2000年 モンゴルの労働事情

2000年2月8日 講演録

ルムジャフ・ツェンド
モンゴル労働組合連盟ウヴス県労働組合連盟委員長・CMTU労働大学ウヴス分校校長

 

モンゴルの現状

 皆さんご存じのとおり、モンゴルは1990年より計画的中央型経済体制から市場型経済体制に移行中です。現在は、以前の古い体制に二度と戻ることはないという確信のもとに、新しい社会体制を整備しつつあります。1990年には全労働者の96.4%が国の仕事に従事していましたが、1998年の時点では、全労働者の68.4%が民間部門、30.1%が公共部門で、1.4%が宗教及びその他の公益団体などの非営利機関の仕事に従事しているという統計がでており、現在のモンゴルは確実に民営化を進めています。
 このようなモンゴルにおける1つの社会体制から違う体制への移行というのは、起こるべくして起きたことですが、移行期に伴うはずの社会保障制度の整備が長期にわたって不完全であったために、労働者や国民は多数の問題に直面してきました。
 モンゴル労働組合連合はこのような困難な事態を深刻に受け止め、加盟した数百万人の組合員の運動をもとに、国際自由労連やJILAFを初めとする外国労使機関の援助や支援を受けてさまざまな運動を展開してきました。中でも我々の組合活動の成果を最も明確に位置づけるできごとは、我々のイニシアティブで新しい労働法が国会で承認され、1990年7月より適用されていることです。新しい労働法は以前使われていた法律制度に比べ、幾つかの点で原則的に大きく違っています。

新労働法の特徴

 第1に、以前の法律は、労働契約の適用によって労働の基本権利を保障することに関して、個別に労働関係を調整していましたが、新しい法律では原則的に改正され、国民の労働基本権利が団体交渉や団体協約の適用によって保障されることになりました。
 第2に、新しい法律では、労働者の働く権利を保障する意味で、労働者を代弁し、彼らの利益を保障するための団体や機関の労働関係への参加範囲、言い換えれば活動範囲を明確に、かつ詳細に規定しました。例えば、新しい法律の中では、法律により定められた労働者の権利基準より劣るような内容及び労働条件で締結された労働契約及び労働協約の項目は無条件で無効とするなどの明確な内容が含まれています。
 第3に、団体交渉、労働条件、労働安全衛生、労働争議の際の調整制度などに関して、以前の法律の条例では不明確な点が多数ありましたが、新法律ではそれらが改善され、それぞれ独立した条目規定がつくられて、法的3関係法が整備されました。
 第4に、新法律には、労働契約の独特の形であるコントラクトが加えられました。これは株主が株券を所有する権利を執行するにあたって、労働者の特に優れた知識や経験などの能力を活用できる、または雇用者は国民や労働者の才能や技術を使うにあたって、彼らを雇用する形でそのような能力を使うことができるという法的な環境が整備されたということです。
 第5に、1997年の法令では労働条件に関する問題は労働保障という面で調整されていましたが、新法律では、労働条件の最低基準という面が重視され、職業現場における適切な労働条件の基準が明確に定義、規定されました。
 第6に、労働法制としての内容や効力範囲が拡大しました。以前の法律は10部96条からなっていましたが、新法律は15部142条になりました。新法律は労働関係における政府の方針や政策及び法的調整制度を多様化させたものになりました。
 第7に、古い法律には、固有名詞や用語・単語の説明がほとんどありませんでしたが、新法律では法律の施行過程での用語の見解を統一、及び簡素化するために、幾つかの説明(例えば、労働者、雇用者などについて)が備考条目として付け加えられました。
 最後に、8番目の特徴になりますが、古い法律では労働法に違反した使用者の責任の問い方に関して、法的に調整するための条目がほとんどなかったが、新法律では、もし法律違反が刑事責任を負わせるまでに至らない場合でも、違反者に対して業務責任を負わせ、それぞれ課せられる罰則についても各条目ごとに規定ができました。

活動の成果

 このようにしてモンゴルで労働関係に関する法律が制定されたのは、市場経済体制における労働関係を法的に調整したという意味で重要なことであり、現在、この法律の適用・施行を推進し、監査・監督することは政府や経営者、労働組合にとって重要な課題です。
 最近では、モンゴルの労働組合連合の活発な運動展開の結果、1999年12月にモンゴル内閣総理大臣から全国の行政機関に対して、新労働法の適用を推進し、その状況を監督・監査するための条例が通達されました。これには、各行政に対して労働法の適用や施行を推進することを指導し、労働者からの法的相談に応じることや、非政府機関に法律の報告・宣伝を委託する、そのための財源を毎年の予算内に計画的に取り入れるなどについて指導されています。これはモンゴルの政府が労働組合の社会的活動を指示した内容であり、大いに評価できることだと思います。