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No.358(2015/11/19)
アフガニスタンの労働事情

 9月27日~10月6日の日程で、アフガニスタン労働者全国組合(NUAWE)からカデリ会長をはじめ11人(内女性1人)の幹部が来日し、日本の労働事情や労使関係について研修を受けた。
 この研修を行っている間もアフガニスタンでは、反政府勢力タリバーンが制圧した北部の要衝クンドゥズの奪還作戦が行われ、市内で数百人の死傷者が出たとの報道がされるなど、依然として平和への道程は厳しい中での来訪となった。
 10月2日には、NUAWEの労働事情を聴く会が開かれ、アフガニスタンにおける労働者の厳しい現状が報告された。

【戦争が続く中で、国づくりと労働者保護をはかる】
 アフガニスタンの産業は、カーペットなどの伝統工芸品、ドライフルーツなどの農産物、薬(薬草のほか麻薬も生産)などからの収入が大半で、多くは国際援助に頼らざるを得ない状況にある。アフガニスタンの産業は目立った発展・成長が見られないが、その理由は、乾燥地帯に囲まれていることと電力不足、海外からの投資不足にある。また、識字率も低く、どんなに楽観的にみても25%位である。農業も機械化されることもなく、天候(雨)に左右される伝統的な方法で、麦、小麦、果物などを作っている。
 国の年間予算の内75%は国際援助で成り立っている。アフガニスタンでは、国際援助の流入によって高い成長が実現できたときもあるが、2015年の成長率は2%台半ばとみられる。GDPは、2014年の203億ドル(約2兆5038億円)に対し2015年は208億ドル(約2兆5655円)になると見込まれる。また、一人当たりGDPは654.8ドル(約8万763円)で国際的に見ても低く最貧国のひとつといえる。貧困ライン(月1150アフガニー=約2.1円)以下で生活している人の割合は36%となる。
 この国の発展を妨げているのは、主として、人材(技術者)不足と戦争、テロリズムにあるが、それに加えて隣国からの内政干渉(越境時の阻害要因)も影響している。アフガニスタンは、地政学的には需要な位置にあるため、有史以来諸外国からの侵略を受けてきた。
 アフガニスタンにも発展できる潜在的な要素はある。石油や天然ガスの生産を始めたほか、希少金属を産出する鉱山もあり、電力や道路などのインフラが整備されれば、経済が発展する可能性は十分にある。加えて、ダムの建設などで川や湖などの治水を行えば、農業の近代化と国を豊かにすることが期待できる。
 アフガニスタンの人口は3100万人であり、人口の6割が25歳以下の若い国である。年齢的にみれば、1200万人は就労が可能であるが、その6割の720万人が、ほぼ「無職」の状態と言える。このほぼ「無職」の状態とは、1日のうち半日しか仕事がないような人たちで、不完全就労の状態にある。公共セクターや民間セクターで働く労働者は、正規・非正規合わせて180万人で、このうち100万人が公共セクターに属している。公共セクターで働く100万人のうち45万人は公務員としての正規労働者で、10万人は短期雇用契約の労働者、そのほかは警察や軍隊となっている。公共セクターで働いている労働者の雇用は、ある程度は保障されているものの、民間セクターでは一切雇用の保障がなく、ほとんどの場合は、使用者と労働者間の雇用契約も存在しない。
 不完全就労も含めて900万人が働いているが、残りの300万人は失業状態にあるといえる。アフガニスタンでは、大家族で生活をしているため、こうした失業状態にある人々の生活はかろうじて可能となる。
 アフガニスタンの物価上昇率は、2013年4.5%、2014年14.0%、2015年18.4%となり、この2年間は大幅な上昇となるものの、この間、賃金は全く変わっていない。公共セクターで最も低い賃金は、1カ月5000アフガニー(約1万500円)、1日180アフガニー(約378円)となっているが、この賃金水準を変えるためには法改正が必要で、今年は引き上げたいと考えている。また、アフガニスタンでは最低賃金制度も無いため、その導入も必要と考えている。
 アフガニスタンの労働者保護は不完全であるため、改善を図る必要がある。まず、第1は、労働者自身が、労働者としての権利に対する知識不足の解消をはからなければならない。第2に、労働法の保護の対象とならないインフォーマルセクターで、劣悪な条件の下で働く労働者の保護が可能となるようにしていくことが必要である。第3は、労働法は、使用者側の味方となっており、労働組合をサポートする内容になっていないことも問題であり、改正をすべきである。第4は、労使間の紛争を解決する手段(制度)も存在しないので、解決できる機関(労働裁判所)を設置することが必要である。第5は、労働者の技術・技能を高めていくための施策を導入する必要がある。
 我々は法律改正委員会のメンバーでもあり、アフガニスタンの労働法を改正するために政府と交渉を続けてきた。その結果、二つの法律が改正される見込みである。

*1ドル=123.34円(2015年11月9日現在)
*1アフガニー=2.10円(2015年11月9日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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