1997年 カメルーンの労働事情

1997年7月11日 講演録

ペウェッシ・N・C・パトリック氏
カメルーン労働組合連盟(CSTC) 副会長

 

カメルーンの概況

 カメルーン共和国は1884年にドイツによって支配下に置かれました。そして、1914年から1918年までの第1次世界大戦の結果、ドイツが敗北しまして、その後、カメルーン共和国は国際連盟の保護下に置かれることになりました。そして、その結果、カメルーン共和国は2つに分断されることになりました。1つの部分はイギリス、そしてもう1つの部分はフランスが支配することになりましたけれども、フランスがより重要な、大きな部分を支配することになりました。
 カメルーンの土地の広さといいますのは47万5,000平方キロメートル、人口は1,250万人です。経済成長率は3.2%です。中央アフリカに位置しております。
 フランス語圏の部分に関しましては、1960年にフランスによって独立が認められました。そして、英語圏とフランス語圏の統合が実現したのは1961年のことです。このように植民地だったという歴史を持っているために、カメルーン共和国の中には2つの違った文化が存在しております。それからまた、言語も2つの違った言葉を話しております。
 人口の10%の人達は神を全く信じておりません。36%はキリスト教徒です。40%がイスラム教徒です。そして、14%が伝統的な宗教を信じております。

労働運動の歴史

 カメルーン共和国においては労働組合は1947年頃から発展を始めました。そして、労働組合発足の当初といいますのは、民族運動の1つの道具として、民族主義運動闘士の人達に使われてしまうということがありました。その当時、民族運動を行っていた闘士の人達というのは、カメルーン全土を植民地支配から全面的に解放しようということを目的として掲げていたわけなんですけれども、組合運動はそういった民族運動の闘士の人達の踏み台として使われてしまいました。
 1966年、当時は様々な政党が存在していましたが、そういった政党が全てまとまり、1つの政党に統合されました。それに伴いまして、それまでは幾つかの労働組合のナショナルセンターが混在していましたが、それがやはり政治の流れに伴いまして、1つに統合せざるを得なくなりました。
 政府は組合の関係者に対して、組合も1つにまとまって、一党独裁の政党と協力するようにと要請をいたしました。そして、政府が当時言っておりましたのは、一党独裁のもとであるとはいえ、国民によって選挙で選出された政府なのであるから、全ての国民を代表する権利はこのたった1つの政党、当時社会主義の原理を主張しておりましたけれども、この社会主義に基づく単一の政党が全ての国民を代表しているのだということを言っておりました。ですから、労働組合は政府からは独立した組織であるということを思ってもらっては困るというようなことを、政府は考えておりました。労働組合も政府からの指示を仰ぎ、唯一の政党と協力していくべきだということを言っておりました。
 こういう状況になってしまいましたので、カメルーンの労働組合は、国際的な労働組合の組織との関係を絶たざるを得ないことになってしまいました。結果として、1970年代の初頭から1990年に複数政党制が導入されるまで、カメルーンの組合運動は孤立してしまいました。
 現在では、複数政党制がとられており、170にも及ぶ政党が登録されています。こんなにたくさんの政党が林立している国というのは、世界広しといえども、カメルーン一国だけではないでしようか。
 1992年から93年にかけまして、カメルーン労働組合連盟は現在の与党から自由になろうという努力をいたしました。現在与党になっている政党といいますのは、今まで一党独裁をしいてきた政党の延長線上にあります。ところが、こういった試みは政府からの非常に激しい反対に遭うことになりました。その結果として、残念ながら、選挙によって選出されておりました書記長が一方的に解任されてしまうことになりました。解任したのは、労働組合連盟の会長でありました。この会長は、与党の中央委員会のメンバーとして出たり入ったりしている人物でしたので、選出されておりました書記長を一方的に解任するという行動に出たわけです。
 1995年12月に緊急会議を招集いたしました。そして、その場で書記長を再任し、そしてまた、カメルーン労働組合連盟としては非政治的な立場をとるという決議を採択いたしました。しかし、非政治的な立場をとるとはいいましても、やはり労働者の利益を考慮に入れた政策を実施していく政党に関しては重要視していくという条件つきではありますが、非政治的な立場を明確にいたしました。
 今カメルーン労働組合連盟が一番重要視している課題といいますのは、労働組合組織の再編成です。現在のところ、それぞれの産業の中の組合組織が分断され、区分された形になっているわけですが、これをそれぞれの産業セクター別に再編成していこうとしております。産業の中でも区分されておりますけれども、その区分を取り払って、産業セクターに基づいた産別組織をつくっていこうとしております。

政治・社会的問題と課題

 次に、政治的あるいは社会的な問題ですが、初めに社会的な問題といたしましては、現在のところ構造調整が行われております。政府の政策として行っていますが、構造調整の結果が非常にひどいものとなっております。労働者及び一般国民の生活が非常に苦しくなってきております。これはすべて構造調整計画のせいだと私は思っております。そして、こういった困難な状況が、政府によるひどい経済政策の結果として、ますます悪化しております。1984年に賃金が凍結されてから、今までにさらに60%にも及ぶ賃金、給与の切り下げがございました。そして、残念ながらこれに追い打ちをかけるように、1994年に50%近い通貨の切り下げが行われました。
 カメルーンでは、この構造調整計画によって、公務員の数が激減しております。数年前には公務員の総数が27万人前後とみられておりましたけれども、現在のところ、公務員総数が17万人まで激減しております。カメルーンの労働法によりますと、公務員は労働法の適用除外となっております。適用を除外されているということは、公務員は組合に参加することができないわけです。ただし、何らかの職業協会のようなものは設立してよいということになっております。
 構造調整計画の結果、民間部門での労働人口も非常に減ってきております。民間部門での雇用労働者は1980年代初頭には36万人程度と見られておりましたけれども、現在ではこれが15万人にまで激減しております。そして、民間部門、公共部門、両方の労働総人口は、現在のところ32万人程度になっております。先ほど申し上げましたが、カメルーンの総人口は1,250万人です。その中で、たったの32万人しか働いていないということは、非常に失業率が高いということがおわかりいただけるのではないでしょうか。
 この結果として、外国の投資を引きつけるという努力がなされております。その一環として、労働法が緩和されております。また、雇用条件に関する交渉も許されておりますし、最低賃金も設定されました。これは2万3,514フランスセーファー、日本円に換算いたしますと、月額当たり3,919円ぐらいになるかと思います。
 週当たりの労働時間ですけれども、公共部門あるいは一般の産業部門、そして金融機関などは週40時間労働時間制がしかれております。農業部門では週48時間労働になっております。年次有給休暇の日数ですけれども、年間に18日間といたしますと、月当たり1.5日となっております。今までご説明いたしましたとおり、労働法制をもっと柔軟にしていくこと、あるいは自由な貿易ゾーンをつくることによって、外国からの投資を引きつけ、さらには雇用機会を増やしていこうという努力がなされております。
 残念ながら、こうした努力は今までほとんど実を結んでいないようです。外国の投資を引きつけることがほとんどできておりません。といいますのは、やはり税金が高いこと、司法制度が独立していないこと、非民主的で、政治的に非常に不安定な側面があるためです。それから汚職が蔓延して、ほとんど制度化してしまっているということ、また政府の規制といった理由によって、外国の投資を引きつけ、雇用の機会を増やそうという努力は、今までのところ、実を結んでおりません。
 私たちは非常に多くの制約を受けているわけです。ですから、カメルーン労働組合連盟、そしてその構成組織は今泥沼の中にいると言ってもよいような状況です。こうした制約のために、労働者の社会的、経済的な地位を上げていくための組合としての一貫した政策をとることができないでおります。
 カメルーンは非常に豊かな人的資源、そして天然資源に恵まれており、石油も豊富です。そしてまた、2億ヘクタールにも及ぶ赤道直下の海が全く手つかずのまま、開発をされないまま残っております。そして、様々な一次産品を世界に向けて輸出しております。例えば木材、ココア、コーヒー、綿、ゴム、お茶、バナナ、ボーキサイト、こういった一次産品を輸出しております。ですから、食料の自給は既に完全に到達しているわけです。食料が自給できている今となっては、やはり一番大きな問題というのは、与党による経済運営のまずさではないでしょうか。
 現在のところ、失業率は60%にも達しております。その結果として、犯罪が非常に多く、国の全土に不安感が蔓延しております。ですから、カメルーン労働組合連盟には、現在のところ16の組織がありますけれども、その組織の構造改革を行っております。そして、国の中には様々な困難な状況があるわけですけれども、こうした困難な状況に直面しながらも、16の全組織が組合としての政策を一貫して実施していこうと努力しております。
  先ほども申し上げましたけれども、カメルーン労働組合連盟は、非政治的な立場をとっておりまして、与党にくみすることはないという決定をしております。私たちがそうした立場をとっているために、与党・政府はもう一つのナショナルセンターを設立することになりました。これはUSLCと呼ばれております。
  カメルーンの労働組合では、今チェックオフ制度をしいております。しかし、ほとんどの民間部門の企業が政府の所有となっております。政府がこういった民間事業をしているわけです。ですから、こういった企業の役員のトップに据えられるのは、政治的な理由で任命されてくる役員がほとんどです。本来ならばチェックオフ制度によって、カメルーン労働組合連盟に入ってくるべき資金が、政府のほうに流れていってしまうという問題が起こってきております。こうした事情のために、カメルーン労働組合連盟は資金不足となっておりまして、残念ながら、効果的なアクションをとることができずにおります。
 今後、こうした問題を解決していかなければならないわけですけれども、その中で、労働組合がどういう役割を果たせるのかということを、今回お招きいただきましたJILAFのプログラムを通じて、学んでいきたいと思います。日本の組合がどのように機能しているのかを学ぶことによって、その知識を我が国の組合運動にも役立てていきたいと思っております。日本で学んだことは、国に帰りましてから、政治的、経済的に改善していく上で、非常に役に立つものと思っております。

CSTCについて

 カメルーン労働組合連盟ですけれども、地域的にはOTACと関係を持っております。それから大陸の中では、OATUと関係を持っております。そして国際的にはICFTUと関係を持っております。
 先ほど申しましたように、カメルーンには2つのナショナルセンターがあります。CSTCは独立の組織です。そしてもう一つのほうはUSLCといいますけれども、これは政府がつくったもので、与党との関連を持っております。