2003年 インドの労働事情

2003年6月4日 講演録

インド労働者連盟(HMS)
サリル ローレンス

インド南東中部鉄道労働組合/委員長

 

 現在インドの政権は25の政党からなる連立政権です。現在の政府の政策は反労働者的な政策です。10年にわたって経済改革を進めてきましたが、今も経済の成長率は約6%程度に留まっています。国内及び海外からの投資が減少しています。それによって経済成長が鈍化しています。そのような状況の中で労働組合がなさねばならないことは、一致協力して労働組合として今の課題に取り組むということです。
 HMSを除いて、ほかの労働組合は政党の路線に沿って分裂しています。そのような状況では今の課題に効果的に対処していくことはできません。HMSは労働運動の統一が必要であることを主張してきました。その目標に向けて、これまで何度も努力を繰り返してきました。

HMSの行動方針

 HMSはインド全体で加盟組合を動員して、大集会、その他の集会を組織してきました。政府の民営化政策、反労働運動的な政府の政策に反対するためです。
 HMSの目標は、労働者の人員削減は許さない、人員整理も許さないということです。もう一つの行動の目標は最低賃金制度をつくらせることです。そして労働者を尊重せよと訴えています。社会経済生産性本部の澤田さんから講義をここで受けましたが、その中で日本の生産性の向上について伺いました。しかし考えてみると、インドは世界第2の人口を抱える国ですが労働者の再雇用のための制度がありません。
 そのような中で、行動計画を達成するためにさまざまな運動をしています。政府によってもたらされた現在の状況から国を救い、そして生き残るための安定を図るために、一般の労働組合員も動員して、もっと意識向上を図るための運動です。基本的に必要なことは仕事を労働者に提供するということです。したがってHMSのスローガンは「仕事を救、え」そして「国を救え」というものです。

インド全国労働組合会議(INTUC)
ワラ プラサド ガレ

ビジャヤワダ市運送労働組合/事務局長

 

INTUCの活動状況

 インド全国労働組合会議(INTUC)は、建国の父であるマハトマ・ガンジーの祝福を受けて、インド独立の前夜の1947年5月3日に設立されました。INTUCの設立の目的は労働者階級を国の建設のために参加させようということでした。INTUCの設立以来、労働者の大義のためにさまざまな活動を展開してきました。労働者を法的に保護するため、そして搾取を終わらせるために、さまざまな法制度をつくるために、役立ってきました。
 独立後、インドの経済は公営企業の大規模な設立によって、大きな発展を遂げました。国民会議派の政権の時代、インド政府の産業政策は多数の公営企業の設立を促進するものでした。これらの公営企業は国の経済基盤をつくるのに非常に大きな力があり、そしてそれによって多大な数の雇用機会が生まれました。また同時に、民間部門でも投資が拡大しました。
 インドの人口は10億人を超えました。そのうち4億人が労働力人口です。この4億人のうち、2,800万人程度が組織化されています。これらの人たちは1年を通じて定期的な収入が確保されています。
 しかし、残る3億7,200万人の人たちは、基本的には農業部門の季節労働者です。彼らには1年を通じての安定した収入はありません。というのは、農業はモンスーン、季節風に依存していますが、そのモンスーンは1年に一度だけやってくるからです。これらの労働者は法的な保護を全く受けていません。また社会保障制度の恩恵も受けていません。彼らは経営者によって搾取されています。最低賃金制度はありますが、これらの労働者は最低賃金を受けていません。組合はこれらの多数の労働者、つまり農業、農村、そして未組織労働者に法律によって保護を与えるよう強いプレッシャーをかけてきました。
 現在、政府が議会に提出することを考慮中の法案が法律として制定されたら、少なくとも労働人口の92%は、インドで初めて何らかの法的な枠組みにより恩恵を受けることになります。
 次に、組織化が進んでいる経済部門における労働者の分布について、2001年3月末現在で入手可能であった最新の統計によると、公共部門及び民間部門における雇用の分布状態は次のとおりです。まず総計で、2,779万1,000人。そのうち男性が2,284万1,000人で82.2%を占めています。女性が494万9,000人で17.8%にしか過ぎません。公営企業が1,913万9,000人で全体の68.9%が公営企業で占められています。公営企業に勤めている人たちのうちの男女の内訳は、男性、1,627万9,000人で女性、285万9,000人です。次に民間部門は、全体のうちの31.1%ですが、数にすると865万2,000人です。男性が656万2,000人で、女性が209万人です。組織化が進んでいる部門ですが、そこでの組織化の状況は、大体満足のいく状況です。
 しかし一方、インフォーマルセクターも含む組織化が進んでいない経済部門ですが、そこでは組織化の状況は非常に限定的です。なぜかというと、これらの人たちは非常に広い地域に分散しており、教育の手が届かないからです。それにもかかわらず、労働組合はこの人たちを組織化するために非常に頑張っており、INTUCだけで、これまで約100万人を組織化しました。
 経済の自由化についてお話しします。インドがWTOに加盟して以来、今まで制限されてきた市場が競争のために開放されました。その結果として、多くの完成品がインドの市場に流入してきました。その結果、国内産業が市場を失いました。まだ競争力を維持している企業はさらにコストを下げて、競争力を維持するためのプロセスを始めました。つまりリストラです。その結果、多くの労働者が希望退職、その他の方法によって仕事を失いました。これらの労働者は、何らかの定期的な収入を保障される必要があります。そこでINTUCはこれらの人たちに2年間にわたって、予算措置によって所得保障をするように働きかけてきました。これは再雇用されるまでの措置で、政府は所得保障のために保険制度を導入することを考慮中です。
 労働法の改正を目的に、1999年末に、政府は第2全国労働委員会を設立しました。INTUCの会長はこの委員会の委員となりました。昨年中ごろ、この委員会は政府に答申を提出しました。委員会の勧告は現在、政府によって検討されているところです。この委員会の勧告に基づき、政府はさまざまな労働法の改正を提案する可能性があります。
 結論は、未組織部門はインフォーマルセクターも含めて組織化が全然進んでいない部門ですが、それらの労働者は法による保護を全く受けていません。何百万人もの求職者に仕事の機会がないので、収入がありません。そこで労働組合は、政府に働きかけて、この労働者のために失業保険をつくるように法の制定を申し入れています。また、社会的なセーフティーネットの構築も働きかけています。仕事を失った失業者たちの再訓練はもっとも重要な課題です。組合は行動計画の中でこの問題に最優先順位を与えました。この問題は昨年、三者フォーラムで討議され、今度のインド議会において、さらに議論が深められる予定です。