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No.417(2016/10/12)
パキスタン衣服加工工場での火災犠牲者への補償交渉成立

 パキスタンアリ社のカラチの工場で2012年9月11日、火災が起こり250人の労働者が死亡し、50人の負傷者を出した。窓には鉄格子がはめられ、スプリンクラーも設置されておらず、しかも逃げ出される出口は1箇所だけなど、最悪の産業事故としてパキスタンの主要輸出品である繊維産業に大きなダメージを与えた。同工場ではドイツの小売りチェーン店KiK社向けのジーンズを生産しており、KiKのサプライチェーンでの悲惨な事故ということで、発注者の責任も問われた。KiK社は当面の補償金として2012年12月に100万米ドルを払った。
 その後遺族への補償交渉がパキスタン労働組合総連合(NTUF)、インダストリオール、NGOクリーンクロスキャンペーン(CCC)、UNIグローバルユニオンとKiK社との交渉が、ドイツ連邦経済協力省の要請もありILOが仲立ちをして行われてきた。4年の歳月を費やしたがこの度、KiK社とアリ社は遺族,負傷者への所得補償、医療費、リハビリテーション費用として515万米ドルを支払う合意調停書がまとまった。
 この金額はパキスタン社会保障制度による支給額にILO労災補償勧告121条に基ずく水準との差額を補うもので、2017年早々に犠牲者に定期的に支払われる。グローバルに展開するサプライチェーン工場の安全確保が発注者にも求められるというバングラデシュでのラナプラザビル崩壊事故、タズリーン火災事故に続く第3番目の事例となった。
 ナシール・マンスールNTUF書記次長は「今回の合意協定はパキスタン労働史上画期的なもので、悲劇的な犠牲者の苦しみや痛みが国際的にも認知され4年間の交渉の支えとなった。我々は労働者側に立つ成功事例としてインダストリオールとCCCに感謝します。またILOは重要な役割を果たし、この歴史的な協定を可能にしてくれた。職場における安全とは特権でなく権利であることを思い起こすことができた」と語った。
 サエーダ・カトゥーンはアリ社工場火災被災者協会副会長で、息子を火災で失った。彼女は「今日は犠牲者の叫びが聞こえるのが中断される小安の日です。自分たちの最も近しく最愛の人は戻ってこないけど、このような悲劇が2度と起こらないことを願ってます。政府、国際ブランド、工場主は厳しい労働安全環境を確保しなければならない」と語った。
 パキスタンの労働組合は9月11日を労働者安全の日と定め、職場の安全を徹底するように政府に要求して行くと言明している。
 ユリキインダストリオール書記長は「今回の補償契約で遺族には国際基準の金額が支払われるが、そのてんKiK社の努力を評価したい。これを機にバングラデッシュで協定が結ばれたようにパキスタンに於いても安全な衣服産業をスタートさせる良いチャンスだ」と述べた。
 残された問題はアリ社の火災の数週間前にアリ社は安全衛生の9分野でSA8000の認証を監査法人SAI( Social Accountability International)から取得し、国際基準を満たしているとされたことだ。その後のアリ社の火災での悲劇はパキスタンの労働法や安全制度だけでなく、社会的な監査モデルに対して深刻な懸念を生じている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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