年ネパール暫定憲法によって既に保障されている。労働組合の基本的方針は労働者の権利が全体として承認され、制度化されることにある。
3.世界銀行と国際通貨基金(IMF)は労使関係法の早期改定を注視しており、他の国際金融機関に先立って両機関が受け入れられるものであるかどうかをネパール政府に前提条件としてつきつけている。
4.法案で提案されているように、使用者側にとっては採用と解雇、容易な雇用の終了、労働組合権の制限が主要な問題であり、労働者側にとっては社会保障、インフォーマル経済部門の組織化、比類のない労働組合権と団体交渉、強力な労働行政と監督を伴った法規の適切な実施が主要な問題である。
5.解雇
随意な退職制度(VRS)や強制退職制度(CRS)の名称で解雇が行われている。
6.社会保障規定に対するマイナスの影響
既存の就労規則を改定することによるマイナスの影響がある。
7.コスト削減
工場の閉鎖、公企業のダウンサイジングなどにより雇用の削減が行われている。
8.労働のアウトソーシング
コスト削減を名目にアウトソーシングや契約労働が行われている。

産業・経済情勢

 国家が所有する企業の容赦のない民営化(60の国営企業のうち17の企業が既に民営化され、8つの企業が俎上に上っている)、国営企業の破産(2企業が凍結された)、暴力的な紛争、ネパールで機会が欠如していることが、生活の安定を求めて労働者が海外に移民する推進力となった。2001-2002年度だけで679の企業が破産し、ネパールの雇用市場にマイナスの影響を与えた。1992年以来激しく実施された構造調整計画(SAP)の4輪、すなわち民営化、非国営化、規制緩和、グローバル化により企業は減少し、家計は侵され、雇用は削減され、労働者の団体交渉能力は大きく弱った。

労使関係上の問題

  • 1990年代初頭の激しい対決を踏まえて1995年以降は交渉の道筋が重要となってきた。
  • フォーマル部門のインフォーマル化、雇用形態の変化などにより労使関係のスムースな発展が遅滞した。
  • 産業民主主義は依然としてネパールでは遠い目標である。
  • 最低賃金は一般的に最高賃金とみなされている。
  • 労働法規の実施は極めて脆弱で、政府機構は不十分である。

NTUC-Iは組織化された部門、また未組織部門の双方で労働者の権利獲得のために絶えず活動している。しかし、ネパールでは90%以上の労働者はインフォーマル部門で働いている。NTUC-Iは労働組合教育、組織化、職場の安全衛生問題などでも活動を開始している。260万人の児童労働が依然として存在する。非正規学校計画がこの問題に対応している。女性労働者の地位向上のために様々なレベルで活動を開始している。ナショナルセンターを1つにする方向でNTUC-Iは活動している。

2009年6月5日 講演録

独立ネパール労働組合会議(NTUC-I)
カマラ・シワコティ(Ms. Kamala Shiwakoti)

執行委員

 

労働情勢

 労働人口は1320万人、76%が農業に従事している。不完全雇用が45%と深刻な雇用状況にある。女性労働者は総労働人口の47%を占める。女性労働人口の87%、男性労働人口の67%が、インフォーマルセクターで働いている。フォーマルセクターの雇用が減少し雇用のインフォーマルセクターへの依存が高まっている。サービス部門は繁盛しているが、フォーマル労働市場は、ますます縮小している。インフォーマルセクターには外国人労働者も流入している。賃金労働者は労働人口の26%であるがその数は増加している。また、16の国営企業の民営化により当該労働者の39.5%が仕事を失っている。官公サービス部門の雇用が一時的に増えたことがあったがそれは共産党毛沢東主義派による暴動を取り締まるために増員された警察と軍隊のためであった。

直面する課題と取り組み

 政府に対する社会的諸政策を要求していくために2007年12月、8つの全国組織から成る共同労働組合調整センター(JTUCC=Joint Trade Union Coordination Center )が設立された。民主主義と社会主義をめざし全労働者の基本的人権として組織化、組合活動、団体交渉、ストライキ、ディーセントワーク、移動・住居、社会保障、雇用上のいかなる差別にも反対、児童労働・強制労役の撤廃などをあげている。政府の制度・政策を進めるために各種の諮問委員会に労働者代表を入れることを要求している。

労働力のジェンダー格差が顕著で広義のフォーラムセクターに占める女性の割合は2%にすぎない。女性は賃金労働として極めて弱い立場におかれている。企業数は増加しているが雇用は増えずむしろ減少している。また、ネパールには、圧倒的な数の児童労働が存在するが、それはインフォーマルセクターを特徴づける現象でもある。強制労役、ダリット(不可触賎民)労働など女性労働者に対する搾取的労働慣行もある。ネパールは、識字率が低いために産業安全衛生をはじめ環境問題に対する取り組みが遅れている。産業安全衛生についてはNTUC-Iとして指導員養成と草の根レベルの訓練を行っている。児童労働撲滅運動ではNFE(非公認教育non-formal education)に取り組んでいる。

多国籍企業

 ネパールに進出している多国籍企業は多くはない。ほとんどがインド系の企業ないしインド系企業との合弁企業である。インドステイト銀行、インド生命保険、アメリカン・ライフインシュアランス(AIGグループ)、ユナイテッド・テレコム、マニパル病院、ドイツポスト、スタンダード・チャータード銀行などである。代理店による活動ではノキア、サムソン、ソニーなどがあげられる。組合を承認している多国籍企業はまだない。本社が組合を了承していてもネパール駐在の管理者が組合を肯定的にみていない。さらに多国籍企業の経営者は労働行政と政府への影響力が強い。