2002年 南アフリカの労働事情

2002年6月19日 講演録

南アフリカ労働組合会議(COSATU)
ヌタビセングラディスモレレキ

南アフリカ全国金属労働組合地域ジェンダーコーディネーター

 

国内の状況

 南アフリカの労働運動を取り巻く政治・経済・社会的な状況ですが、非常に大きな敵がいます。それはグローバリゼーションという敵です。また、リストラクチャリング、民営化、あるいはダウンスケーリング、このような要因によって、労働者は苦しんでいます。グローバル化によって労働者は搾取され、そして規制を強いられています。
 労働関係に関する法律の問題もあります。法律によって労働者が守られることが期待されているわけですが、実際は企業側はそのような法律を守っていません。能力開発、平等、労使関係などに関する法律が存在しますが、労働者は、裁判所に訴えなければならないという場合もあります。
 南アフリカが直面するもう1つの大きな危険はHIV/エイズの問題です。この問題は政治、経済、社会に大きな影響を与えています。労働者は病気が深刻化した場合に、疾病基金からの給付を請求します。この疾病給付は、プロビデント・ファンドという基金から支給されることになっているのですが、ほとんどの場合、企業は、そのお金を必要としているところに払わないという問題があります。

COSATUの活動方針

 第1点は、政府が創出しようとしているインフォーマルな仕事ではなくて、質の高い仕事の創出であります。2点目は、現在の雇用を守り、更に向上させていくことです。
 3点目は国民を基礎とした政治、民主的な政治をもう1度導入しようということです。労働者側は、政治と雇用の関係について理解を深めていくことが必要であると思います。個人的な損得という観点からではなくて、雇用と政治の関係をしっかり理解することが必要だと思います。
 次に、退職時の退職手当の引き上げにも取り組んでいます。現在、退職手当は、勤続年数1年に対して1週間分が支払われることになっていますが、これを会社の上司が悪用することがあります。したがって、これをもっと引き上げていくことに取り組んでいます。
 企業の再編成の場合には、労働者と交渉をして決めていくべきであるということです。企業がリストラクチャリングをすべて決定した後で、労働者に対して、それを伝えるのではなくて、企業がリストラをしたいと思ったときに、その交渉のテーブルに労働者側がついて交渉をする状況にしなければいけないと考えています。
 次に、南アにはSETA(セクトラル・トレーニング・オーソリティー)という訓練に関する組織がありますが、この組織を適切に利用していくことに取り組んでいます。訓練に関して幾つか法律があって、そのうちの1つが能力開発の法律です。このような法律を企業がきちんと守るようにしていかなければならないと思っています。
 COSATUは政府に対して、中小並びに零細企業、協同組合、労働者を支援しているNGOに対する資金援助を迅速に行うように働きかけています。

具体的な活動

 まず第1は、ジョブサミット・キャンペーンです。このキャンペーンにおいて労働組合は政府に労働組合の要求を伝えています。2番目は、労使関係法の見直しです。特に人員削減についての見直しに取り組んでいます。3番目が、アライアンス・サミットにおける徹底的な参加であります。アライアンス・サミットというのは三者構成の作業グループで、労働者に影響を及ぼす政府の政策を主に取り扱っております。それから最後になりますが、ソーシャル・ウェイジ、社会的賃金の改善です。政府に対して政府がその重要性について認識するよう働きかけています。このソーシャル・ウェイジは、電気、水道などの基本的なサービスを指しています。またグローバル化の影響を深刻に受けているコミュニティーに対する援助も含まれます。

南アフリカ全国労働組合会議(NACTU)
サムエルラマシャラ

専門教員労働組合執行委員

 

国内の状況

 2000年の経済成長率は3.1%に達し、1996年以来初めての高い経済成長率を記録しました。第3次産業部門が特に成長し、それが高い経済成長率に寄与しました。ヨーロッパ諸国は、引き続き我が国の主要貿易相手国です。全輸出の30%、輸入の43%はヨーロッパを相手にしたものです。消費者物価の上昇率は、2000年の4月から2001年の3月まで17.8%でした。99年から2000年までは4%の上昇でした。1995年の2月から通貨のランドが下落して、年平均7%下落しました。その間、年平均インフレ率は5%でした。
 高い経済成長率を保っていくためには、まず雇用の創出が重要です。これは多数の失業者を吸収し、労働市場への新規参入者に雇用を提供していくためにも、国内投資、そして外国からの投資を引き上げていく必要があります。GEARとは成長と雇用と再分配についての南アにおけるマクロ経済のポリシーですが、2000年までにGDPの成長率6%を達成し、40万の雇用を創出すると予測していました。しかし、2000年までに達成はできませんでした。
 また、正規および非正規の両部門での雇用は1970年代以降減少しています。南アの準備銀行の調査によると、公共部門における失業は民間部門より高いとされています。また、南アの労働市場においては、人種および性別による不平等が大きな問題になっています。また、解雇が労使紛争の一番大きな原因となっています。農村部での水道、電気、電話衛生など基本的な公共サービスが向上しているとは言っても、都市部と地方の格差は依然として歴然として存在しています。
 ヌタビセン(COSATU)が先ほどHIV/エイズの話をしましたが、世界のHIV/エイズ人口3,600万のうち13%は南アに居住していることを申し上げておきます。

NACTUの活動方針

 NACTUには開発委員会、労働市場委員会、財務委員会、貿易産業委員会の4つの委員会があります。
 開発委員会の活動の内容は、HIV/エイズ、公共交通、公的教育制度、地方自治、建設産業の再構築、貧困の撲滅、それに関するさまざまな開発とインフラ整備、そして社会保障制度の確立です。HIV/エイズに関しては、非常な勢いで蔓延しているとことが懸念されています。また、教育制度の問題では、長年に亘って教育を受ける機会が極めて不均衡であったということが問題です。また、地方自治に関しては、不動産あるいは財産に対する税金問題の法案を作成すること、あるいは国家水条例というものを作成しています。
 次に、労働市場委員会は、HIV/エイズの問題及び雇用の問題に対するグッド・プラックティスの規範作成、移民に関する白書の作成、労働法の改善、労働争議に関する法律のオーバーラッピング問題等に取り組んでおります。
 3番目の財務及び金融政策委員会は、年金の財源に関する修正案、年金基金の支払い超過問題をどうするかということに対する三者間の協議を容易にするための働きかけなどを行なっています。
 最後に貿易産業委員会ですが、南部アフリカ開発共同体貿易条約(サダック)を始めとして貿易に関する様々な問題と取り組んでいます。また、南ア全体の貿易問題に対する戦略の作成、南ア・EU間の貿易促進協力協定のアフターケア、南部アフリカ開発共同体及び貿易協定の実施、南アフリカとメルコスールの貿易協定に対する可能性を探ることです。