2010年 モンゴルの労働事情

2010年10月1日 講演録

モンゴル労働組合連盟(CMTU)
グルセド・ワーンチグ(Mr. Gursed Vaanchig)

バヤンホンゴル県労働組合連盟会長兼CMTU総括顧問

 

1.労働情勢(全般)

 モンゴルが市場経済の道を選択してから20年が経過した。社会体制の変革に伴って政治および社会のあらゆる部門において変化が生じ、われわれは民主的に市場経済を発展させる道を受け入れた。
1991年に労働法を経済体制の移行に合うよう改正し、1998年にILO144号条約を批准して、政労使三者間の協議が定着する基盤をつくった。
 労働力人口は2009年の統計で113万7,900人、就業者数は約100万人、失業者数13万人、失業率は11.6%である。2010年第1四半期の失業率は12.2%となっている。その理由には、雇用の不足、要求される労働者の採用条件が高いことなどいくつかの要因が挙げられる。
 モンゴルの労働組合の歴史は1917年に始まった。モンゴル労働組合連盟(CMTU)は産業別組織が13、首都と県の組織が22、あわせて35の組織で構成されている。

2.労働組合が現在直面している課題

 最も重要な課題は労働関係、社会福祉と関係のある賃金、年金、税金などの問題を何よりも先に市場経済の法律に合致させ、解決していくことである。特に、以下の4点を重視している。
1)三者協議を通じて失業率を下げること。
2)組合員に対し、様々な支援・サービスを行い組織率を上げること。
3)インフォーマルセクターの労働者を組織化すること。
4)県・産別組織への二重加入の解消など組合の組織構造を改革すること。

3.課題解決に向けた取り組み

 政府、CMTU、モンゴル雇用者同盟の三者は1990年から現在まで2年ごとに労働社会協議三者協定を結び、その平均86%が実施されてきた。
 国レベルに「労働社会協議三者国家委員会」があり、県や郡にも支部委員会がある。政府代表としては各関連省庁の副大臣や次官が参加し、政労使各9名、合計27人で構成される。「国家委員会」の中にはさまざまな問題を解決する分科委員会がある。労働紛争を迅速に解決・調整するための「労働紛争調停分科委員会」、「健康保険分科委員会」そして「労働安全衛生分科委員会」などがある。いずれも国に準じて県、郡にも委員会がある。メンバーは政労使各3人の合計9人である。全国に45人いる労働監督官もこの分科委員会に入って国の監督官として活動している。
 他に、雇用問題の解決を図る「雇用国家協議会」、社会保険問題について協議する「社会保険国家協議会」も同様の位置づけとして三者構成で設置されている。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 CMTUの第19回大会でガンバータル氏が会長に選出されて以来、政府に対して労働組合が提出する要求の推進力が増した。モンゴル政府は労働組合の考えや要求を受け入れ、実行している。労働社会協議三者委員会における政労使の関係は非常に良好であり、国が直面している課題、国民生活、労働者生活、賃金などに関する課題については、三者が協約を結びながら対応している。

5.多国籍企業の進出と労使紛争の状況

 わが国では法整備が遅れていることから、外資系企業が自らの権利のみを主張している。鉱業・建設分野では外資系企業が増加しており、賃金、労働時間、労働安全衛生の問題で紛争が起こり、ストライキ、ハンガーストライキを行う例も出ている。
 外資系企業は、モンゴル人労働者の賃金を低く抑えているほか、特に中国の企業は、モンゴル人労働者と労働契約を結ばず、労働安全衛生基準に満たない仕事場で働かせている。これらの企業で労働組合が結成されたケースは少なく、労働者の利益が著しく損なわれている。民間部門の中小企業にも外資系企業が像会している。

モンゴル労働組合連盟(CMTU)
ガンボルト スフバータル(Mr. Ganbold Sukhbaatar)

モンゴルエネルギー・地質・鉱山労働組合連盟会長

 

労働組合が直面している課題

1)労働関係が社会体制の移行に完全に対応できていない
(1)民主化後21年という経過期間、(2)市場経済社会に適合する法の未整備、(3)市場経済に対する理解不足、(4)財産の私有化への不十分な対応など
2)低賃金など劣悪な労働条件
3)短期契約労働者の増加による不安定な雇用状況
4)労働時間・休憩時間に対する法規違反の多発
5)雇用契約における労働者側に立った条項の導入に経営者が消極的
6)電力、暖房、石炭の価格を政府が決定しているため、当該部門の発展、技術革新、賃金、社会保障等に関する当該部門内での問題解決に支障が出ている
7)民間部門の企業の成長が抑制されている
8)生産性運動のさらなる展開
9)労働安全衛生対策の充実
10)労働法を現行法より改善するための改正 
11)外資系企業とモンゴル政府が結ぶ投資契約の内容についての労働組合の監視・監督

課題解決に向けた取り組み

1)研修の実施
2)組合のない企業に対する啓蒙活動の実施
3)労働安全衛生を最優先にした組合活動の実施
4)労働法改正への対応

モンゴル労働組合連盟(CMTU)
ナラントヤ チャグナー(Ms. Narantuya Chagnaa)

モンゴル医療労働組合連盟書記長

 

 モンゴル医療労働組合連盟(1924年設立、1990年連盟として独立)の組合員数は約18,000人(地方約11,000人、首都約7,000人)。
 現在直面している課題は、低い賃金、過酷な労働環境である。
 課題解決に向けて以下のような取り組みを行ってきた。
2009年4月
 モンゴル保健省との間で2年間有効の協定を締結。
2009年10月
 医療サービス向上のため、専門職の賃金引上げなど労働条件の改善を要求する記者会見の実施。
2009年11月
 新型インフルエンザの影響でストライキの実施形態を変更し、各職場で組合員が仕事の手を止め15分間の話し合いを行う。
 モンゴル教育科学労働者組合連盟もこの運動に参加。
 CMTUガンバータル会長が署名集めのため広場で座り込みを行う。
 デモ実行のためのワーキンググループや、具体的実施手段を協議する会議を結成。
 保健省前で全国規模での賃上げを求めてデモを決行。
 国家公務員給与の引き上げにこの運動が波及。
 全国三者協議で政府は賃金引上げの上限を21.4%とする方針を打ち出したが、組合はこれを不服としてデモを継続。最終的に国家公務員の30%の賃金引き上げを回答し三者協定が締結された。