2003年 エリトリアの労働事情

2003年10月29日 講演録

エリトリア全国労働組合同盟(NCEW)
アマニュエル ネガシ

NCEW 調査・訓練・国際関係局長

 

エリトリアから初招聘

 エリトリアからは今回が初めての招待になりました。3年前にエリトリア全国労働組合同盟(NCEW)はICFTUに加盟しました。ICFTUアフリカ地域組織(AFRO)のカイレンボ書記長から、NCEWもJILAFの招聘プログラムに載せてほしいという要請がなされ、その要請に応えて今回初めて招聘されることになったと聞いております。

国内の状況

 まず最初に、政治状況について報告します。言うまでもありませんが、政治状況はエリトリアの労働組合にとっても組合員にとっても大きな影響を持っています。
エリトリアは30年間のエチオピアとの戦争を経て、1991年に独立しました。そして2年後の1993年に国連の監督のもとに国民投票が行われ、その結果、正式に独立国となりました。
エリトリアの最高統治機関は国民議会であります。国民議会は、それぞれの地域の評議会から選出された代表、及び民主主義と正義のための人民前線と言われる、いわゆるプラットホームという名称の団体から選出された代表から構成されています。我が国には政党はなく、プラットホームが政党に代わる団体であります。この国民議会によりまして、大統領が選出されます。選出された大統領が、統治機関(閣僚)を任命します。任命された統治機関(閣僚)は国民議会による承認を受けなければなりません。統治期間とは別に、独立した司法機関と、地方行政機関があります。
エリトリアは1991年から1998年の7年間、平和を享受しておりました。しかし、1998年にまたもやエチオピアとの間で戦争が勃発しました。国境を巡る紛争であります。しかし、この国境紛争は2000年の12月にアルジェで、和平協定が締結され終了いたしました。国連の平和維持軍が現在エリトリアとエチオピアの国境に駐留しています。
平和と紛争解決におきまして、労働組合は一定の役割を果たしました。私の所属しますエリトリア全国労働組合同盟(NCEW)およびエチオピア労働組合総連合はICFTU-AFROの後援のもとに第三国において2001年から4回会合を持ち、和解と関係正常化に向けて努力をして参りました。
エリトリアは貧しい国であります。一人当たりの推定年間GNPは、アメリカドルにして200ドルと言われております。生活水準は基本的な社会、経済及び人口動態的な指標から見て非常に低く、また所得も非常に低い水中東・アフリカ北部・パキスタンの労働事情3準であります。保健、医療、教育等の基本的な社会保障制度が不足しています。エリトリアの開発戦略の中心的な目標は、経済成長と貧困の軽減であります。
このような状況に陥った大きな理由は、1991年に戦争が終わったときに、エリトリアは長期に亘った戦争の結果として、完全に破壊された経済を引き継がなければならなかったからです。そこで、政府は早急に経済を発展させるためのさまざまな政策や投資を行ってまいりました。その結果として、1992年から1997年までは、年平均成長率7%という高い経済成長を保つことができました。
エリトリアの経済発展の可能性はさまざまな部門で存在します。1つは牧畜部門です。牧畜によって経済の成長の発展の見通しがあります。それから漁業、観光、縫業、製造業等が考えられます。農業部門の比重は重く、エリトリア人口の約70%が農業に従事しています。
また、観光も非常に可能性が高い産業であります。紅海に沿って約1,000キロメートルの海岸線を抱えています。

NCEWの活動方針

 次に、エリトリア全国労働組合同盟(NCEW)についてお話しします。このNCEWは、エリトリアの全国的な労働組合運動そのものであります。NCEWの主な目的は、都市部においても、農村部においても強力で自立的かつ民主的な労働組合運動を確立することであります。エリトリアの労働組合運動の原点は、イタリアによる植民地時代であった1890年から1941年まで遡ることができます。しかし、実際の労働組合の結成は1948年になってからであり、最初の労働組合が工場ごとに設立されました。1991年に国が解放され、その後エリトリア労働組合運動は、労働組合の再構築と民主化に取り組んでまいりました。再構築の過程におきまして、労働組合への加盟が任意で行える制度を導入いたしました。組合員はそれぞれ単位組合レベルで自らの指導者を選挙で選出することを奨励されました。単位組合というのは、日本で言うと企業別組合に当たります。
1994年に、新しい労働組合組織のもとで第1回労働組合大会が開催されました。それぞれの単位組合で選出された代議員が、全国労組の指導部を選出いたしました。5つの産別組織が設立され、単位労組の役員が産別組合の役員を選出いたしました。労働組合を民主化的な機構にしようという取り組みは、現在も進行中です。

具体的な運動方針

 次に、NCEWが取り組んでいる問題について申し上げます。組合員の基本的な権利を守ること、組合員の積極的な組合活動への参加を促すこと、全国的な経済発展を助長すること、失業をなくすこと、また利益が公平に分配されるように闘うこと、さまざまな教育訓練計画をつくり、実施し、そして同時に労働者の権利について意識の向上を図るセミナーを開くこと、世界各国のさまざまな地域の労働組合、特に我が国が位置するアフリカ地域の他の労働組織と協力し、強力な団結の精神を打ち立てること、国際労働運動及びILOと協力し、世界平和、人権、そして平等を擁護すること、職場において、HIV/エイズに関する訓練を行い、意識向上を図ることなどが課題であります。
次はこれからの長期的なNCEWの活動目標について項目だけ申し上げます。組合員の数を増やすこと、すべての組合員を対象と4して訓練計画を実施すること、団体交渉を実施すること、エリトリアの労働法や労働安全衛生に取り組むこと、職場におけるHIV/エイズ問題に取り組むこと、女性労働者問題について取り組むこと、協調的な労使関係と三者構成制度に取り組むこと、国際労働組織及びNGOとの連携を図ること、インフォーマルセクターの組織化に取り組むこと、そして、労働者のための最低賃金や教育活動に取り組むこと、NCEWそのものの能力強化を図ることなどであります。
また、長期的に見ますと、私たちはさまざまな課題、あるいは問題を抱えております。持てる資源に限界があることも問題の一つです。具体的には、人的資源の不足、財源の不足、中小都市における訓練計画実施のための適切な施設の不足などがあります。