バックナンバー

No.370(2016/1/19)
サウジアラビア女性参政権の拡大

 昨年の12月12日、サウジアラビアの歴史では初めて女性候補を認める地方選挙(「地方自治評議会選挙」)が行われた。この地方選挙は、2005年にスタートし、13の州におかれている284の自治評議会(州知事の助言機関)の議員を選出するものである。2011年に続き三回目であるが、約2000の総議席に対して、約7000人が立候補した。今回、女性の立候補者は約1000人となり、このうち20人が当選し、世界のマスコミで大きく報道された。この選挙に投票する権利については、第一回選挙以来、男女のサウジアラビア国民に与えられている。

 サウジアラビアは、国王が国政を直接統括する「絶対王政」を維持しており、政党は禁止されているが、1993年、国政への助言機関としての「諮問評議会」が設置された。この評議会は、国王の任命により、宗教界、部族代表、実業界、知識人など150人の議員で構成される。4年ごとに少なくとも半数が入れ替えられているが、2013年1月、アブドラ前国王は、30人の女性を任命、この時も初めての「女性議員」誕生として関心を集めた。

 しかし、サウジアラビアの人権と労働者の権利に関する国際的な批判には、厳しいものがある。同国では女性による自動車の運転は法律で禁止されているが、地方では見過ごされることもあった。しかし、2000年代に取り締まりが強化されたことから、2011年、移動と生活の手段を奪われた国内の女性たちが抗議の声をあげ、運転デモやソーシャルメディアでのアピールなどを行った。これには、米国のクリントン国務長官(当時)が支持を表明、日系の自動車販売会社も活動の停止を要請されるなどの動きもあったが、今日でもこの法律は維持されている。

 国際的な労働運動からの視線はさらに厳しい。ITUC(国際労働組合総連合)は、サウジアラビアが労働組合を認めないこと、アジアの途上国などからの就労者に劣悪な労働環境が見られるとして批判、改善を強く求めている。2014年には、中国人労働者が待遇改善を求めてストライキを行ったが、16人が逮捕された。また、インド、バングラデシュ、フィリピン、ネパールなどアジア各国から100万人を超える労働者が、家事労働、建設現場などで就労しているが、雇用主からの拘束、暴行などの事例が後を絶たない。ITUCは、昨年から、モーリシャスからおよそ900人の労働者が不当に移送され(「トラフィッキング」)、家事労働などで酷使されているとして、「現代の奴隷労働」を非難するキャンペーンを行っている。

 サウジアラビアは、イスラム教スンニ派の盟主を自負しているが、そのなかでも最も厳格といわれるワッハーブ派が支配的である。例えば、女性は公的な権限を行使するためには父親、夫、兄弟などの男性の代理人を通さなければならない。しなしながら、その内政のあり方をめぐっては、前述のとおり、国内の不満の高まりや国際的な批判がある。前アブドラ国王は、過激な宗教指導者を解任し、女性に新たに4週の有給出産休暇を与えるなどの労働面での配慮も見せた。

 現国王、サルマン・ビン・アブドゥル・アズィーズ氏は、昨年1月の前国王の逝去ののち即位して一年、アラブの大国・サウジアラビアの元首としてはじめての新年(西暦)を迎えた。中東の情勢に注目が集まり、その社会情勢に国際的な関心も高まるなかで、国民、労働者の期待にどう応えていくか、本年の同国の対応が注目される。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.