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No.450(2017/4/21)
トランプ予算教書が示す連邦公務員の削減は容易でない

 トランプ大統領は予算教書演説の中で$540億に上る大幅な軍事費の増額を打ちだす一方、その穴を埋めるために公務員の削減を提案した。
 しかし実施にはかなりの困難が伴うことになる。RIF(Reduction in Force)と呼ばれる公務員削減だが、長期かつ高額経費を伴う公式プロセスが必要であり、訴訟や労働組合からの抵抗にも遭遇する。

 広範なRIFの実施は数十年来無かったことで、各省庁もその進め方に経験がない。
 RIFの対象者については現在の職務、勤務場所、地位、勤務年限、業績などを考慮した選定が必要であり、時としては勤務年限の短い者を先に解雇して、長い者を残すことも起きる。そうなると意図した人件費削減も思い通りに行かない。同時に訴訟、退職金問題、労働組合との労使交渉、苦情処理も起きてきて、実施までに1年を要することも想定される。処理を間違えて解雇無効となると、多額の賠償金を支払う事態も起きる。

 また、議会承認の問題があり、与党共和党議員の理解が円滑に得られるかも未だ不透明である。トランプ予算教書に人件費削減についての明確な記述はない。各省庁予算の削減がそのまま人件費の削減とはならないが、31%マイナスの環境庁について言うと、15,600人職員の20%に当たる3,200人の解雇を意味する。次には国務省、農業および労働、医療関係の順だが、いづれにしても議会の承認が必要だ。
 過去5年間の退職は125万で、そのうち自主退職45万人、自然退職40万人、解雇ないし一時契約終了が38万人であった。現在の連邦公務員209万人のうちパートを除く正規職員は186万人だが、過去実績から推定すると、今年度は15%の28万人が退職とみられる。

 各省庁は予算削減にあたり、まず旅費や職業訓練、購入器具備品などに手をつけるが、次の選択として自然退職に待つ。正式の解雇ではない、2013年時のような一定期限の無給休暇ということも出てくる。
 自然退職という点では、トランプ政権はすでに国家安全保障と公共安全以外の分野で、採用凍結の形で実施しているが、削減目標には至らず、解雇は不可避である。しかし現場の意欲が欠ける場合は、実施が極めて難しい。

 退職促進のために、各省庁は退職勧奨制度を実施することもできる。25年以上の勤続者は年齢不問で年金満額、20年以上で50歳を上回る場合は年金が減額となる。また割増金による希望退職がある。現在の割増額上限は$25,000だが、この増額には議会の承認が要る。但し2016年の国防省の例では議会が$40,000を承認した。
 2016年には希望退職が3,000人、早期退職が1,000人だったが、過去5年間はそれぞれ36,000人と11,000人を数える。但し国防省については10%増額が要求されており、早期ないし希望退職を募る必要はない。

米国女子アイス・ホッケー選手が世界選手権をボイコット直前、連帯広がる

 3月30日からミシガン州で始まるアイス・ホッケー女子世界選手権を控えて、有力選手たちが賃金問題を理由に出場ボイコットを訴えている。これに対し米国ホッケー協会は代替え選手を探して対抗しようとしている。
 これら選手にはキャプテンのダガン選手、ゴーリーのオット選手、フォワードのナイト選手などが含まれるが、米国女子チームはオリンピックで銀メダル2回、世界選手権では金メダル2回を獲得している。

 選手会組合は声明の中で「世界選手権には最高の選手で臨むことが重要だ。代替え選手を探すなどは労使関係を悪化させるだけだ」と主張しているが、選手たちは賃金問題について「通常時には協会からの報酬はゼロ。オリンピック時だけ開催前6カ月に月額$1,000が支給された。選手生活が続けられる待遇がほしい。結果で扱わないで欲しい。ボイコットには心が痛むが、今立ち上がらなければその時がない」と語る。
 こうした事態に男子ホッケー選手会も呼応して、5月から始まるドイツ、フランスでの世界選手権ボイコットの可能性を表明した。さらに連帯の声はバスケット(NBA)、アメリカン・フットボール(NFL)、大リーグ野球(MLB)、女子バスケット(WNBA)の各組合からも寄せられて、今後の推移が注目された。

 こうした中で、女子アイスホッケー・チームは世界選手権開催直前の24時間前に労使合意に達した。内容は通常年でも月額賃金は$3,000-4,000以上、オリンピック年には米国オリンピック委員会からの支援金が加算され、更に選手の移動については従来のエコノミーから男子と同じビジネス・クラスに改定された。

 なお余談だが、米国ホッケー協会は韓国における2018年冬季オリンピックへの出場に難色を示しているが、理由は過去5回免除された旅行保険料などの負担を国際オリンピック協会が停止したことにある。国内ゲームのほうが収入になると考える米国協会は、選手たちに韓国オリンピック出場を認める代わりに、2022年期限の現行労働協約の3年延長を提案したが、選手会はこれを拒否した。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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