2015年 ベラルーシの労働事情

2015年7月10日 講演録

ベラルーシ民主労働組合会議(BKDP)
マクシム パズニヤコフ
リザベータ メロリャック

 

【労働者の9割が不安定雇用など課題も多いが、労働基本権の回復が必要】

 ベラルーシ民主労働組合会議(BKDP)は、2003年からITUCに加盟しており、ITUCの汎欧州地域評議会(PERC)にも加盟している。また、BKDPは、ロシア独立労働組合(FNPR/FITUR)、ロシア労働総連盟(CLR)、ウクライナ労働組合連盟(FTUU)、ウクライナ自由労働組合総連盟(KVPU)、グルジア労働組合総連合、アゼルバイジャン労働組合連盟(AHIK/ATUC)、カザフスタン自由労働組合総連盟、モルドゥバ労働組合連盟と協力関係を保っている。
 ベラルーシの経済は、ロシア経済の影響を受け、実質GDPの伸び率が、2013年が0.9%、2014年が1.4%、2015年の見通しが1.8%となっている。物価上昇率は、2013年が116.47%、2014年は116%、2015年の見通しは約105%となっている。
 最低賃金は、2013年が162.7ドル(約1万9638円)、2014年は174.3ドル(約2万1038円)、2015年は政府の見通しとしては、176.4ドル(約2万1291円)になる予定である。
 労働時間は、1日8時間、週40時間となっており、時間外労働は、1日4時間まで、週10時間まで、1年間で180時間以下と厳しく規制されている。
 ベラルーシでは、労働者の90%以上が短期雇用契約に基づく不安定雇用者である。
 ベラルーシ労働組合連盟(FTB)が発表した統計によると、ベラルーシ国民のほとんどの労働者が有期契約で仕事をしている。有期契約労働者の35%が3~5年の雇用契約、31%が1~3年、30%が1年未満の雇用契約となっている。
 インフォーマル労働者に関する公式なデータはないが、実際にはインフォーマルセクターで働く労働者の問題があり、政府は、2015年に採択された『法令第3号』で解決しようと考えている。この法令は、大統領令で正規労働の流れに逆らうような内容となっている。大統領の一存で決まるこのような法令は強い拘束力を持ち、労働組合や労働者の権利を侵害する内容となっている。木材加工の労働組合に対する特別な法律が制定され、その内容は、国家機関の許可なしでは解雇(発言のママ)できないことになっているが、これは強制労働を導入したようなものである。
 ベラルーシは、ILOに対して労働組合の権利侵害について何度も申請してきた。ILOの会議では、ほぼ毎年ベラルーシの労働問題に関する問題が取り上げられている。2000年以降の15年間、この問題はILOで取り上げられ勧告が出されているが、労働事情は一向に改善されず、かえって悪化している。
 我々ナショナルセンターの主要課題は、①全国の組織や独立労働組合運動の全面的な強化・発展、②独立労働組合の運動の影響力を社会の中において強化し、権威を高めていくこと、③独立労働組合員および全ての労働者の権利・利益を守ること――などである。
 しかし、独立労働組合の活動には大きな障害がある。団体交渉をする権利はあり、実際に交渉に参加しているが、経営側は我々との交渉を嫌がるし、労働協約を結びたくないためさまざま障害事項をつくり邪魔をする。さらには、御用組合を利用し、労働協約が結べないように画策をする。我々の独立系ナショナルセンター傘下の企業と労働協約を結んでいるというのは、2社しかない。ほかの労働組合では、労働協約が結ばれていないか、または、既に御用組合との間に結ばれた労働協約に、追加条項として我々の労働組合も加わっているという形である。
 最近、石油化学産業部門で、賃金体系に関する労働協約が結ばれたが、それも中心になったのは御用組合である。BKDPは最初から最後まで、交渉に加われたわけではなく、交渉からはずされた時期もあった。ただし、BKDPは国レベルでは、三者合意の基本合意書の調印をする三者のうちの一つとなっている。
 デモ、スト、集会に関しては集団行動法があり、許可をとらないとできないことになっているが、過去5年許可が出ないため何もできていない。メーデーは、ベラルーシでは国によって「労働の日」という祝日にされ、単に仕事が休みで楽しく過ごす日になってしまっている。
 ストに関しては、現行のベラルーシ労働法では実質的に実行不可能である。ストを行うためには、まず労働争議であるという事実関係を、政府が認める必要がある。争議の事実関係を経営側・行政が認めたとしても、ストを実行するためには、2カ月間の和解期間を経る必要がある。この間、第三者による和解の道を探ることとなる。2カ月たっても和解に至らなかったときには、スト権を行使してもいいということに理論的はなっている。しかし、相当多くの除外リストがあり、多くの職種、部門でストが禁止されている。
 また、仮に賃金の遅配などに怒った労働者の偶発的な集団行動によって、ラインが止まった場合でも、労働組合がそれを主導したと見なされれば、労働組合の登録が抹消されてしまう。従って、実際には実力行使に入れないのが実態である。
 国民は、政権と警察を恐れ何もできない。ベラルーシは、2011年に200%の平価切り下げ、つまり貨幣の価値を暴落させた結果、物価の暴騰で賃金の価値は大幅に下がってしまった。そこで、一般市民は広場に出て、賃金が足らない、お金がないということを訴えるために手をたたいた。集団で集会やデモができないので、単に広場で手をたたいて政府に意思表示をしたが、政府、民警が制服を脱いで一般人の恰好をして出てきて、広場いる人たちを捕まえ、ナンバーのない車に乗せて連れ去った。結局、裁判が行われ出された判決は、10日~15日間の拘禁と罰金であった。
 このような厳しい状況の中で、我々BKDPは労働運動の継続をしつつ、労働者の権利・利益を守るために闘っていく。BKDPの第9回大会で次の決議を行った。第1点目、ベラルーシにおける労働組合及び労働者の権利侵害について。第2点目、労働組合の連帯と団結について。第3点目、国の労働者が置かれている社会・経済状況についてである。
 さらに、我々の活動家及び組合の主要課題として、全国の組織や独立労働組合運動の全面的な強化をはかり、発展させること、独立労働組合の運動の影響力を社会の中に浸透させ、その権威(ステータス)を高めていく。そして、独立労働組合員及びそのほか全ての労働者の権利・利益をしっかり守っていくということを確認した。
 また、政府に対して以下のことを要求していくこととした。
 国内の労働者や労働組合の権利を回復させる。労働組合の設立や活動に対して、国からの許可制を廃止すること、BKDPをきちんと登録すること、BKDP加盟の企業で起こっている組合員に対する差別、圧力、迫害、制裁、解雇などに対して即時に適切な措置をとること。1999年7月31日付の法令第29号「労使関係改善、労働および執行者規律強化の追加的措置について」の即時撤廃などである。

*1ドル=120.70円(2015年10月27日現在)