パキスタン労使関係・労働政策セミナー

 人口約1億9000千万人(世界第6位)を擁するパキスタンは、豊富な若年労働力を有し、経済成長の潜在力は地理的優位性も相まって高い(2014年GDP成長率4.2%、一人当たりGNIは1386ドル=約16万6735円)。その一方で、人口の約2割が貧困層(1日所得2ドル=約240円以下)であり、貧富の格差や高インフレ率が社会の不安定要素になっている他、1)政情と公共治安の安定、2)女性の権利保護と社会進出、3)汚職撲滅、4)紛争の終結(カシミール、アフガニスタン国境)、5)国内産業(農業、繊維以外)の育成、6)電力不足の解消――などの課題に直面している。加えて、労働者保護の仕組みも不在のままである。同国経済特区内では、労働者補償(労働災害)法、最低賃金令、賃金支払法などのさまざまな労働関連法規の適用が除外されており、労働者の権利蹂躙などが国際的にみても大きな課題となっている。
 かかる状況下において、国際労働財団(JILAF)は、パキスタン労働者連盟(PWF)との共催で、「グローバル化と健全な労使関係の構築」と題する労使関係・労働政策セミナーを9月6日~7日、イスラマバードで開催した。セミナーには、PWF幹部をはじめ、カーン国家労使関係委員会(NIRC)委員長、シェイク人材開発省事務次官補、ジャマル前労働省中央顧問をはじめ労働組合役員(日系企業からは4人の企業別労働組合役員)約50人が参加した。
 本セミナーでは、「戦後日本労働運動の形成と労使関係の特質」、「第18次憲法改正後の労使関係法」、「労使関係と雇用安定、労使紛争予防に向けた取り組み」、「建設的労使関係の構築と無用な労使紛争の未然防止」、「生産性向上への貢献と雇用安定」などの講義に加え、パネル討論(「老齢年金」、「労働者福祉基金」)を実施した。
 なお、会場からは、「日本的労使関係の構築こそが労使双方にとって有益」との複数意見に加え、1)連合と日本政府との関係/連合が直面する諸課題、2)日本の平均的労働組合費と徴収システム、3)第二次世界大戦後の日米において米国が果たした役割、4)日本の経済発展段階における女性の役割、5)日本における少子高齢対策や移民政策、6)一人当たり生産額の向上とパキスタン経済の中・長期的展望、7)多国籍企業停留の鍵、8)日本における女性の社会進出/男女共同参画社会の実現に向けた労働組合の役割、9)日本のストライキ闘争基金――などにかかる質疑が約1時間にわたり展開されたことから、團野専務理事より適宜答弁、最後に総括的見解を述べ、カーンPWF会長とともにセミナーを終了した。

日程

月日内容
09月06日労使関係セミナー1日目:
「戦後日本労働運動の形成と労使関係の特質」
「第18次憲法改正後の労使関係法」
「労使関係と雇用安定、労使紛争予防に向けた取り組み」など
09月07日労使関係セミナー2日目:
「パネル討論」(老齢年金、労働者福祉基金)
「建設的労使関係の構築と無用な労使紛争の未然防止」
「生産性向上への貢献と雇用安定」など

参加者の様子

参加者との質疑応答

カーン国家労使関係委員会委員長、ジャマル前労働省中央顧問による講義

老齢年金、労働者福祉基金にかかる相互討論の様子