2011年 ウクライナの労働事情

2012年1月27日 講演録

ウクライナ自由労働組合総連盟(KVPU)
ミハイル・ヤコヴレヴィッチ・ヴォリネツ

 

1.ウクライナの労働情勢について

 ウクライナは、粗野な資本主義下で発展している。いくつかの一族が製造業を支配し、大統領や政府、議会、マスコミの言動をコントロールしている。賃金水準では欧州43ヵ国中42位であり、国民の85%が貧困層に属している。
 雇用者は政府とともに、また古参の御用労組の支援を受けて、常に労働法規を改悪する措置を実施している。最近では、現行法よりはるかに劣悪な新労働法を採択しようとしており、この新労働法によって、ウクライナの全ての労働法規が最悪の意味で調整されることになる。
 ウクライナでは、中国式にならった安価な労働力への依存が最優先されている。数千の鉱山で違法な奴隷労働が行なわれているという恥ずべき状況にある。有名なテレビ局アルジャジーラが、世界における5つの最悪の労働形態についてのドキュメンタリー映画を撮影したが、ウクライナの不法鉱山における児童労働が、その一例として挙げられた。
 ウクライナでは、女性の賃金は平均で男性より30~40%低い。賃金上の直接的な女性差別は見られないが、男性が就く職種は相対的に賃金レベルが高いため、男性の賃金が国全体として女性より、30~40%高いのが実情である。
政府は、雇用者とともに、古参労組を支援しようとしており、2010年には『ウクライナにおける社会的対話法』が採択された。これにより独立労組はつぶされ、古参労組による独占が強化されている。これらは、沿バルト諸国を除く、ソ連崩壊後生まれたほぼすべての国に見られる移行期の兆候である。

2.労働組合が現在直面している課題について

 課題は、労働力の価値低下を許さず、高レベルの隠れインフレを考慮した、賃金の物価スライド制の導入だ。例えば2010年、複数の専門家がインフレ水準を42%と評価したが、公的な統計局が示した数字は9.2%だった。また、労働法規改悪を許さないことや、裁判所で公正な判決を求めることも課題である。ウクライナでは、90%の割合で、裁判所は雇用者や当局に有利な、不公平で不法な判決下している。労働組合は、ILOおよびITUCとともに、ILO諸条約の国際基準の遵守、言論の自由および民主主義の原則や公平な社会的対話の構築をめざしている。

3.課題解決に向けての取り組みについて

 私はKVPU会長として、社会・労働関係調整を規定し、雇用者と平等な存在となるために、労働者によるウクライナの民主的独立労組発展のための条件を作るために、一連の法案を準備した。そして、これまでいくつかの法案を通すことが出来た。しかし、最近では、国が全体主義的な社会創設の方針を取っているため、このようなイニシアチブは阻まれている。ITUCとILOはEUとともに、ウクライナにおける言論の自由や男女平等、公正な選挙実施などの問題をめぐる状況の悪化を食い止めるため、モラトリアムを行なっている。私たちは、他の多くの社会団体とともに、ウクライナにおける状況の改悪を阻むための、市民社会の発展に積極的に参加している。

4.ナショナルセンターと政府との関係について

 独立労組の活動は、すべての雇用者や政権レベル(地方レベルでも地域レベルでも中央レベルでも)で阻まれている。そして事実上、独立労組は社会的対話から追い出されている。私たちは常に労働協約締結権を求めて闘っているが、ウクライナでは、ILOの基本条約である第87条及び第98条に違反し、独立労組が企業で労働協約を結べないような法律が複数採択されている。
 今年は国会選挙が行なわれるが、その選挙結果は捏造され、修正されると思う。そしてまた、革 命が起こるのではないか。以前オレンジ革命というものがあったが、また同じような状況になるのではと思っている。

5.多国籍企業の進出状況について

 ウクライナでは汚職がはびこり、ビジネスにとっての魅力が少ないため、投資額が限られ
ている。その中で、事実上の投資国となっているのがキプロスである。これは、外国の不透明な市場関係の皮をかぶった国内の政商の隠れ投資であり、合法的に活動する多国籍企業はそれらの灰色企業と競争することができない。
 しかし、ウクライナでは、そうした不透明な条件下でも順応して、マクドナルド、コカコーラ、そしてドイツ企業やロシア企業などが活動している。