2015年 ケニアの労働事情

2015年10月23日 講演録

ケニア労働組合中央組織(COTU)
ケニアプランテーション農業労働組合
メシャク・ムセル・キサ

組織局長

 

1.ケニアの労働情勢(全般)

  2013年 2014年 2015年(見通し)
実質GDP(%) 5.7% 5.8% 6.9%
物価上昇率(%) 4.14% 6.86% 6.87%
最低賃金 11,995 KSh
(ケニア・シリング)
13,674 KSh
(ケニア・シリング)
15,537 KSh
(ケニア・シリング)
労使紛争件数 420件 370件 256件
法定労働時間 8時間/日 48時間/週 時間外/割増率
1.15倍/時間
休日/割増率
2倍/時間

 ケニアの国内総生産(GDP)は、回復の兆しが見えるものの、インフレ率も非常に高い。株式取引所において、ドルでの取り引きが停止していることも経済に打撃を与えている。
 現在、物価上昇率が高い中で、政府は賃金を少しでも引き上げる政策を進めており、最低賃金が1万5537シリング(約152.3ドル=約1万8381円)となっている。
 ケニアでは、2007年に労働法の見直しが行われた。これにより、植民地時代から受け継がれた『雇用法』が改正され、紛争が起きたときに、労働組合だけでなく、個人でも裁判所に訴えることができるようになった。その結果、個別紛争件数も含む労使紛争の件数が増加したが、この2~3年は増加に歯止めがかかっている。
 非正規労働者の増大は、ケニアでも非常に大きな問題となっている。ケニアは、労働人口に占めるインフォーマル経済従事者の割合がアフリカの中で一番高く、77.9%となっている。ケニアの労働力人口の、わずか2.4%しかフォーマル経済に従事していない。インフォーマル経済が拡大した原因は、1980年代に世界銀行が打ち出した構造調整政策にある。世界銀行からの貸し出しを受けるには、構造調整の導入が必要になり、労働者の解雇が増加したためである。労働者解雇の一番深刻な影響を受けたのは公務部門であり、契約労働、下請け労働、季節労働、臨時労働など不安定な非正規労働が増加した。

2.労働組合の直面する課題

 インフォーマルセクターの組織化が、最大の課題となっている。そもそもインフォーマルセクターの組織化は困難な上に、インフォーマルに従事する労働者が急増したことで、さらに組織化が困難になっている。
 また、労働組合による組合員教育が不十分であることも課題である。財源が不足し、系統立てた教育ができていない。また、熟練したオルガナイザーも不足している。
 労働組合にとって、反労働組合的使用者が非常に多いことも問題である。企業経営者のほとんどが元国会議員出身や現職の議員で、その立場を利用して自分たちに有利な法律改正を行っており、その影響を一番受けるのは労働者である。

3.課題解決への取り組み

 これに対して、我々は現行組合員の組織維持を優先しながら、現在、非正規労働者も労働協約の適用対象とする条項を導入する運動に力を入れている。季節労働者に関しても、組織化によって、雇用期間が最低3カ月の労働者は労働協約の対象とし、保護されるようにしている。
 インフォーマルセクターの労働者に対しては、いきなり労働組合を設立するのではなく、アソシエーション(協会)という名称で加入を呼びかけている。まず、労働者の協会づくりから着手し始めている。
 反労働組合的使用者を労働裁判所に訴えたり、労働組合に友好的な組織と連携をとりオルガナイザー育成研修を実施している。COTU組織局長として、生産性向上への取り組み、交渉の進め方、効果的キャンペーンの実施方法などの技能を身につけたオルガナイザーの育成に努めたい。ケニアにも生産性本部があるので、生産性を高め、生産性をいかに測定し、その成果を労働者に分配するかという活動を普及させていきたい。

*1ドル=120.69円(2015年10月23日現在)