2010年 モルドバの労働事情

2010年12月3日 講演録

モルドバ労働組合連盟(CNSM)
ヴィクトル タルマチ(Mr.Victor Talmaci)

建設・建材関連産業労働組合連合(SINDICONS)
委員長兼CNSM執行委員

1.モルドバの労働情勢(全般)

 新自由主義やグローバル化モデルに追随したことにより、多くの国々は市場を最大利益抽出対象に変えようとする大企業の独裁下におかれた。私達は世界で起こっているプロセスから孤立して危機の帰結を回避できるとは思っていない。
 労組とともに、モルドバ政府は労働市場調整に必要な措置をとったが、絶え間ない政治危機のためそれらの措置は効果がなく、経済の減退傾向は克服できず、実質経済分野では失業率と未払い賃金が増えた。政府は、IMFの支援を受けるため、金融財政政策を厳しくせざるを得なかった。
 2009年末には、失業率が7.7%に達した。夏は失業率がわずかに下がるが、年末に向けて上がる。モルドバ労組は、隠れ失業に特に注目している。これらの問題への国の注目度が増している中で、使用者は労働者に無給の強制休暇をとらせて労働時間を水増ししている。露骨に大量解雇に踏み切る使用者もいる。

2. 労働組合が直面する課題

 モルドバの労働組合が抱えている最大の課題は、雇用確保、組織率向上、そして賃上げである。
 労働組合のない企業においては、労働者は何の契約も使用者と交わさず、契約書を取り交わしたとしても、そこには賃金や労働条件に関する規定がない。
労働者の金銭的社会的権利を保護する法的メカニズム作りも、課題である。多くの企業で賃金が引き下げられた背景には、操業停止、不完全操業、使用者都合の休暇、奨励及び補償手当の減額が存在する。
 モルドバには必要最低生活費法がなく、統計上では必要最低生活費以下の賃金しか受け取っていない労働者が約31%いる。世界の多くの国で取り入れられている累進課税と必要最低生活費を下回る賃金労働者を非課税とする制度の導入も、労組の課題の一つとなっている。

3.課題解決に向けた取組

 建設・農業部門などの労組は、三者委員会の枠内で、社会分野や人材育成及び技能向上、安全衛生、安全設備、労組組合員の健康増進などの問題に関する部門委員会を設立すべく、使用者と交渉している。
 賃金について、深刻な影響を受けているのが貧困層である点を考慮し、最低賃金額引き上げに加えて最低限必要な商品やサービスの値上げ抑制に重点を置いて活動している。
モルドバ労組は以下の法規の草案策定及び検討に参加した:

  • 労働法改正に関する二法案
  • 住宅法案
  • 建設労働者社会信用金庫法案
  • 食事クーポン法案
  • 労働賃金に関する複数の法律改正法案
  • 労働の安全衛生法案
  • 労働移動法案
  • 一時的労働不能に対する補償金及びその他社会保障手当法、並びに国家社会保険年金法の改正法案
 もう一つ早急に解決すべき重要な問題は、集団及び個人の労働紛争の解決を迅速化するための労働裁判所設立である。

4.多国籍企業の状況

 最近モルドバ共和国では、他のCIS諸国と同様、多国籍企業が出現した。それら企業は、現地国の現行労働諸法に基づき、企業を設立し活動を発展させている。これら企業の使用者は常に限界まで人員削減するため様々な措置をとり、同時に労働基準を無視した。このような状況により個々の労働者の作業量が超過となり、労災件数が増えた。
 ある企業では、従業員を退職させ、同時にその企業の下請けとして新設された企業に再就職するよう強制する状況が起こった。低賃金で補助的部門を新会社にアウトソーシングしている。
 企業労組は、労組連盟“シンディコンス”とともに、こうした企業の行動を阻止すべく、地域や政府レベルで具体的な行動を起こしている。
 モルドバ共和国の法律では、労組組合員が職業上の諸権利を擁護するためストに参加することを禁じている。このため、集団労使紛争は起こっていないが、様々な問題で従業員と使用者間の意見の不一致が生じている。