2012年 エジプトの労働事情

2013年1月25日 講演録

エジプト独立労働組合連盟(EFITU)
イサーム アブドゥル ファターハ アルナグリーディー(Mr. Essam ABD ELFATTAH EL NAGREEDY)

エジプト独立労働組合連盟(EFITU)執行委員

 

1.エジプト独立労働組合連盟(EFITU)設立の背景

 エジプトは、国際労働機関(ILO)条約第87号(結社の自由及び団体権保護)を1948年に、第98号(団結権及び団体交渉権)を1949年に批准している。エジプトにおける労働組合の結成は、1976年の法令35号によって始まる。この法令に基づき設立されたエジプト労働組合総連合(ETUF)は、その後エジプトの労働組合運動を30年間にわたって支配していくことになる。すべてのエジプトの労働者は、この組織への加入を義務づけられ、組合員数は600万人に上り、組合費は労働者の月給から徴収された。
 しかしETUFは革命の結果、法律により解散が命じられた。解散させられたETUFに変わり、新たな組織のエジプト独立労働組合連盟(EFITU)は、国際的にもエジプトの労働組合を正式に代表する組織となった。EFITUの組織運営や意思決定は、非常に民主的なプロセスで進められ、傘下にはあらゆる部門のすべての労働者が統合されている。
 EFITU設立の背景は、2009年9月3日に設立された不動産に対する税金を扱う職員の労働組合であった独立労働組合で、さまざまなデモやストライキなどの行動により、組合員に多くの恩恵をもたらした。その他にも、保険、年金などを扱う公的部門の職員労働組合、さらには教職員労働組合など、次々と独立した労働組合が誕生した。そして、2011年1月25日の革命以降、アフマド・エルバルイ博士が労働力・移民相に就任し、労働組合の自由化の方針が打ち出され、エジプトが批准しているILO条約に基づく法律に沿った形で、独立労働組合の設立が促進されてきた。
 そして革命後、国を暫定的に統治した軍の最高評議会からは、憲法補足宣言が出され、その第4条では、労働組合や団体を設立する権利が明記された。こうして、各独立労働組合の連合組織であるエジプト独立労働組合連盟(EFITU)が設立された。

2.EFITUの課題

 EFITUの目的は、非常に多岐にわたっている。最も重要なことは、労働運動の自由および意思決定における独立性である。そして、民主主義の確立をめざし、社会的公正や平等などを確保していくことによって、人権が尊重される社会をめざし、エジプト国民の期待に応えていくことである。二つ目には、労働者の権利を確保するために必要な法律の整備を政府に対して求めていくことである。組合員から組合費を徴収するために必要な法律を整えて、労働組合の財政基盤を強化し、国家を支える役割を果たしていく必要がある。三つ目には、社会経済の開発に関する計画および政策に参加していくこと。これにより、バランスのとれた社会経済の開発に有効な貢献を行なうことである。四つ目として、争議権等労働組合の正当な権利を禁止するような法律や決定を撤廃することに取り組んでいくことである。その他にもさまざまな目的があるが、こうしたことを通じて、労働者に対する差別や搾取などを排除していきたいと考えている。
 またEFITUとして、イスラエルとのいかなる関係正常化にも反対する。民族自決権のために戦う国民を支持し、自由、民主、公正を求めているパレスチナの要求を支持する。パレスチナの全領土に、エルサレムを首都とする国家を樹立する権利を全面的に支持する。

3.EFITUの組織構成

 EFITUの組織構成としては、最高機関として総会があり、その他執行評議会および執行事務局がある。執行評議会の下には、執行事務局、各組合のトップ、地方の組合連合、資金監査委員会および労組委員会がある。執行事務局は21人のメンバーから成っており、総会での意思決定の執行が委任される他、EFITUとしての日常業務を運営している。この執行事務局は、代表と副代表の他、事務局長、会計、事務局長補佐、会計補佐および10人の総合コーディネーターによって構成されている。EFITUの傘下に構成される組織は、27の産別、465の事業所組合、4つの大規模連合組織、4つの地域連合組織で、組合員数は245万人である。主な労働組合としては、パイロット労働組合、フライトアテンダント労働組合、観光業労働組合、運輸労働組合、漁師労働組合や農家連合、石油関連会社の労働組合、製糖会社労働組合、電気関連会社の労働組合などがある。
 EFITUは、国際労働機関(ILO)を始めとする国際的な労働組合連合との関係を有して、エジプトにおける労働運動をリードしている。エネルギー部門、公共部門、観光部門など、重要な国際連合組織にも加盟している。

4.その他のEFITUの活動

 EFITUは、エジプトの労働者に関するさまざまな問題を扱っており、政治的な理由による解雇、追放、拘留、嫌がらせなどの問題も扱っている。その具体例として、アレキサンドリアという町のコンテナ労働者、スエズのアイン・サクナ港やドバイ港の労働者に対するさまざまな不当な扱いの事例が報告されている。このような問題に対して、労働組合として介入を行なってきた。その他の例としては、輸入砂糖に対して製糖会社の労働組合が中心となって反対運動を行なった。海外から流入する砂糖の価格が低く、国内の製糖関連産業を脅かすためである。
 EFITUは、労働組合活動の自由に関する法律の制定に向けても取り組みを行なっている。また、先般実施された革命後の新憲法草案の国民投票では、EFITUは反対の姿勢を示した。このように、労働者の労働環境の改善や権利を保護し、これからも労働者生活の向上を図っていく。