2011年 モロッコの労働事情

2012年2月10日 講演録

モロッコ労働組合(UMT)
Mr. ミロード・マッシード

 

1.モロッコの労働情勢

 チュニジア革命直後から他のアラブ諸国でも見られるように、モロッコにおいても大きな社会的な運動が起こっている。モロッコの人々は通りに出て、自らの社会的、経済的、政治的な権利要求を行なっている。このような中で、憲法改正のための国民投票が行われた。下院が早期改選となり、その結果イスラム政党が第1党となり、現在、政権に就いている。労働組合はイスラム政党と協議をし、政府に対してさまざまな問題の解決を要求していくことになる。
 モロッコの労働者は様々な産業で働いているが、サービス業、農業、中でも近代的大規模農業などに大多数が働いている。未組織部門に属する労働者は約64%に達し、一般的に劣悪な労働環境に置かれている。モロッコの労働者は、生活費・物価の高騰、低賃金、直接・間接税の引上げ、医療・社会保障制度(社会的保護)の不適用、適切な住環境の不足、医療費の高騰などにより、ディーセントワークや尊厳ある生活の諸条件が満たされない厳しい経済的・社会的状況下で生活している。
 モロッコ労働組合(UMT)は1955年3月20日、フランスの植民地支配からの独立に指導的役割を果たしたマハジューブ・シムティーキーによりに設立された。組合活動の特色として、第1に政府・政党からの独立、労働組合運動の統一、民主的な運営があげられる。国際関係に非常に強い関心を持っており、多くの地域・国際労働組合機関と良好な関係を有している。その主な目的は、それぞれの経験に学ぶこと、国際連帯強化、パレスチナ問題を初めとする地域の大義を有する問題に対する支援である。

2.労働組合が直面している課題

 現在、労働組合活動の自由と権利に対する明らかな侵害と、労働者の尊厳が尊重されていない。労働法に関しモロッコ憲法に個別または集団的に明らかに違反する行為がみられた。労働者の実質的な代表者による社会的対話や団体交渉の実施にむけた歴代政府の政治的意欲も欠如している。
 経済自由化の影響によって、多くの工場(企業)が閉鎖され、失業者の増大をもたらした。賃金、社会保障(社会的保護)、医療・年金制度も整備されていない。
 過度にフレキシブルな労働形態(パートタイム労働、派遣労働等)の出現により、雇用が不安定化している。

3.課題解決に向けた取り組み

 労働者に関わるこのような困難に対処するためには、まず確固たる意志が必要であり、UMTは企業別、職業別、部門別、地域別(地域別連合組織)にさまざまなプログラムを策定している。すなわち、1)組織化、組合結成強化プログラム、2)単位組合の代表(企業内の労働者の代表)、職業別に組織化された地域別連合組織の代表、全国レベルの組合代表(労働組織の全国レベルの指導部)を対象とした労働者向け労働文化研修プログラム、3)組織化、連絡協議、情報、団体交渉などの手法による労働問題解決にむけたトレーナー養成プログラム、4)公共部門において、問題を調停や審判によって解決した、5)問題解決の最終手段として、必要に応じたストライキを実施した、など。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 UMTは、国家、政党、経営者から独立した労働組合組織である。したがって、経済的・社会的問題及び権利、公正に関する合法的な要求に対する政府の対応策以外で、歴代政府を評価することはない。これは政党に従属した他の労働組合とUMTが異なる点であり、UMTがいかなる圧力にも屈せず活動を行うことができる所以である。

5.多国籍企業の状況

 モロッコにはさまざまな多国籍企業が進出し、ILO条約や労働法制を遵守する企業がある一方、それらを拒否し自由や企業内での労働組合権を侵害する企業も存在する。多くの多国籍企業との重要な諸協定の締結だけでなく、強固で発展的な関係構築の実現、団体交渉の定期開催や、労働者の権利・成果・義務を規定し、労使双方の利益となるために必要な要素(ディーセントワークの実現、生産性及び生産の質の向上による競争力の向上等)を定めた社会協約の締結などに関わり、UMTは、多国籍企業における組合活動において大きな役割を果たしてきた。
 しかし、多国籍企業においては、さまざまな問題が生じている。UMTは常に交渉、対話、協議を通じて問題解決にむけて取り組んでいく。多国籍企業の投資は国にとって非常に重要なものであり、また、国の独立にも大事なものである。