バックナンバー

No.406(2016/8/1)
カザフスタン、ウクライナの労働事情

 7月1日に行われたユーラシアチームの労働事情を聴く会から、カザフスタンとウクライナの労働事情についてカザフスタン労働組合連合(FPRK)、ウクライナ自由労組総連盟(KVPU)の報告の一部を紹介する。

<カザフスタンの労働事情>

【社会、経済、労働分野の社会的パートナーシップ】
 カザフスタンは、現在、1994年の社会、経済、労働分野の社会的パートナーシップに関する大統領令、2000年のパートナーシップ法にもとづく対話がすすめられ、政府、労働組合、そして雇用者の権利を守る組織の三者による社会的対話が行われている。その一環で労働法の整備もなされ、労働協約関係制度の拡充、労働の標準化促進、労働安全衛生管理制度改革が行なわれた。
 現在、労働組合の地方組織は「2020年までの雇用プログラム」の参加者として、自営業者、失業者および貧困者を労働組合に勧誘する活動を行なっている。これはインフォーマル経済で仕事をする自営業者をフォーマル経済に組み込むために、一定の成果をあげている。また、技能向上や職業訓練に関するモニタリングや、農村を中心に新しいプログラム実施に関する情報・解説活動も行なっている。
 また、危機の時に、雇用を維持するために有効な手段として、使用者と結ぶ覚書があり、2016年をみても、初頭より10万5,000件(対象労働者数は250万人)の覚書が調印された。今日、労働協約は労働組合が機能しているほぼすべての企業で締結されている。 

【労働争議は減少】
 政府は雇用者と労働組合とともに、国の社会的・経済的な生活において労働協約が実質的な意義を持つように方策を講じている。近年の労使関係の分析によると、労働争議は減っており、2014年の労働争議の件数は15件、2015年は7件、2016年は1件となっている。
 しかしながら、カザフスタン人の生活の質的向上には、依然として新たなしかるべき基準が必要であり、これからもFTURKは、実生活に必要な最低額のレベルの生活費を算定し、貧困ライン指標の決定と、その決定方法の改善を求めて行く。

<ウクライナの労働事情>

【ウクライナは非常に困難な状況】
 残念ながら、今ウクライナは非常に困難な状況にある。というのは、ドネツィク州、ルガンスク州が占領され、クリミアがロシアに併合されるという状況になっているからである。ドネツィク州、ルガンスク州を中心とした占領地の総面積は、4万7,000平方キロメートルで、これは、ウクライナ領土の全体の12.8%に及び、紛争の犠牲者は9,000人以上、170万4,000人が移住を余儀なくされている状況にある。紛争地に我々の労組の組織のスタッフ、また加盟の医療関係労組の医師や看護師も死亡、負傷したりしている。

【取り巻く状況について】
 GDPは、2013年、14年は、プラスだったが、2015年にはマイナス成長に転じた。このマイナス成長が続いているというのは、ウクライナの中で地域紛争が起こって、戦闘状態にある地域が一部あるということによる。
 物価上昇は非常に大きく、2015年は前年の約2倍になった。それに対し、2014年の最低賃金、月額1218フリヴニャ(約49ドル)から、2015年、1378フリヴニャ(約55ドル)と物価上昇に全く追いついていない。
 ウクライナには非合法の炭鉱で働く不法労働者が多く存在し、不十分な労働条件(特に石炭、冶金、化学工業の企業において)に晒されている。また、賃金遅配の問題も抱えており、現在、全国で18億フリヴニャ(約700万米ドル)ほどの賃金未払いを抱えている。未払い賃金の71%を占めるのが工業部門であり、半分以上がルガンスク州、ドネツィク州、ハリコフ州の3州の企業によるものである。ルガンスク州とドネツィク州は、現在、紛争が起こっている地域である。
 今年、ITUCの「権利に関するグローバルインデックス」が公表されたが、それによるとウクライナは「労働者が肉体的な暴力や威嚇にさらされている」となっている。今年に入ってから2回、クリボイログという地域組織のリーダーが襲撃を受けた。
 2015年には、約20件の労組の権利侵害が記録された。主に侵害されたのは、労組の基本的諸権利である(ILO条約第87号、95号、98号)である。雇用者は、労組設立の事実を無視、活動を妨害している(同87号)。また、団体交渉権や労働協約の締結権や、締結済みの労働協約への加入権が無視および否定されている(同98号)。賃金はまったく支払われないか、大幅に遅配される(同95号)。労働者解雇の際は、労組委員長や副委員長の諸権利や、法的保障が侵害されている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.