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No.479(2017/10/13)
米国最高裁が公務員労組組合費の審議再開、労働運動に壊滅的危機か

 ゴーサッチ新判事の任命で共和党指名5名、民主党指名4名の構成となった米国最高裁が「公務員労組に関する組合費支払い義務問題」などの審議を10月から再開すると言明した。

 公務員労組は過去40年にわたって非組合員からも組合費を徴収してきたが、その理由は公務員労組が全公務員についての賃金労働条件を交渉しているというものであった。1977年の最高裁判決では「組合に加入しない公務員であっても、組合費が政治目的に使われない限り、交渉のために費用を支払う義務がある」とした。
 しかしこれに反対する人たちは「自分の意見を代弁していない団体に組合費を支払うのはおかしい」として、各地で提訴を起こし最高裁で争われてきたが、2016年2月に共和党指名のスカリア判事が死去したことで、共和・民主が4対4となった最高裁では審議決定が出来ない状況が続いていた。

 米国の組合組織率は現在10.7%と過去最低に低下しており、公務員と民間部門がそれぞれ半数となっているが、最高裁の審議如何によっては労働運動に大きな衰退を招く恐れがある。米国で組合費の支払いを義務とする州では組織率が13.8%、支払いを従業員の自由意思とする州ではその半数以下の6.7%という現状をみるとき、その懸念はますます大きい。

US女子ナショナル・サッカー労組がリーグ全選手に支援の手

 2015年のワールドカップ優勝に力を得て、33名の米国女子ナショナル・サッカーチーム労組(USWNTPA)は男女平等の取扱い、特に報酬面、人工芝でなく自然芝のプレイ、ファーストクラスの旅費などを要求し、オリンピック出場辞退も辞さないとして交渉した結果、去る4月に米国およびカナダのサッカー協会から給与獲得などの成果を勝ち取った。しかし一部に自然芝の約束が実現されないゲームも残ってはいるが。

 そのUSWNTPAが当時の労使交渉時に資金集めのために販売したTシャツなどの収益金$16,000を全米女子サッカー・リーグ選手協会(NWSL)に献金して、10チームからなるリーグ全体の160選手の待遇改善と労働組合結成への支援活動を展開している。これら33選手はリーグ10チームのいずれかに所属する。

 USWNTPAのベッカ・ルー暫定会長は「5年の歴史を持つ女子サッカー・リーグの今後の発展と女子サッカーの普及に力を尽くしたい。そのためには労働組合が必要だ」と語る。リーグの選手は最低$15,000の給与は受け取るが、多くは副業を余儀なくされ、家族に頼るものも多い。
 NWSLのアバーブッチ会長は「労働組合の結成が大事だ。今まで出来なかった全員の声を要求できるようになる。また、リーグ協会と協力してプロモ製品の販売やアイデアを出した収入増加を考え、選手には訓練の機会と商品のブランド力をつけてゆきたい」と語る。

 USWNTPAはまた、労働条件の改善を求めて活動する他の女子スポーツにも援助の手を差し伸べているが、その中のUS女子ホッケー・チームは、米国で開催される世界選手権も出場辞退の強い意思を示して、去る4月にUSAホッケー協会から大幅賃上げを獲得した。

国際労連がエジプト政府に労組指導者の釈放を要求

 エジプト政府は座り込みとストライキを行った不動産税務労働組合のタリク・ムスタファ・ケイイブ委員長と7名以上の労働組合指導者を保安とテロリズムの容疑で逮捕、拘留し、10月2日に聴聞会を開く。

 これに対して、国際労連(ITUC)と国際公務員労連(PSI)はエジプトも署名の国連憲章に盛られた結社の自由に違反すると糾弾して、ストライキの正当性を認めかつ指導者の釈放を要求する書簡をアブドルファターフ・アッシーシー大統領に送付した。ITUCとPSIは世界の2億人の労働者を代表する。

メキシコ自動車労働者の低賃金とNAFTA 再交渉

 メキシコのアウディ工場に働くフロレスさんは時給2.25ドル、月収110ドル、生産する40,000ドルのアウディQ5SUV購入などは夢のまた夢である。
 ヘンリー・フォード時代の自動車産業は造った自動車を労働者が購入できる賃金、そして中産階級の誕生、自宅所有や別荘、ボートの所有に至った。
 しかし北米自由貿易協定(NAFTA)の下で繁栄するメキシコでは事情が違う。労働者は政府が供与する500平方フィートのアパートに住み、数10年のローンを払う。ローンなどを差し引いて手取りは週に50ドル、中古車さえ買えない。

 NAFTAでは上昇すると想定されたメキシコ自動車労働者の賃金だが、上昇どころか停滞したままである。今行われているNAFTA再交渉第3ラウンドでは「中国自動車労働者の賃金が上昇しているのに、メキシコではなぜ上昇しないのか?」が議論であり、皮肉なことに敵と見られたトランプ大統領が逆に賃金上昇の推進役とみなされている。

 ここアウディ工場について言えば、多くのメキシコ工場と同じように、工場誕生時の極く少数の労働者が労働組合指導者を選び、その体制が何年も続いている。2014年1月の創設時に交わしたアウディ労働協約の時給の最低1.40ドル、最高4.00ドルが活きており、平均賃金は2.25ドルである。2016年に採用された5,000名の労働者には規定がそのまま適用されており、年間賃上げ6%規定も現在のインフレ率を下回る状況にあるが、良質の雇用に乏しいメキシコでは多くの人がその職を求めている。
 アウディ労働組合のベラスケス委員長は「最低の1.40ドルの労働者はいないが、これが賃金、これが組合だ。気にいらなければ他を探すことだ。組合選挙は6年毎であり2020年まで選挙はない。2016年3月開設のBMWの賃金は最低1.00ドル、最高2.30ドルだ」と語り、会社も「ボーナスも支払っており待遇は同業他社を上回る。組合を尊重している」と述べる。
 他方、他州にある日産の工場だが2.40ドルから4.75ドルを支払っており、他の多くの工場では食品のクーポン券を出しているが、アウディにはない。因みにメキシコの最低賃金は時給0.50ドルである。

 メキシコは最近の憲法改正で「労働協約を締結する労働組合は大多数労働者を代表する証明を示さねばならない」と規定したが強制力はなく、その点では殆どの労働協約が違法状態にあり、会社規定の協約ともいえる。
 これを批判する人たちは「メキシコ労働組合は組合員を代表するより会社のために労働者をコントロールする。労働組合のナショナル・センターも与党の制度改革党(IRP)に組み込まれている」と指摘する。

 メキシコ各州では米国と同じように工場誘致のために土地の提供、インフラ整備、減税などが行われているが、アウディ所在のプエブラ州では従順な労働組合も誘致の重要条件とされ、これがなければアウディ進出も無かったとも言われる。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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