2010年 グルジアの労働事情

2010年12月3日 講演録

グルジア労働組合総連合(GTUC)
アナ ゴガヴァ(Ms. Ana Gogava)

国際広報部部長

マグダナ マルアシェビリ(Ms. Magdana Maruashvili)
付属研修センター プログラムコーディネーター兼GTUC組織専門担当

 

1.グルジアの労働情勢(全般)

 グルジアを含む多くの国々は、今なおグローバルな経済危機の直接の結果に苦しんでおり、社会的影響はまだ徐々に表れ始めたばかりだ。失業率上昇、不完全操業、賃金引き下げが更なる貧困を生み、予測ではこの状況は2011年末まで続くと予測されている。
 グルジア国家統計局の最新データによれば、労働力人口約200万人のうち約58万人が雇用労働者で残りは自営業者である。公式データによれば、グルジアにおける失業率は17%にすぎないが、実際の状況ははるかに深刻で、失業者数は公式データの3~4倍である。国内の貧困層は100万人を超える。特に失業率が高いのは若者である。全部門で若者が必要とされているが、3年以上の職務経験を条件にしており、殆どの場合、若者にはそのような経験がないため問題になっている。雇用分野の状況は、過去4年間、全体として改善していない。グルジア国立統計局の公式データでさえ、過去4年間で失業率は上がっている。このような状況下、自営業者数は全就業者の63%である。

2.労働組合が直面する課題

 グルジア労組が抱える最大の課題は、2006年に、グルジア政府が労組の参加なしに採択した差別的な労働法である。一例を挙げると、グルジア労働法第537条d項は、使用者がいつでも、予告も理由説明もなく、いかなる労働者をも解雇しうると規定している。この条項は主に労組指導者を解雇する目的で利用されている。これは、労働者の権利を大幅に侵害するもので、この法律に基づき労働法規の完全な規制緩和が実施された。
 新労働法採択とともに、「雇用法」「労働協約及び合意法」「集団労働紛争調整法」などが撤廃された。また国家雇用局、労働監督所、失業手当も廃止された。これにより、労組の団体交渉権を含む労働者の権利の集団的擁護の可能性が大幅に制限された。
 政府はこの新労働法が労働市場の状況改善につながり、新たな雇用が創出されると期待した。しかし、状況は改善せず、失業率は下がらなかった。新労働法は、グルジアの労組との協議なしに採択されたが、多くの条項がILOの基本条約の規定やグルジア議会が批准したヨーロッパ社会憲章の条項に違反している。
 グルジア労組同盟が日常的に直面している問題は数多いが、現行労働法のもとでは、それらの問題を解決するのは非常に困難だ。

3.課題解決に向けた取組

 GTUCは希望を失うことなく、この差別的な労働法改正を目指して活動している。同盟はILOに多数の陳情書を提出し、ILOから批判的決議を数回受けた。ILOはそれらの決議において、グルジア政府に労働法の即時改正を求めた。GTUCは、グルジア議会に15万人以上の市民の署名を添えた法改正案を一度ならず提出した。しかし残念ながら、グルジア政府はこれまでそれらのイニシアチブや提案を全く検討していない。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 2008年11月、GTUCは、グルジア政府、グルジア使用者協会との三者合意書に調印した。この合意書は、国の労働諸問題について三者が協力するというものだ。2009年11月12日、社会的パートナーシップ委員会が設立された。この委員会には、グルジアの労組や政府、使用者協会の代表が参加した。この委員会の主目的は、あらゆる労使紛争あるいは問題の解決である。委員会は、3カ月に一度招集され、グルジア労働法の改正作業を行っている。

5.多国籍企業の状況

 現在グルジアでは、多国籍企業が増えている。もちろん、それらの企業の日々の活動には多くの困難があり、労使紛争も起こっている。最近の例を挙げると、インドの建材製造企業LTD “Geostec”社で起きた労使紛争の原因は、インドから来た労働者よりも地元採用の労働者の労働契約条件がはるかに悪かったことだ。GTUCはこの紛争調停に積極的に乗り出し、工場幹部との交渉が現在まで続いている。